西京極 紫の館

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あなたの人生の物語  テッド・チャン/著  早川書房

2017年07月27日 00時51分52秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者のルイーズは、まったく異なる彼らの言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作(映画化名「メッセージ」)はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語――ネビュラ賞受賞作「バビロンの塔」ほか、全8篇を収録。解説/山岸真

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆★★
  独創性 ☆☆☆☆☆
 読み易さ ☆★★★★

【西京極の読後感想】
過去に読んだ事のない哲学性の濃いSF短編集。映画『メッセージ』と原作の差異を知りたくて購入しました。(恐らく訳者のせいではないが)文体や構成が僕にとってはかなり難解だったので読了するまでかなり時間がかかりましたが、読み終わると読後感は良かったし、面白いと思いました。では収録された作品毎に一言レビューを。

バビロンの塔:天まで届く塔の頂上まで建築資材を運ぶ工夫のお話。塔の途中から景色や、塔を造るだけで一生を終える人々の生活、塔の頂上には何があるのか等、神の視点ってこういうものかもしれないなと思わせてくれる作品。
理解:脳を100%覚醒させたらどんな事がその人間に起きるのか?という、SFではよくある命題を超ロジカルかつシニカルに描いたサスペンス。『スキャナーズ』っぽいなと。
ゼロで割る:“ゼロ”とそれ以外の数字の決定的な差は「無」か「有」かである。僕らは普段“ゼロ”と他の数字を同じ様に扱っているが、この話を読むと、“ゼロ”だけは別次元の存在だと再認識させられる。文系の僕には読むのが辛いお話。
あなたの人生の物語:お目当てだった映画『メッセージ』の原作。これを読むと映画が如何に万人に理解し易く、上手くエンタメ要素を加えて映像化したかが解ります。この短編集の中ではこの作品が一番地味かも…
七十二文字:ロジカルに魔法を解析し、その力でゴーレムを造ろうとする人のお話。「バビロンの塔」と同じくヒトがヒトを創ろうとするいわば神になろうとする愚かさを描いている。中世なのに妙に現代的なのが面白い。
人類科学の進化:たった5ページほどの論文形式の短編。ほとんど理解出来ず…
地獄とは神の不在なり:この短編集の中で一番面白かった作品。現実世界に巨大な“天使”が降臨したら人はどうするのか?神を超自然災害と見立てたあたり山本弘の『MM9』と似てますね。こっちの方が格調高いけどw
顔の美醜について:世の中は“見た目”で多くの事が左右されるものですが、このお話はその“見た目”の認識を出来なくするシステムが開発されたら世の中はどうなるかというもの。賛成派、反対派双方の主張をインタヴュー形式で描いていますが、これも他のお話同様、人が自然のシステムに介入しようとするとロクな事にならないよという結論に至ります。

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