「集中審議受けざるを得ない」 首相、世論の声に危機感

2017-06-17 09:36:22 | 日記
朝日新聞ウェブ版2017年6月17日05時00分

学校法人「加計(かけ)学園」による国家戦略特区での獣医学部新設をめぐり、「総理のご意向」などと記された文書の存在を朝日新聞が報じてから1カ月。文科省の再調査で政府はようやくその存在を認めたが、獣医学部新設の経緯の不透明さは解消されていない。安倍政権は国会閉会と同時に幕引きを図るが、疑問点は置き去りのままだ。

 「対応に時間がかかったことについて率直に反省したい」。安倍晋三首相は16日の参院予算委員会で、加計学園をめぐる問題について神妙な表情で答弁した。当初は「怪文書のようなもの」と相手にしなかった菅義偉官房長官も同日の記者会見で、「現在においては文科省に存在していることが確認された文書であると承知している」と述べて事実上、発言を修正。低姿勢を見せた。

 首相は当初、「加計問題」については強気だった。3月の参院予算委では、質問した社民党の福島瑞穂氏に「全く関係なかったら、あなた責任とれるんですか」と語気を荒らげて迫る一幕もあった。

 しかし、5月17日に朝日新聞が「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などの文書を報道。その後、前川喜平・前文部科学事務次官らの証言が相次ぎ、2度の調査で文書が文科省に存在することが発覚した。そんな中、文科省が公表した文書の中に、首相の最側近の萩生田光一官房副長官の名前が登場し、火種は首相官邸の中枢に。国会最終盤で防戦に追い込まれた。

 文科省が15日に公表した内閣府から文科省に送られたメールと文書によると、萩生田氏が内閣府に対し、国家戦略特区で獣医学部を新設する事業者選定の要件について、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件に修正するよう指示していたとされる。

 この事態に、国家戦略特区を担当する山本幸三・地方創生相は文科省が調査結果を公表した翌日の16日、内閣府の職員が「事実関係を確認しないまま発信したもの」とメールの内容を否定。午後の参院予算委では、この職員が文科省出身であることに触れ、「陰で隠れて本省にご注進したというようなメール」とまで言い切った。

 萩生田氏から修正指示を受けたとメールに記された内閣府の藤原豊審議官は同委で「山本大臣の指示を受け、私が手書きでこの文案に修正を加えた」とする一方で、萩生田氏の指示はなかったとした。萩生田氏は「決定に関わって」と前置きしたうえで、「指示したことはない」と答えた。

 しかし、なお不透明な部分が残る。

 メールには、内閣府の職員の記述として「文案(手書き部分)で直すよう指示がありました。指示は藤原審議官曰(いわ)く、官邸の萩生田副長官からあったようです」とあり、記述は具体的だ。藤原氏との打ち合わせに「同席した」とも記し、藤原氏自身が手を入れた文書も添付してあることから、この職員は内部事情に通じていた可能性が高い。

 山本地方創生相は16日、メールについて「(職員が)課内で飛び交っているような話を聞いて、確認しないままに書いた」と記者団に述べたが、共産党の小池晃氏は参院予算委でこの発言を取り上げ、「なんで萩生田さんの名前が飛び交うのか」と指摘。特区の担当ではない萩生田氏が、話題になるほど関わっていたのではないか、と疑問を呈した。(小早川遥平、木原貴之)

■自民・竹下氏「今日は終業式」

 この日の集中審議は、首相の危機感を背景に実現した。

 「集中審議は受けざるを得ない」。13日夜、東京・赤坂の中国料理店であった与党議員らとの会合。話題が国会最終盤の対応に及ぶと首相はそう語った。出席者のひとりは「首相は深刻な様子だった」と語る。

 報道各社の世論調査では、内閣支持率の下落傾向が続く。加計学園の問題をめぐる政府の説明に「納得できない」との声も多く、首相は自ら疑念を否定することで、局面を変えたいとの思惑があった。

 自民党の苦戦が伝えられる都議選も控え、政権・与党は「口をつぐんだまま国会を終えるとイメージが悪い」(政府関係者)と判断。15日朝に「共謀罪」法が成立して、わずか5時間後に文科省が再調査結果を公表。内閣府も徹夜で調査し、国会審議の実質的な最終日である16日に説明できる環境を整えた。

 集中審議では、文科省と内閣府の説明の食い違いも浮き彫りになったが、官邸幹部は「首相がテレビ中継のある審議で野党議員と対峙(たいじ)したことが重要」。自民党の竹下亘国会対策委員長は同日夕、民進党から国会閉会中も集中審議を実施するよう求められたが拒み、記者団にこう語った。「今日は終業式。夏休みというわけではないが、ホッとして一拍置こうという心境だ」(大久保貴裕)

ログイン前の続き■内閣府調査、文科省文書をことごとく否定

 一連の文書をめぐる疑問も残ったままだ。

 「『総理のご意向』などと伝えた認識はなかった」。16日朝、首相官邸で大勢の記者に囲まれた山本氏はこう切り出した。文科省の再調査結果の公表から一夜。注目された内閣府の調査結果は、文科省内の文書に書かれた内閣府とのやりとりの内容を、ことごとく否定するものだった。

 文科省が認めた文書の1枚には、「藤原内閣府審議官との打合(うちあわ)せ概要」の題の下に、昨年9月26日の日付や時間、会合の参加者などが具体的に書かれ、内閣府側が「官邸の最高レベルが言っている」などと発言したと記録されている。しかし内閣府の調査では、対象のすべての職員が「発言していない」「聞いた記憶はない」などと回答したという。

 文科省の調査で「総理のご意向」などと発言したとされた藤原審議官は、安倍首相もいる参院予算委の場で「(文科省に)お伝えした認識はない。総理からもそうした指示はいっさいございません」と明言した。

 ただ、内閣府側には、文科省とのやりとりを裏付けるメモやメールなどは残っていないという。野党からは「証拠能力はこっち(文科省)の方が高い」(民進党の福山哲郎氏)との声も出た。

 獣医学部新設が「加計学園ありき」だったのかどうかでも、文科省と内閣府の見解は分かれた。

 文科省で存在が確認された文書には、加計学園が獣医学部設置を計画していた「(愛媛県)今治市」という文言が複数回出てくる。文書がつくられた昨年9~10月ごろ、文科省内では今治市への学部設置を前提に準備が進んでいた実態が再調査からは浮かんだ。

 文科省が「法人の利益を害するおそれがある」として存否を明らかにしなかった3点の文書の中には「加計学園への伝達事項」という題のものもある。こうした点について松野博一文科相は「検討が進んでいる区域が今治市のみと承知していた」と語った。

 これに対し山本氏は「京都産業大学から昨年3月に(獣医学部設置の)提案があり、10月に詳細な提案をいただいた」などとし、少なくとも昨年9~10月時点で今治市への設置は「既定路線」ではなかったとの認識を変えなかった。食い違う二つの調査結果は、事態の真相をさらに不透明にした。(星野典久)
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