仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

正しい絶望のすすめ㉕

2018年02月20日 | 正しい絶望のすすめ
三毒の煩悩はしばしばおこれども、まことの信心はかれにもさへられず『浄土真要鈔』存覚上人

*三毒―人の善心を害する貪欲(欲望)・瞋恚(いかり)・愚痴(おろかさ)の3種の煩悩。

阿弥陀仏の願いは、欲と怒りと愚痴に閉ざされている人を照らしだし、そのいのちに尊厳を見いだす力があります。

 芥川龍之介の『奉教人の死』という小説があります。まずはあらすじです。
 長崎の教会にある美少年がいた。彼は自身の素性を周囲に問われても、「故郷は天国、父は天主です」と笑って答えるのみだった。その信仰の固さは教会の長老も舌を巻くほどだった。ところが、彼をめぐって不義密通の噂が立つ。教会に通う傘屋の娘が、かの美少年に想いを寄せて色目を使うのみならず、彼と恋文を交わしているというのです。
 長老衆は苦々しげに美少年を問い詰めるが、彼は涙声で身の潔白を訴えるばかりだった。ほどなく、傘屋の娘が妊娠し、父親や長老の前で「腹の子の父親は、かの美少年だ」と告げる。かの美少年は姦淫の罪によって破門を宣告され、教会を追い出されてしまう。身寄りのない彼は乞食同然の姿で長崎の町を彷徨うことになったが、その境遇にあっても、他の信者から疎んじられようとも、教会へ足を運んで祈るのだった。
 一方、傘屋の娘は月満ちて、玉のような女の子を産む。
そんなある日、長崎の町が大火に見舞われる。傘屋の父親と娘は炎の中を辛くも逃げ出すが、一息ついたところで赤子を燃え上がる家に置きざりにしたことに気がつき半狂乱となる。そこにかの美少年が現れて、火の中に飛び込み赤子を救う。そして倒れて死ぬ。聴衆は、わが子ゆえといって同情する。しかし横たわる美少年の胸が放ていて、そこには乳房があった。(以上)
 いい話です。かの美少年は女であり、世間のあざけりを、あえて受けていたのです。神と共にあるという信仰は、災難がなくなることではなく、人からあざけりを受けようと、苦しみの中にわが身を置くことができる。自分を理解してくれている方がまします。それが自己を肯定する力となるのです。

 『奉教人の死』とそっくりな話が、白隠さんの逸話にあります。芥川龍之介は、白隠さんの逸話をモチーフにしたのかもしれません。
 白隠が住んでいた村の、ある娘が妊娠した。娘は聞かれても相手の名を明かさない。しかし娘の父親が執拗に聞き出そうとし、脅しつけたので、娘はそれから逃れようとして、それは白隠だと告げた。父親は子どもが生まれるとすぐに白隠の元へ連れて行って、「これはおまえの子供だ。」と言い、彼の禅師に渡す。そして悪口雑言を浴びせかけ、侮蔑とあざけりをまくし立てた。 黙って聞いていた白隠は、聞き終わるとただひと言、「おお、そうなのか?」とだけ言ってその子を腕に抱いた。白隠はその子を自分のボロボロの僧衣の袂にくるんで、どこへでも連れて歩いた。雨の日も嵐の夜も、雪の降る日も白隠は近所の家々を廻って、その子のための母乳を乞うて歩いた。 白隠には多くの弟子がいたが、その多くが「禅師は堕落してしまった」と思い、白隠の元を去った。しかし白隠はひと言も言わなかった。
 一方、母親である娘は、自分の子どもから離れている苦しみと悔恨の情から、とうとう子供の本当の父親の名を明かした。娘の父親は白隠の元へ駆けつけてひれ伏し、頭を地に擦りつけるようにして、繰り返し許しを乞うた。白隠は、「おお、そうなのか?」とだけ言って、娘の父親に子供を返した。(以上)
白隠さんの、人にあざけりを受けても動じない自己肯定感に開かれていたのでしょう。

 自分の思い通りになった中に、人は安心して自分を肯定できます。自分の思い通りにならない意に反する中で、自分を肯定していける道は、自分に立脚した依りどころではなく、どのような状況でも、見捨てることなく受け入れてくれる大きな存在が必要です。
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親鸞聖人のみあとを訪ねて 

2018年02月20日 | 都市開教
昨19日、築地本願寺で「恵信尼公750回忌記念行事・親鸞聖人のみあとを訪ねて 京都から居多ヶ浜、そして恵信尼の里へ
」実行委員会が開催されました。

■ 後   援 京都新聞社、福井新聞社、北國新聞社、北日本新聞社、仏教タイムス、
■ 期   間  2018(平成30年)4月14日(土)~5月27日(日)
■ 行   程 本山から居多ヶ浜、恵信尼の里まで、約406km・21区間

後   援 京都新聞社、福井新聞社、北國新聞社、北日本新聞社、仏教タイムス、

詳細は、下記ホームページにて

■ホームページ  http://miato.saiho-ji.org/
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