ココヨリトワニ

野球と文章書きに生きる男、空気王こと◆KuKioJYHKMのブログです。(人が死ぬ創作文があります、ご注意を)

自分ロワ第18話 お前らのような学生がいるか

2009-09-27 11:41:56 | 自分ロワ
C-7の一角に佇む、「寒鰤屋」の看板を掲げた骨董屋。店主の住居も兼ねたこの店は、奥が居住空間となっている。
そしてその茶の間には、現在一人の男子高校生がいた。
整った身だしなみが清潔感を感じさせる彼の名は、音無伊御という。

(わけがわからない……。いったいこれはなんなんだ……。なんで普通の……いや、あんまり普通でもないか。
 とにかく、善良な高校生の俺たちがこんな物騒な事件に巻き込まれなきゃならない!)

どこを見るでもなく視線をさまよわせながら、伊御は心の内で呟く。
いきなり殺し合いの場に放り込まれるという異常事態を前にして、本来高い適応力を持つ彼もさすがに混乱していた。

(真宵あたりのいたずら……ってことはないよな。いくら無茶苦茶なやつっていっても、あいつだって一介の高校生だ。
 ここまで大規模なことが出来るとは思えない。それに、真宵は人殺しがどうこうなんて話を持ち出してくるような悪趣味なやつじゃない。
 そうなると……本当に殺し合いをしなきゃいけないのか?)

フル回転する伊御の脳裏に、つい先程首輪を爆破されて死んだ老人の姿が蘇る。
伊御はそれほど老人の近くにいたわけではないが、それでも彼の死に様ははっきりと見えていた。
自分や友人たちも、あんな風に死んでしまうのだろうか。そんなことを考えた伊御は、頭の中で友人たちが死ぬ光景をリアルに思い浮かべてしまう。

鈍器で後頭部を割られる榊。拳銃で眉間を撃ち抜かれる真宵。刃物でめった刺しにされる姫。そして、首を絞められ苦悶の表情で死んでいくつみき……。

「うぐっ!」

自分の妄想してしまったシチュエーションに激しい嘔吐感を引き起こされ、伊御は近くにあったゴミ箱に慌てて顔を突っ込む。
不幸中の幸いと言うべきか、伊御が空腹状態であったために吐き出されたのは少量の胃液だけだった。
だがそれでも、胃を抉るような痛みと胃液に焼かれた喉の灼熱感は彼を容赦なく襲う。
伊御は手探りでカバンから水の入ったペットボトルを取り出し、一気に中の水を口の中に流し込んだ。

「はあ……はあ……」

ペットボトル半分ほどの水を消費したところで、伊御はペットボトルから口を離す。
ある程度は落ち着いたものの、それでもまだ心身共に本調子とは言い難い状態だ。

(落ち着け……。あんな光景、現実にしてたまるか……! 俺が守らなきゃ……。あいつら誰一人だって、死なせてたまるか!)

不安定な精神状況の中でも、伊御はおのれの目的を見つけ出す。それは大切な友人たちを守ること。
みんなを死なせたくない。今の伊御が考えられるのは、ただそれだけだ。

(そうと決まれば、早くみんなを見つけないと……)

無造作にペットボトルをカバンに戻すと、伊御はそれを背負い部屋から出ようとする。
だがその矢先、彼が開けようとしたふすまが外側から開けられた。

「え?」

面食らう伊御の前に現れた人物。それは、茜色の髪を長く伸ばした美女だった。

「あら。何か物音がすると思ったら、やっぱり私以外に人がいたのね」

動けずにいる伊御に対し、彼女は無造作に歩み寄る。その顔には微笑が浮かんでいたが、それはかえって伊御の疑念を掻き立てていた。
この殺戮遊戯という恐怖の舞台に立たされながら、笑みを浮かべている事実。それは伊御には、他人を欺くための偽りの笑顔にしか見えなかったのだ。

「近寄らないでもらいましょうか」

カバンの中に武器がなかったかどうか確認しなかったことを後悔しながら、伊御は後ずさる。

「警戒しなくてけっこうです。私はあなたに危害を加えるつもりはありませんから」

笑みを浮かべたまま、女性は伊御に一歩歩み寄る。しかしそれに合わせて、伊御も一歩後退する。

「近寄らないでもらいたいと言ったのが、聞こえませんでしたか?」
「そちらこそ、警戒しなくてけっこうと言ったのが聞こえませんでした?」
「そう言われて、はいそうですかと警戒を解くわけがないでしょう。ここは殺し合いの場なんですよ?
 初対面のあなたを、簡単に信用するわけにはいきません」

殺気立った声で告げる伊御。その言葉を受けた女性は顔から笑みを消し去り、自分の荷物を床に放り投げる。
そして、その中に手を突っ込む。

(やっぱりだまし討ちをするつもりだったか!)

その行動をカバンから武器を取り出すためと判断した伊御は、打って変わって距離を詰めるために走る。
女性がカバンから包丁を取り出したことで、伊御の予感は確信に変わる。
だが、その確信はすぐさま打ち砕かれた。彼女は包丁を自分の手に握らず、それを伊御に差し出したのである。

「え……?」

戸惑う伊御に、彼女は真顔で告げる。

「私が信用できないのでしたら、いつでもそれで私を刺してかまいません。ですからまず、私の話を聞いてください」

真剣そのものの口調で紡がれる言葉に、伊御の心が揺らぐ。目の前の女性に対する猜疑心が、少しずつ溶けてゆく。

(ここまでされたら、さすがに信じないわけにはいかないか……)

溜息を一つつくと、伊御は差し出された包丁を押し返した。

「わかりました。そのアピールだけで充分です。ですから、手の中の物騒なものはカバンに戻してください」
「わかっていただけたんですね」

女性の顔に、笑みが戻る。だがそれも一瞬のこと。彼女はすぐに真顔に戻り、本題を切り出す。

「単刀直入に言います。私に力を貸してください」
「……単刀直入すぎますね。もう少し具体的な説明をお願いします」
「名簿を信じれば、私の友人たちがこの殺し合いに参加させられているんです。
 彼らを助けるためには、殺し合いそのものを破綻させるしかないと私は考えています。
 でも、私一人の力ではやれることなんて限られています。ですから、同志が欲しいんです。
 同じように、殺し合いの破綻を望む仲間を。どうか、私に力を貸してはもらえませんか?」

女性の長い言葉が終わり、その場を静寂が包む。数秒の間を置いて、伊御がその静寂を破った。

「……俺も、友人たちがここに連れてこられています。あいつらが死ぬなんて、俺には耐えられない。
 だから、あなたの気持ちもよくわかります。もちろん、あなたの言葉に偽りがなければ、ですが……。
 とりあえずこの場では、俺はあなたを信用しましょう。俺は、あなたの味方になります」
「ありがとうございます」

伊御から賛同の意志をもらえたことで、女性の顔がほころぶ。それは今までの微笑とは一線を画す、聖母のごとき笑みであった。

「そういえば、お互い名前も名乗ってませんでしたね。私は那波千鶴といいます」
「音無伊御です。いちおう高校生やってます」
「あら、やっぱり年上さんでしたか」
「え?」

千鶴の発言に、伊御は思わず驚きをあらわにする。

「……なんですか、その反応は」
「いや、だって千鶴さんが俺より年下って……」
「私、中学生ですよ?」
「ええ!?」

さらなる驚きを見せる伊御。だがすぐに、彼はその反応を後悔することになる。
自分の反応を見た千鶴の纏う雰囲気が豹変したのだ。
浮かべている表情自体は先程の聖母の笑みとほとんど変わらないというのに、今の彼女はまるで鬼神のごとき威圧感を放っている。

「音無さん……。少し、お話ししましょうか? 今後のために、お互いをよく知っておく必要があると思うんです」
「いや、それは悪くないと思うんですが……。もう少し落ち着いて……」
「あらあら、私は充分に落ち着いているつもりですよ?」

数分後、二人が骨董屋の外に出てくるまで、両者の間で何があったのかは定かではない。
だが、伊御は後にこう語った。
「あれほどまでに恐ろしい思いをしたのは、人生で初めてかもしれない」と。


【一日目・深夜 C-7 骨董屋前】

【音無伊御@あっちこっち】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:友人たち(つみき、姫、真宵、榊)を守る。
1:千鶴に協力する
2:千鶴を怒らせることは極力避ける


【那波千鶴@魔法先生ネギま!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、沼藺の包丁@里見☆八犬伝、不明支給品0~2
【思考】
基本:この殺し合いを破綻させる
1:知人(ネギ、小太郎、のどか)との合流
※麻帆良祭終了後からの参戦です


※支給品紹介

【沼藺の包丁@里見☆八犬伝】
小文吾の妹・沼藺(ぬい)が、亀篠に操られて信乃を襲った時に武器として使った包丁。

前の話
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自分ロワ第17話 のどかの小規模な不安

2009-09-21 19:03:58 | 自分ロワ
前略、ネギせんせー。お元気でしょうか。宮崎のどかです。
今、私は殺し合いなんていう物騒なイベントに巻き込まれています。いえ、わざわざ言うまでもないでしょう。
何せあなたも、同じ殺し合いに参加させられているのですから。きっと、名簿に記された私の名前に気づいてくれていると思います。
そして一緒に記された、小太郎君と那波さんの名前にも。
私たち、これからどうなるのでしょうか。なすすべもなく殺されるしかないのでしょうか。
私は、そんなことにはならないと信じています。なぜならネギせんせー、あなたがいるからです。
きっとネギせんせーなら、こんな絶望的な状況でもなんとかしてくれると信じています。
もちろん、私も可能な限りお手伝いするつもりです。ですから、まずはあなたと合流することを当面の目的としたいと思います。

さて、この場所に飛ばされてそうそう、私には同行者が出来ました。吉田カヲルさんという人です。
高校生だそうなので、私より少し年上だということになります。
吉田さんはパニックになっていた私に、手品を見せて落ち着かせてくれました。
ちょっと抜けた感じはあるけど、すごくいい人みたいです。
私と吉田さんは、殺し合いなんてものはしないという見解で一致しました。
そして今は、お互いの持ち物をチェックしているところです。
私のカバンに入っていたのは、楓さんのものらしい大きな手裏剣とシャベルでした。
一方、吉田さんのカバンに入っていたのは……。

「ストーブと布団、ですか……」
「ふーむ……」

明らかにカバンより大きい、というのはいいんです。きっとカバンの方に何かの魔法がかかっているのでしょう。
しかし、ストーブと布団です。殺し合いという状況の中で、これをいったいどう使えというのでしょうか。
吉田さんも腕を組んで、すっかり考え込んでしまいました。

「おお!」

突然、吉田さんが声をあげると同時に手を叩きました。

「何かわかったんですか?」
「うむ」

私の問いかけにうなずくと、吉田さんは突然ストーブと布団を投げ捨てました。
えーと、これはいったいどういうことなんだろう……。

「ストーブがすっ飛ぶ! 布団が吹っ飛んだ!」

え? ダジャレ……?
戸惑う私をよそに、吉田さんはものすごく満足げな笑みを浮かべていました。
ネギせんせー……。私、この人と一緒に行動しても大丈夫なんでしょうか……。


【一日目・深夜 C-4 平原】
【宮崎のどか@魔法先生ネギま!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、巨大手裏剣@魔法先生ネギま!、工事用シャベル@かおす寒鰤屋
【思考】
基本:殺し合いには乗らない
1:ネギと合流。
2:吉田と行動……していいものかどうか……。
※麻帆良祭終了後からの参戦です


【吉田カヲル@それじゃあ吉田くん!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ストーブ@あっちこっち、布団@サナギさん
【思考】
基本:殺し合いには乗らない
1:???
※2巻終了後からの参戦です


※支給品紹介
【巨大手裏剣@魔法先生ネギま!】
長瀬楓が小太郎との戦いで使用した、2メートルはありそうな手裏剣。
紐を引くと高速回転するギミック付き。
その大きさゆえ、盾としても使える。

【工事用シャベル@かおす寒鰤屋】
第1話で駆馬に襲いかかった虎雄の部下たちが凶器として使っていた、普通のシャベル。

【ストーブ@あっちこっち】
つみきたちの教室に設置されたストーブ。先生が躓いた拍子にぶつかって壊してしまい、真宵が修理することに。

【布団@サナギさん】
「サナギさん」の作中に、頻繁に出てくるアイテム。
作者曰く、「布団だけにかぶってるな、と」。

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自分ロワ第16話 綺麗な花には……

2009-08-15 00:31:54 | 自分ロワ
F-3。そこには「世界樹」の名を持つ、常識では考えられぬほど巨大な木が鎮座している。
そしてその根本に、一つの人影があった。

「はあ、殺し合いねえ……。ばかばかしいったらないわ」

犬坂毛野は、自慢のつややかな長髪を弄りながら溜め息混じりに呟いた。

「道節や小文吾だけならまだしも、信乃ちゃんがいるんじゃねえ……。信乃ちゃんを殺してまで生き延びるなんて、あり得ないわ」

名簿に記された仲間たちの名前を眺めながら、毛野は今一度呟く。
余裕がありそうなその口調とは裏腹に、毛野の美貌は苦悩に歪んでいた。
毛野には、どうしても納得のできないことがあったのだ。

(八犬士のうち、四人までもを無抵抗で連れ去ることができるなんて……。あの子、生半可な妖怪じゃない……。
 妖鬼王・玉梓の腹心……いや、まさか同等の存在?)

毛野の気がかりは、自分たちをここへ連れてきたあの少年のこと。
この殺し合いを止めるには、少年を打倒するほか無い。
だが少年は、自分たち八犬士の半数を容易に拉致できるほどの力を持っているのだ。
戦力が半減した今、自分たちだけでそれほどまでに強力な存在を倒すことができるのだろうか。
客観的に考えれば、勝率は非常に低い。それを即座に理解してしまったがゆえに、毛野の顔には次々と汗が浮かんでいく。

(ああもう、私らしくないわね……。やる前から弱気になってどうするのよ!
 悩む前にまず行動! 早いところ信乃ちゃんと、ついでに小文吾と道節を見つけないと!)

弱気になりつつあった自分に喝を入れ、毛野は荷物を背負って颯爽と歩き出す。
だがその歩みは、三歩と進まぬうちに止まってしまった。

「え……? ちょっと、あれって……」

「それ」を目撃して、毛野は驚愕に目を見開く。それも無理のない反応だ。
毛野が見たのは、はるか上空から落下してくる誰かだったのだから。

(まさか、この状況に絶望して身投げ? 冗談じゃないわ。私の前で死なれてたまるもんですか!)

眉間にしわを寄せつつ、毛野は落下地点を予測してそこへ向かって走る。
だがここで、予想だにしない事態が起きた。落ちてきた人影が、空中で忽然と消失したのである。

「え?」

事態が飲み込めず、呆然とする毛野。そこへ、二度目の衝撃が襲いかかる。
消失したその人影が、やはり忽然と眼前に現れたのだ。

「な……!」
「はー、やっぱりあの高さからの連続テレポートは疲れるわね……。他の方法を考えた方がよかったかしら?」

混乱する毛野の前で、その人物は気だるげに独り言を漏らす。

「って、人いるじゃない! ごめんなさい、驚かれました? 私、私立CLAMP学園高等部3年A組、亜細亜堂ユウキと申します」
「……はあ。私は犬坂毛野。職業は……そうね、旅芸人ってところかしら」

こちらの存在に気づくや否や、よどみない口調で自己紹介を述べるユウキと名乗った若者。
それに対し、毛野も若干動揺を引きずりつつ自己紹介を返す。

「しかしあなた……。ずいぶん平気そうじゃない。いちおう、ここは殺し合いの場なのよ?
 もう少し他人を警戒した方がいいんじゃないかしら」
「もちろん、殺し合いの場だと言うことは理解していますよ? それに対する恐怖心も少なからずあります。
 けど、これでもそれなりに修羅場慣れはしてますから。毛野さん……でしたっけ?
 あなたからは殺気を感じられません。だったら気を許しても大丈夫でしょう?」
「なるほどね……。なかなか肝が据わってるじゃない。それに冷静だわ」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」

感嘆の声を漏らす毛野に対し、ユウキは笑顔で軽く会釈してみせる。

「私に敵意がないのはわかってもらえてるみたいだけど……。そっちも敵意はないみたいね。
 それなら、聞かせてもらえるかしら? さっきあなたは、空中で突然消えて地上にまた現れた。
 あれは何? まさかあなた、妖術使いか何か?」
「妖術とはまた古風な……。ああ、ひょっとして格好もそれっぽいし、毛野さんって実際に古風な人なのかな?
 まあ、それはどうでもいいんです。知りたいというのなら解説してあげましょう」

大げさな身振りをみせると、ユウキは毛野の質問への回答を答え始めた。
すなわち、自分が持つ力の説明である。

「私はテレポーター……すなわち、瞬間移動能力の持ち主なんです。
 正確に言えば、私の能力は特定の場所の空気と自分の肉体を入れ替える能力なので『空間転移』という表現の方が的確なんですが。
 ただある程度の制約もあって、30㎝以上の高さから落下しないと発動できません。
 それから転移先をしっかりと脳内に思い描く必要があるので、目視できているか普段行き慣れている場所でなければ転移は不可能です」
「ん? ちょっと待って? あなたは道節みたいに……って言ってもわからないか。
 とにかく、自分が知ってる場所ならどこにでも瞬間移動できるわけよね?
 そしたら、簡単に自分がもともといたところに帰れるんじゃないの?」
「そう思いますよね!」

毛野の口から放たれた素朴な疑問に、ユウキは待ってましたとばかりに声を張り上げる。

「もちろん私も、真っ先にそれを試しましたよ! でも、全然駄目だったんです!
 学校に帰ろうとしてるのに、転移したのはすぐ目の前! どうやら何かの仕掛けで、私のテレポートじゃこの島から出られなくなってるみたいなんです!
 だから仕方なく、この木のてっぺんから連続テレポートで落下エネルギーを消費しつつ降りてきたところを毛野さんに会った、と」
「なるほどねえ……」

ユウキの勢いに若干気圧されつつも、毛野はその話を理解し納得の表情を浮かべる。

「さすがにあの坊やも、そう簡単には帰してくれないってことね……」
「ですね。それに私が帰れたとしても、仲間たちを置き去りにしていくわけにはいきませんし」
「仲間……。ユウキちゃんの仲間も、このふざけた話に巻き込まれてるわけ?」
「ええ、同好会の仲間が四人全員……。『も』ってことは、毛野さんの方も?」
「そのとおりよ。旅の仲間が三人、ね」
「知り合い同士を集めて殺し合えだなんて……。本当に悪趣味だわ! 絶対許せない!」
「まったくだわ」

毛野に負けず劣らずの美しい髪を振り乱して憤慨するユウキに、毛野も思わず同意の言葉を口にしていた。

「あなたもそう思いますよね、毛野さん! こんな殺し合い、私たちでぶち壊してやりましょうよ!」
「たしかに、それができるなら協力してあげたいけど……。何か当てでもあるの?」
「それは……」

毛野の的確かつ冷静な指摘に、それまで熱を帯びていたユウキの態度が一気に冷え込む。

「と、とにかくまずはこの島を徹底的に調査しましょう! 何か殺し合いを止めるための手がかりが見つかるかも!
 いえ、きっと見つかります!」
「要するに行き当たりばったりってわけね……」

たまらず苦笑を浮かべる毛野。

「けどまあ、その心意気は買うわ。あなた一人じゃ危なっかしいし……。
 しばらく一緒にいさせてもらうわよ、ユウキちゃん」
「本当ですか!?」

同行を受諾され、ユウキの頬がたまらず緩む。

「それじゃあこれからよろしくお願いしますね、毛野お姉様」
「あらやだ、お姉様だなんて」
「それなら……お兄様にしておきますか?」
「!!」

ユウキがさも当然のように放った一言。それは、毛野の美貌を凍り付かせるには十分な破壊力を持っていた。

「ゆ、ユウキちゃん……。まさかあなた、私が男だって……」
「ええ、気づいてましたよ? だって……」

小悪魔の笑みを浮かべながら、ユウキは言う。

「私も同類ですもの♪」


【一日目 深夜 F-3 世界樹の下】

【亜細亜堂ユウキ@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
【状態】疲労(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:この島からの脱出。
1:島を調べて、殺し合いを止める手がかりを捜す。
2:研究会の仲間(高雪、光司、美冬、りおん)との合流。
※本編終了後からの参戦です。
※テレポート能力は制限により、島の外部へ移動することはできません。

【犬坂毛野@里見☆八犬伝】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いの中断。
1:ユウキに同行する。
2:他の犬士(道節、小文吾、信乃)との合流。特に信乃を優先。
※単行本6巻終了時からの参戦です。

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自分ロワ第15話 水落ちは生存フラグ

2009-05-03 11:03:06 | 自分ロワ
注意:残虐描写が含まれます

B-4。ちょうど森林部と都市部の境目に当たる、川のほとり。
そこに、二人の参加者がいた。
一人は学生服の少年……狗神使い、犬上小太郎。一人はゴスロリ服の少女……神鳴流剣士、月詠。
二人は同じ世界の出身者であり、以前同じ人間に雇われ共に仕事を行ったこともある。
しかしこの地での二人の再会は、穏やかなものとはならなかった。
現在、小太郎と月詠は戦闘を行っている。いや、その言い方は不正確だろう。
正しくは、月詠が一方的に小太郎を攻めていた。

「なんで攻撃してけえへんのです、小太郎はん? せっかくお祭りに呼ばれたんやさかい、楽しまな損ですえ?」
「アホ! お前も知っとるやろ! 俺は女は殴らん!」

月詠が目にも止まらぬ速さで振るう刃をかわしながら、小太郎は叫ぶ。

「いけずやなあ。うちは全力の小太郎はんと戦いたいのに……」
「勝手なことぬかすな! こっちはお前と戦いたくないっちゅうんじゃい!」
「う~ん……。そこまで言うなら仕方ありませんか。そもそもうちは男の子より女の子と戦う方が好きやし……。
 戦ってくれへん小太郎はんには、さっさと死んでもらいます~」

その刹那、月詠の纏う空気が変わる。彼女の中の「気」が、その両腕と刀に集中していく。

「神鳴流奥義、ら~いめ~いけ~ん」

間の抜けた叫びと共に、月詠が刀を振り下ろす。するとその剣先から、電撃がほとばしる。
電撃は文字通り電光石火の速さで、小太郎に襲いかかった。

「ちぃっ!」

それに対し、小太郎は高速移動術である「縮地」を発動。間一髪で電撃の直撃を回避し、そのまま都市部へ逃げ込む。

「逃がしまへんえ~」

しかし大技を一度かわされた程度で諦めるほど、月詠も諦めがよくはない。
彼女も小太郎を追い、都市部へと足を踏み入れる。

(ああもう、面倒やな……。あいつの相手なんぞしてる暇はないっちゅうに……。
 千鶴姉ちゃんやのどか姉ちゃんも巻き込まれてるんや、早いところ見つけて守ってやらんと……。
 この辺は建物多いし、隠れながら少しずつ移動すれば逃げ切れるか?
 敵に背中見せるんは不本意やけど、だからといって女殴るわけにもいかんしな)

建物の陰でそんなことを考えながら、小太郎が縮地で一歩を踏み出そうとしたその時。
その男は現れた。

(なんやこいつ……。いつの間に……)

突如視界の中に出現した男に、小太郎は驚愕を隠せずにいた。そして、次にわき上がっているのは警戒心。
裏社会の住人としての、小太郎の勘が告げる。「こいつはやばい」と。
男は、微笑みを浮かべて小太郎を見ている。その笑みが、かえって男の不気味さを際だたせていた。

「こんばんは」

男が口を開く。

「早速で悪いけど、死んでもらえるかな」

刃、一閃。小太郎の胸が切り裂かれ、血しぶきが上がる。

(ちっ、やっぱりか! この兄ちゃん、めっちゃ強いやないか!)

反射的に傷口を押さえながら、小太郎は心の中でこぼす。
彼には理解できていた。あとほんの少し飛び退くのが遅れていたら、自分は今の一撃で死んでいたということを。
たった一度の攻撃で、小太郎は相手の力量を十分すぎるくらいに理解した。
だが強大な敵を前にしても、小太郎に怯えや焦りの色はない。むしろ、その目は輝きを増していた。
主義主張の違いこそあれ、彼も月詠と同じ戦闘狂(バトルマニア)なのである。

「オッケー、相手にとって不足はないわ。そんなら兄ちゃん、やろうやないか」

牙と爪をあらわにし、小太郎は不敵な笑みを浮かべながら呟く。

「参ったねえ。素直に死んでくれるとありがたいんだけど。
 僕は戦いがしたい訳じゃなくて、早くこの世界から出たいだけなんだ」
「そんだけ強くて、何言うとんねん、兄ちゃん。俺を殺したかったら、正々堂々勝負に勝って殺せや!」

困ったような表情を浮かべる男に、小太郎は問答無用とばかりに跳びかかる。
だが彼の爪が男に届く前に、その脇腹を衝撃が襲った。

(な、なんや! まだ兄ちゃんの間合いには……)
「逃がしまへん言いましたやろ、小太郎はん?」
(し、しもた!)

小太郎の視線の先にいたのは、月詠。たった今小太郎を襲ったのは、月詠の技・斬空閃だ。

(何やっとるんや、俺! 兄ちゃんの殺気が強すぎて、月詠の殺気が近づいてるのに気づかんやなんて……)

小太郎の脳内を、後悔がよぎる。だが、今更悔やんだところでどうしようもない。
吹き飛んだ小太郎の体は地面に叩きつけられ、そのままアスファルトの上を転がって近くの川の中へ落下した。

「申し訳ありまへん、獲物を横取りするような真似をしてしもうて。
 せやけど、あの子と最初に戦ってたのはうちなんどす。堪忍な」
「別に謝る必要はないよ。僕の目的は、あくまで生き残って次の世界に行くことだ。
 人数が減るのなら、誰が殺そうとかまわないさ」
「そうどすか~。けど、うちは違います。うちは、強い相手と戦いたいんどす。
 小太郎はんが期待はずれやったさかい、お兄さんが代わりにうちの相手してくれまへんか~?」

月詠は惚けたような笑みを浮かべながら、刀の切っ先を男に向ける。

「悪いけど、遠慮しておくよ。さっきも言ったように、僕の目的は生き残ることだ。
 さっきの子は見つけたとき殺し合いに消極的な感じがしたから攻撃したけど……。
 君のように他の参加者を積極的に殺していきそうな人とは、まだ潰し合いたくない。先は長いだろうからね」
「なんや、お兄さんもいけずやなあ。そう言わんと……うちと遊んでいっておくれやす!」

一転、月詠の表情が修羅のそれへと変わる。男に突進し、袈裟斬りに刀を振るう。
男はそれを、大きく後ろに飛んで回避する。カウンターはおろか、反撃の糸口をつかもうという気すら感じられない。
それは、完全なる逃げの行動だった。

「そんなにうちの相手をするのがいやどすか? 乙女として傷つきますわ~」

緊張感のない口調で愚痴りながら、月詠は男に追撃をしかける。
だが、当たらない。男は完全に攻撃を捨てた大きな回避で、月詠の刃から逃れ続ける。
たとえ相手が逃げに徹しようと、それが並の相手なら月詠にとってしとめるのはたやすい。
彼女の剣は「速さ」を重点的に磨いたものなのだから。
だが、男はその速き剣をかわし続けている。月詠が本来の二刀流でないことを差し引いても、その事実は男の力量が月詠以上であることを示していた。

「たまりまへん……。ゾクゾクして来ますわぁ……」

休むことなく刀を振るいながら、月詠は恍惚の声を漏らす。
楽しくてたまらない。彼女は心の底からそう思っていた。
戦闘狂の血が騒ぐ。こんなに強い相手と戦えるなんて、嬉しくて仕方がないと。
だが、今の恍惚感ですら完璧なものではない。相手はまだ、こちらに攻撃をしかけてこないのだから。
お互いが相手を殺す気でぶつかり合ってこそ、真の戦闘だ。まだ足りない。この男から引き出せる楽しさは、こんなものではない。

「いい加減、その刀を使ってはもらえませんか~?」

そういいながら繰り出す唐竹割りも、やはり空振り。回避した男は、数メートル後ろに下がって止まる。

「なるほど。確かにこのままでは埒が開きそうにないしね」

男はそう呟くと、今まで使おうとしなかった刀を構えた。
彼の行動を見て、月詠は歓喜する。これでようやく、まともな戦いになると。
しかし彼女の思いは、あっけなく裏切られることになる。
男が放ったもの、それは斬撃ではなく火炎だった。

「きゃっ!」

予想外の攻撃に、思わず怯む月詠。とっさの回避で炎の直撃は避けたものの、その拍子にかけていたメガネを落としてしまう。

「あわわ、メガネメガネ……」

慌てて地面をはいつくばり、メガネを探す月詠。なんとかメガネを見つけ拾い上げるものの、その時にはすでに男の姿は消えていた。

「ふう、うちとしたことが、つまらんミスをしてしまいましたなあ。
 あのお兄さんも、神鳴流と同じような技を使えたとは……。世界は広いどすなあ」

メガネをかけ直し、月詠は溜め息を漏らす。

「まあ、逃げられてしもうたもんは仕方ありまへん。次の獲物を探しに行きますか~。
 今度は刹那先輩みたいな、可愛い女の子がええどすな~」

月詠は今一度緊張感の感じられない笑みを浮かべると、夜の街を駆けていった。


【一日目 深夜 B-5 市街地】

【月詠@魔法先生ネギま!】
【状態】疲労(小)
【装備】桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:強者(特に女性)と戦う。
1:男との再戦を狙う。
※修学旅行編終了~魔法世界編開始の間からの参戦です


(なんとか撒けたみたいだねえ……)

月詠の前から消えた男……星史郎は、追跡がないことを確認するとほっと息を漏らした。

(こんなゲーム、早く終わらせて次の世界に行きたいところだけど……。さすがに僕一人で50人殺すのは大変だからね。
 彼女みたいに、積極的に他の人たちを殺そうとしている人にはできるだけ頑張ってもらわないと)

そんなことを考えながら、星史郎は一度止めた足を再び動かし始めた。
彼は殺人鬼でも、戦闘狂でもない。よって、無益な争いは好まない。
だが同時に、彼は目的のためならばどんな犠牲もいとわない。
異世界を渡り歩き、「双子の吸血鬼」を見つけるという目的の為なら。
その犠牲がたとえ、かつて短くない時間を共にした友人の命であっても。

(僕の魔法具は没収されちゃってるみたいだし……。この世界から出るには最後の一人まで生き残るしかない。
 小狼、悪いけど君や君の友達にも死んでもらうよ?)

軽快な足取りで、夜の街を往く星史郎。その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。


【一日目 深夜 B-5 市街地】

【星史郎@ツバサ】
【状態】健康
【装備】緋炎@ツバサ
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:最後の一人になり、この世界から脱出する。
1:殺し合いを積極的に行っている人間は、できるだけ殺さない。
※桜都国編終了~日本国編開始の間からの参戦です。
※右目の魔法具は、ただの義眼に交換されています。


(死なん……。俺はまだ死なんぞ、ボケ……!
 待っとれ、千鶴姉ちゃん……。必ず俺が見つけて、守ったるからな……)

負った傷は決して浅くなく、意識は朦朧としている。
それでも確固たる誓いを胸に秘め、小太郎は川の流れに運ばれていく。


【一日目 深夜 B-6 川】

【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
【状態】ダメージ(大)、意識朦朧
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:無力な知り合いと合流し、守る。
1:強い奴(男限定)がいたら戦いたい。
※麻帆良祭終了後からの参戦です。

※支給品紹介

【桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)】
小説「スーパー童話大戦」で、かがみ・桃太郎が使っていた日本刀。

【緋炎@ツバサ】
桜都国で小狼が購入した刀。使用者の意志によって火炎を発生させることができる。

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自分ロワ第14話 忠

2009-02-28 23:05:29 | 自分ロワ
注意:残虐描写が含まれます

A-3。ここに顔の下半分を覆面で覆い隠した、怪しい男がいた。
彼の名は、犬山道節。聖女・伏姫に導かれた八犬士の一人であり、「自称」忍者である。

「くだらん……」

誰に聞かせるでもなく、道節は呟いた。彼は、このバトルロワイアルという催しに一切の興味を抱いていなかった。
最初に集められた部屋で何人か犬士の仲間を見つけたが、知ったことではない。

(あいつらなら、放っておいてもどうにかするだろう。俺はさっさと帰らせてもらう)

道節の体が、ずぶずぶと地面に沈み込んでいく。これぞ「亜空間ワープ」。
影に潜り、別の影から姿を現す道節の得意技である。技と言っていいものかは微妙だが。
とにかく、道節はこの能力により殺し合いの舞台を去った……つもりだった。
だが彼が次に姿を現したのは、最初にいた地点から数百メートルしか離れていない木の陰だった。

「なんだと……?」

予想外の事態に、道節は思わず言葉を漏らす。
彼がこの会場から脱出できなかったのはティレクによって亜空間ワープの力が大幅に弱められていたからなのだが、それを彼が知る方法はない。
絶対の自信を抱いていたおのれの力の不調に、道節は大きく動揺していた。
そのために、彼は背後から襲い来る存在に気づくのが遅れた。

「!!」

彼の右肩を、強い衝撃が襲う。攻撃に対する覚悟ができていなかった道節は、そのまま地面に倒れ込んだ。
だが彼も、八犬士の端くれ。すぐさま体勢を立て直し、攻撃が来た方向へ視線を向ける。

「貴様は……!」

自分に一撃を加えた存在を確認して、道節は眉間にしわを寄せる。
そこにいたのは、黒い服に身を包んだ一人の女性だった。
美しいと言って差し支えない顔立ちだが、道節はそんなものに気を取られてはいない。
道節が見ていたのは、彼女の額。人間にはあるはずのない、第三の目だった。

「妖怪か……」
「妖怪? ああ、人間たちから見た我々の呼称には、そのようなものもあったな」

目に冷たい光を宿し、淡々とした口調で女性は言葉を返す。

「我が名は魔界親衛隊長、三眼のランス。我が主君吉田カオル様のために、貴様には死んでもらう!」

叫びと同時に、ランスと名乗った女性の額からまっすぐに光線が放たれる。道節はとっさに跳び退き、それを回避。
光線は地面に突き刺さり、土埃をあげる。

(さっきの一撃はこれか!)

道節が理解するや否や、また新たな光線が道節目がけ飛んでくる。道節は大きく上に跳んでそれを避け、木の枝に着地した。

「あまり調子に乗るなよ。妖怪が相手ならば、こちらも容赦せん!」

木の上で、道節は胸の装甲板を開く。その下に隠された砲口から、彼はミサイルを発射しようとする。
だが、ミサイルは発射されない。「しない」のではない。「できない」のだ。

(馬鹿な……。まさか!)

慌てて、自分の状態を確かめる道節。その結果、彼は自分の現状が恐れていたとおりであることに気づく。
ミサイルの残弾はゼロ。腕から射出する針も装填されていない。体内に収納されているはずの分身・ミニ道節もなければ、最強の武器である「火遁一号」の弾丸もない。

(弾薬の類は全て取り除かれているということか……。おのれぇぇぇぇぇ!!)

おそらくそれを行ったであろう主催者に対し、道節は怒りを募らせる。だがそんな事情は、対峙するランスにとって知ったことではない。

「どうした? 反撃してこないのならば続けていくぞ!」

ランスがまたしても放った光線が、道節のいる枝を焼く。だがその時にはすでに、道節は空中に逃れていた。

(弾を使うだけが俺の技ではない! 目からビームが貴様だけの得意技と思うなよ!)

宙を舞う道節の目に、不自然な光が宿る。その直後、その目から二筋の光線が放出された。

「何!?」

思わぬ反撃に、ランスの反応が遅れる。とっさに身をよじって直撃は回避したランスだが、完全には避けられず脇腹を少し焼かれてしまった。

「ちっ、私としたことが……。貴様も同類だったか!」

近くに着地した道節をにらみつけながら、ランスは叫ぶ。その言葉に、道節は怒りをあらわにする。

「この俺を、妖怪と一緒にするな!」

叫び返しながら、道節は右手をかざした。すると手が腕の中に収納され、代わりにそこから輝く長剣がせり出してくる。

「だったら、なぜそんな人間離れしたことができる!」
「忍者だからだ!」
「そんな忍術聞いたことがないぞ!」
「忍術に不可能はない!」

接近戦を行いながら、同時に二人は言葉もぶつけ合う。
もっとも接近戦とはいっても、ランスはそれに向いた武器を支給されていないがゆえに道節が一方的に攻撃しているのだが。
本来剣士であるランスは、道節の太刀筋を見切り回避を続ける。しかし攻撃をしないのでは、いずれ追いつめられるであろうことは自ずと明らかだ。

(このままでは勝ち目はない……。だが距離を取ったところで、飛び道具はあちらにもある。どうすれば……)

劣勢を覆すためには、どうすればいいか。ランスは考える。その時、一瞬ではあるが彼女の動きが鈍る。
その隙を、道節は見逃さなかった。

「もらった!」

一閃。

血しぶきが上がり、ランスの体が崩れ落ちる。

「くっ……。うう……」
「まだ息があったか。俺は妖怪相手に情けをかけるほど甘くはない。しっかりと止めを刺してやるから、待っていろ」

必死に体を起こそうとするランスに、道節は一切の情けを見せることなく剣を振り下ろそうとする。
だがその瞬間、ランスの体が爆発的に躍動する。その両手は道節の右腕をつかみ、自分に剣が振り下ろされるのを阻止する。

「なに!?」
「こんなところで……」

驚く道節をよそに、ランスは息も絶え絶えに呟く。

「死んでたまるかー!」

そして絶叫と共に、道節の体を投げ飛ばした。

「ハア、ハア……。私は……まだ死ねないんだ!」

生への執着を、ランスはためらわず声に出す。
自分はまだ死ねない。忠義を誓った彼を、この殺人遊戯から解放するまでは。
彼以外の参加者を全て打ち倒し、彼を優勝させるまでは。

「死ね……ないんだーっ!」

魂を振り絞るような叫びと共に、ランスは体を起こそうとする道節の顔面を殴りつける。
だが、道節もこの程度で倒れるような柔な男ではない。

「貴様の事情など知ったことか!」

道節の胸が開き、そこからグローブをはめたマジックハンドが飛び出す。それはランスの胸に刻まれた傷を、したたかに打ち付けた。

「がはっ!」

冗談にしか見えないような攻撃でも、今のランスにとっては笑っていられないダメージだ。
傷口から血をまき散らしながら、ランスは後ずさる。だが、決して膝はつかない。

「……ッ!」

歯を食いしばりながら、ランスは額の第三の目からビームを放つ。だがランス本人のダメージが反映されているのか、そのビームに勢いはない。
道節はたやすくビームを回避し、ランスとの距離を今一度詰めるべく一歩を踏み出す。
その直後、道節の胸を「もう一つの光線」が貫いた。

(何……?)

後ろに向かって倒れながら、道節はしっかりと見た。ランスの手に握られた、一丁の銃を。

「一撃目は……囮か……」
「ああ、ビームを撃てる私が光線銃を持っていても役に立たないと思っていたが……。こういう使い方もあるのだな。とっさに思いついて助かった」
「助かっただと……? この程度で勝ったつもりか!」

頭だけを起こし、ランスに向かってビームを発射しようとする道節。だがビームが放たれるよりも一瞬早く、ランスの銃が放った光線が道節の額を貫いた。

「は……ま……じ……」

最愛の妹の名前を呟いたのを最後に、道節は動かなくなる。だが、ランスはそれでも気を緩めない。
銃口を道節の頭に密着させ、今一度引き金を引く。さらに銃口の位置をずらし、もう一度。
それを何度も繰り返し、道節の顔を穴だらけにしたところでようやくランスはその手を止める。

(終わったか……)

道節が完全に死んだことを確認し、ランスは安堵の溜め息を漏らす。
同時に緊張が解けたことで、極度の集中で和らいでいた痛みが一気に襲ってくる。
その痛みで倒れそうになるランスだが、どうにか踏みとどまった。

(傷は決して浅くない……。今後問題なく行動するためには、治療を施す必要があるな。
 たしか病院があったはず……。おそらく都合よく医者がいることはないだろうから、応急処置ぐらいしかできないだろうが……。
 それでも何もしないよりはましだ)

病院の位置を確認するべく、ランスは自分の荷物から地図を取り出してそれを眺める。

(あった、D-1か。遠くはないが、かといって近くもないか。そこにつくまで、この男のような手練れと会わないことを祈るしかないな)

そんなことを考えつつ、ランスは道節が身につけていたマントをはぎ取り、包帯代わりに傷口に巻き付ける。
衛生面を考えればベストな選択とは言い難いが、まず出血を抑えることを優先したための選択である。
作業を終えた彼女は、今度は道節が残した荷物に使えるものがないか調べ始めた。

(死体の荷物あさりか……。魔界の親衛隊長ともあろうものが、地に落ちたものだ)

自嘲の笑みを浮かべながらも、ランスは手を休めない。やがて、彼女は一振りの日本刀を見つけ出した。

(悪くないな……)

その日本刀を、腰に差すランス。ついでに行きがけの駄賃とばかりに、道節の荷物を全て自分のデイパックに移す。
作業を全て終えると、彼女は立ち上がりふらつく足取りで歩き始めた。

(道は険しいが……。やらなければならない。全ては、魔王カオル様のために!)

狂的なまでの忠誠心を胸に、ランスは進む。敬愛して止まない、主君のために。

【犬山道節@里見☆八犬伝 死亡】
【残り47人】



【一日目 深夜 A-3 平原】

【ランス@それじゃあ吉田くん!】
【状態】上半身に刀傷、左脇腹に火傷
【装備】光線銃@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル、蒼氷@ツバサ
【道具】支給品一式×2、不明支給品0~4
【思考】
基本:吉田以外の参加者を皆殺しにし、吉田を優勝させる
1:病院に向かい、怪我を治療する
※単行本2巻終了後からの参戦です。

※支給品紹介

【光線銃@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
CLAMP学園に潜伏した宇宙犯罪者が、ユウキを襲撃した時に用いた武器。
鉄の扉を貫通するレベルの威力がある。

【蒼氷@ツバサ】
桜都国で黒鋼が購入した長刀。特殊な力はないが、黒鋼の全力戦闘に耐えられる銘刀である。

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自分ロワ第13話  造る者、壊す者、治す者

2009-01-12 16:33:03 | 自分ロワ
「どういうことだ」

筋骨隆々の巨漢、ワムウがこの殺し合いで真っ先に発した言葉は、それだった。
彼は、死んだはずの男だった。
ジョセフ・ジョースターとの決闘に敗れ、ワムウという存在は確かに死んだはずなのだ。
なのに今、彼はこうして立っている。それは、彼の理解の範疇を超えた出来事であった。

(生き返ったというのか……? だが、なぜそんなことが……。
 まさか、あの魔神などとほざいていた小僧が本当に神の力を持っていたとでも?)

にわかには肯定しがたい話だ。彼が尊敬する主君、カーズでさえ死者の復活など不可能なのだから。
だが、ワムウにはそれ以外に納得できる理由が思いつかない。

(まあ、俺ごときの頭で考えてもどうしようもないか……。生き返ってしまったものは仕方ないと割り切るしかない。
 それより、これからどうするかだ)

殺し合い。要は、ルール無用の戦いだ。ルールがないというのは彼にとって少々不満だが、さしたる問題ではない。
戦いである以上、最終目的は勝利以外あり得ない。それは戦士であるワムウにとって最もわかりやすく、最も魅力的な目的だ。
戦い続け、最後の勝利者となる。それが、ワムウの選択した道であった。

(果たしてこの戦いに、俺と渡り合える人間がいるのかは疑問だが……。まあいい。
 戦い続ければわかる事だ)

思考にひとまずの区切りをつけ、ワムウは歩き出す。ある地点を見据えながら。

「そこに隠れている人間、出てこい」
「げっ……」

ワムウが言うと、草むらから小さな声が上がる。やがてそこから、一人の青年が姿を現した。

「あはは、どうも~」

青年は、その中性的な顔立ちに愛想笑いを浮かべる。
彼の名は、水島大魚。新進気鋭の若き陶芸家であり、琉球空手を収めた猛者でもある。
だが、そんな彼の経歴などワムウはまったく興味がない。
彼にとっての大魚は、戦う相手。それ以上でもそれ以下でもない。

「さあ、様子など見ていないでかかってこい。こちらは覚悟が出来ている」
「え? それはつまり、あなたと戦えと?」
「他に何がある? ここは最後の一人になるまで殺し合う場なのだろう?」

大魚の反応に、ワムウは怪訝な表情を浮かべる。

「いや、確かにそうだけど! おかしいでしょう、いきなり殺し合えなんて!
 無理矢理こんなところに連れてこられて、なんでそんな理不尽な命令に従わなきゃいけないんですか!
 あの子にそんなことを強制する権利なんてないんです! 殺し合いなんてするより、あの子を見つけ出してとっつかまえたほうがよっぽど建設的です!
 ねえ、いっしょにやりましょうよ! お兄さんみたいな立派な体格の人が仲間になってくれるなら、こっちも助かるんですから!」

額に汗を流しながら、大魚は必死に熱弁を振るう。

「なるほど、理不尽な命令に従う必要はないということか……。一理あるな」
「でしょう? だったら僕といっしょに……」

ワムウの返答に脈ありと感じ、大魚は顔に喜びをにじませる。
だが、それはワムウの次の一言に打ち砕かれた。

「だが断る」
「ええ!?」
「このワムウの最も好きなことは、戦うことだ。理不尽であろうがなんであろうが、目の前にある戦いから逃げ出すようなことはしない」

きっぱりと告げると、ワムウはファイティングポーズを取る。

「いやいや、そんなこと言わずに……。話し合いで解決しましょうよ、ね?」
「あいにくと、俺の趣味ではない。諦めて、俺と戦え。あくまで俺の勘だが……貴様も戦闘に関して素人ではないのだろう?」
「うっ……」

図星を突かれ、大魚は思わず顔をしかめる。

「当たっていたようだな。さあ、来い! 来ないのならこちらから行くぞ!」

ワムウが発破をかける。だが、それでも大魚は動かない。しびれを切らし、ワムウが先に動いた。

(速い!)

巨体からは想像できないワムウの俊敏さに、大魚は目を見張る。
刹那、飛んでくる拳。回避は無理だと判断した大魚は、とっさに腕を盾にする。
だがワムウの強力の前に、その程度の防御は無意味。バキリと音がして、小枝のように大魚の腕の骨が粉砕される。
更に大魚の体は吹き飛ばされ、背後の木に激突した。

「うあああああ!! う、腕が! 僕の腕が!!」

腕を折られた痛みとショックで、大魚は狂ったように叫ぶ。その様子を、ワムウは失望に満ちた目で見つめていた。

「つまらん。体の捌きはまあまあだが、脆すぎる。とうてい俺の相手は務まらん」

吐き捨てるように呟きながら、ワムウは吹き飛んだ大魚にゆっくりと近づいていく。

「せめてもの情けだ、苦しまぬよう一瞬で殺してやる」

逃げる気力もない大魚に向かって、ワムウは腕を振り下ろそうとした。
だがその瞬間、まばゆい光が彼の目を焼いた。

「ぐむっ!」

思わず手を引っ込め、目を覆うワムウ。その間に、誰かが走り寄ってくる。
額から伸びる触覚でそれを察知し、ワムウは拳を繰り出す。
だがその拳は空を切り、その間に近づいてきた何者かは再び走り去ってしまった。

「くっ、不覚……。俺としたことが……」

ワムウが再び目を開いた時、そこには走り去った男のみならず大魚の姿もなかった。
触覚という人間にない感覚器官を持つワムウは、目が見えなくとも人間ほど不自由はしない。
先程攻撃を外したのは、純粋に予想外の事態が起きたことに対する動揺が原因だ。
それはすなわち、ワムウの心に油断があったということになる。

「ここがルール無用の戦場であったことを失念していた……。他者の乱入も十分にあり得るということか。
 このような不覚、戦士としては恥以外の何物でもない。これより先は気を付けねばな……」

おのれを戒め、ワムウは歩き出す。逃げた相手を追うつもりはない。
戦わずに逃げる相手など、その実力もたかがしれるというもの。大魚に関しても、自分の相手にはならないとわかった以上未練はない。
自分が戦うに値する強者を求め、ワムウは彷徨を始めた。

【一日目・深夜 C-2 森】

【ワムウ@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:最後の一人になるまで戦う。
1:強者を見つけて戦いを挑む。
※死亡後からの参戦です。
※名簿を見ていないため、ジョセフやリサリサの存在に気づいていません。


ワムウから数百メートル離れた地点。そこに、二人の青年がいた。
一人は大魚。もう一人は、髪を長く伸ばしたつり目の男だ。

「ふう、追っては来てないみたいだな……。助かったぜ。ユマじゃあるまいし、あんな強そうな奴と真っ正面からやり合えるかっての」

髪の長い男……ムニ・フラクタルは、気だるげに呟いた後安堵の溜め息を漏らす。
彼の腰には、一振りの日本刀が下げられていた。
これこそ、彼がワムウから逃走を成し遂げられた理由。気合いを込めると刀身が光る謎の銘刀、「虎徹」である。

(で、どうするかなあ、こいつ。殺されそうだったからとっさに助けたのはいいけど……。
 話しかけてもまともな反応返って来ねえし)

ムニの視線の先には、うわごとのように「腕が……腕が……」と呟く大魚がいる。
腕が折れては、作品を作り上げることが出来ない。それ故大魚はここまで追い込まれているのだが、そんな事情をムニが知るはずもない。

「腕が腕がって……。要するに、腕を治してやればいいのか? あんまり気がすすまねえが……。仕方ねえな」

心底いやそうな表情を浮かべると、ムニは自分の顔を大魚の顔に近づける。
そして、その唇を奪った。

「!!」

その衝撃的な出来事に、大魚は正気を取り戻す。そしてすぐさま、ムニの体を思い切り蹴飛ばした。

「ごはっ!」

奇声を漏らしながら、ムニは土の上に倒れ込む。

「な、なんてことしてくれるのさ! いくら僕が可愛いからって! この変態! ホモ! 性犯罪者!」

思いつく限りの罵詈雑言を、ムニにぶつける大魚。ムニはそれを意に介さず、あきれ顔で大魚に語りかける。

「腕、少しはましになっただろ」
「え……? あ! 言われてみれば!」
「簡潔に言おう。俺は口づけすることで他人を健康な状態に戻す力がある。
 今のは治療であって、変な下心があってやったわけじゃない。俺だって、男に口づけなんかしたくねえんだよ」
「そうだったんだ……。ごめん、思いっきり蹴っちゃって」
「謝ることはねえ。まともな反応だ。まったく、力の発動方法がこんなのじゃなければ、俺もためらわず使えるってのに……」

素直に謝る大魚だが、ムニはそれを軽く流す。

「それにしても、すごい力だね! なに、超能力ってやつ?」
「超能力? なんだよそれ……。ああ、ひょっとしてお前、ユマの世界の人間か?」
「ゆま? 何それ」
「後で詳しく説明するさ。それより、今は腕の治療が先だ。あんなちょっとやっただけじゃ、少し痛みが引いた程度だろう」
「治療って……。またキスするわけ?」
「そういうことになるな」
「うーん……。それは遠慮願いたいというか……」

無意識に、大魚は後ずさりをする。

「腕、治らなくていいのか?」
「う……。それを言われちゃうと……。でもやっぱり男とキスはいやー!」
「俺だっていやだって言ってるだろ! おとなしく受け入れろ!」
「いやだー!」

結局この後、押し問答をしばらく続ける二人であった。


【一日目・深夜 C-2 森】

【水島大魚@かおす寒鰤屋】
【状態】右腕粉砕骨折(ムニの能力で微妙に回復)
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:生き延びる。
※本編終了後からの参戦です。

【ムニ・フラクタル@世界征服物語】
【状態】腹にダメージ
【装備】虎徹@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】 
基本:殺し合いには乗らない。
1:大魚を治療。
2:さっきの男のような強そうな相手からは逃げる。
※単行本一巻終了後からの参戦です。


※支給品紹介
【虎徹@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
水鏡美冬の愛刀。普段は彼女の背中に隠されている。
持ち主が気合いを込めることで、刀身が発光する。

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自分ロワ第12話  永遠にして一瞬の安心

2009-01-05 23:54:10 | 自分ロワ
※注意:残虐描写が含まれます

私は、望月サナギ。
いろんなことを想像して遊ぶのが好きってだけで、他にはこれといって特徴のない中学生だ。
そう、私はただの中学生なんだ。なのに、なんでこんなことになったんだろう?
いつもの様に、布団の中であれこれ考えながら寝たはずだった。なのに目が覚めた時には、あの部屋にいた。
そして金髪のかっこいい男の子が、「今から殺し合いをやってもらいます」と言い出して……。
変な格好をしたおじいさんの首が、吹き飛んだ。
あまりにも非現実的な光景に、私は頭の中が真っ白になってしまった。
そして、気が付いたらこの煉瓦造りの建物の中にいた。
はっきりとは見えなかったけど、あそこにはフユちゃんとマナミさんもいたみたいだった。
二人とも、私の大切な友達だ。死なせたくない。
けど、どうすればいいんだろう。私は武術の心得とかないし、頭もよくない。本当に普通の中学生なんだ。
私なんかが頑張ったって、出来ることなんてほとんどない。本当に、どうすればいいの?
私が悩んでいると、足音が聞こえてきた。音の方向は、上から。誰かが、階段を降りて来るみたいだ。
どうしよう。殺されちゃう。逃げなきゃ。でも、怖くて足がすくんじゃって……。

「誰かいるのかい?」

声が聞こえるのと同時に、脚が見えてきた。すらっと長い脚だ。
脚に続いて、全身が見えるようになる。降りてきたのは、男の人だった。
顔つきを見ると、明らかに日本人じゃない。どこの国の人かまではわからないけど、とりあえず美形だった。
歳は、20歳くらいだろうか。でも見た目の若さの割には、風格というかそういうものがある気がする。

「これはずいぶんと可愛いお嬢さんだ」

私を見ると、男の人はそういった。

「かわいそうに、そんなに震えて。大丈夫、怖がることはない」

笑みを浮かべながら、男の人は私に近づいてくる。

「さあ、こっちに来なさい。私と一緒にいてくれるのなら、私は君に安心を与えてあげよう」

何だろう。この人の言葉に、すごく惹かれてしまう。まるで操られてるみたいに、フラフラと近づいていってしまう。

「そう、いい子だ……」

男の人の手が、私のほっぺたを撫でる。どうしよう、恥ずかしいのに何か抵抗できないよ……。

「さあ、一緒に行こうじゃないか。歓迎しよう、我が僕として」

ズブリ、と音がした。あれ、私の首……何か刺さってる……?
駄目だ、頭がボーっとする……。私から何かが抜けていくみたい……。
どうしたんだろう……私……。


◇ ◇ ◇


「おかしい……。なぜゾンビにならない」

ディオ・ブランドーは、不機嫌そうに呟く。その足下には、致死量の血を抜かれ息絶えたサナギが横たわっていた。
人間の体内から血を抜き取り、代わりに吸血鬼のエキスを注入する。それによって、死体は吸血鬼に従うゾンビとなるはず。
だがサナギの死体は、いっこうにゾンビになる気配を見せない。

(あのガキが、俺の体を弄ったか? 奴が本当に何でも出来るというのなら、そのくらいは造作もないだろうしな……。くそっ! 忌々しい!)

端整な顔立ちを悪鬼のように歪め、ディオは煉瓦の壁を叩く。

(まあいい……。たとえ僕がいなくとも、このディオに勝てる奴などそうはいまい。
 頂点に君臨するのは、このディオ以外にあり得ない!)

一転し、笑みを浮かべるディオ。その顔には、自らが得た吸血鬼の力への自信が満ちている。

(俺を倒せる可能性がある奴など、ジョジョぐらいだが……。あいつとてわずかに可能性がある程度。
 この吸血鬼の肉体と気化冷凍法があれば、ジョジョなどモンキーも同然!
 そして俺は優勝して、じっくりと邪魔者のいない世界を制覇してくれる! あわよくば、魔神の力とやらも手に入れてやるわ!)

おのれのバラ色の未来を想像し、ディオは再び笑う。

(しかし気になるのは、名簿にあったジョセフ・ジョースターという名前だ……。いったい、こいつは何者だ?)

少なくない時間をジョースター家の養子として過ごしたディオだが、ジョースター家にジョセフという名の親戚がいるという話は聞いたことがない。
ならば、偶然姓が一致しているだけの無関係な人物か? だが「ジョースター」という姓は、そうありふれたものではない。
それにこのジョセフという名前は、自分とジョジョの間に記されているのだ。
名簿全体を見た限り、名前が一定の法則に基づいて並んでいる様子はない。
となると自分とジョジョの名前が近くに記されていることから、関係者同士が近くに書かれているものと推察される。
ならば自分が知らぬ名前である以上、ジョセフ・ジョースターは間違いなくジョジョの関係者であるはずなのだ。

(……まあいい。気にはなるが、知らないものをいくら考えたところでわかるはずがない。
 ひょっとしたら、本人に会えるかもしれんしな)

考えるのをやめ、ディオは歩き出した。目指すのは更に下。そして、自分がいるこの塔の外。
今は夜、吸血鬼の時間だ。ここでじっとしているのはもったいない。一人でも殺しておけば、それだけ優勝が近づく。

(今が0時10分か……。ここからそう遠くには行かないことにして……。5時頃に戻ってくれば問題ないだろう。
 しかし、こんなに小型の時計があるとはな……。やはりこれも、魔神の力とやらの産物か?)

腕時計を物珍しそうに見つめながら、ディオは塔の外へと繰り出す。
帝王、始動――。

【望月サナギ@サナギさん 死亡】
【残り48人】


【一日目・深夜 G-5 断崖の塔前】

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式×2、不明支給品2~6
【思考】
基本:最後の一人となる。魔神の力が本物なら、それも手に入れる。
1:他の参加者を減らしていく。
2:5時には塔に戻る。
3:ジョセフ・ジョースターという名前が気になる。
※ウインドナイツ・ロッドの館で、ジョナサンたちと対峙する直前からの参戦です。
※ゾンビの製造は制限により封じられています。

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自分ロワ第11話 謎のメイドさん使い

2008-12-22 00:04:53 | 自分ロワ
E-6に存在する豪邸。その門の前に、一人の青年が立っていた。
学生服を着た利発そうな顔立ちのこの青年は、名を兎屋高雪という。
CLAMP学園高等部1年B組に所属する成績優秀な生徒であり、怪奇現象研究会という同好会のメンバーでもある。

「まったく、何だってこんな事に……」

苦虫を噛み潰したような表情で呟きながら、高雪はハンカチで額の汗を拭う。
すでに何度も同じ行為をしているにもかかわらず、汗はいっこうに引いてくれない。
会の活動中、命の危機に瀕したことは何度もある(まあ、学生のクラブ活動でそうなるのは正直どうかと思うが)。
しかし、それを切り抜けてこられたのは会員全員の力を合わせてきたからだ。
今の自分たちはバラバラにされ、陰に日向に会を支えてくれている「教授」のサポートも受けられない。
他者に助けてもらえないこの状況では、体力に難のある高雪が不安になるのも無理はない。
いや、あながち誰も助けてくれないというわけでもない。たった一人、今すぐにでも彼に協力してくれるかも知れない人物が一人いる。

「こいずみ、いるか?」

ふいに、そんな言葉を呟く高雪。すると突然、彼の背後から古風なメイド服を着た少女が姿を現した。

「はいー。お呼びですか、高雪様?」

宙を滑り、高雪の正面に周りながらメイド少女は言う。
彼女の名は「こいずみさん」。地方の名家である高雪の実家に何代も前から仕えている、「メイドの幽霊」である。
本来幽霊は霊感を持つ人間にしか見えないが、高雪と魂の一部を共有しているこいずみさんは誰の目にも見ることが出来る。
そして高雪の命令の下、実質的な6人目のメンバーとして研究会のために日夜働いているのだ。

「こいずみ、事情はわかっているか?」
「はい、大変なことになってしまいましたね……」
「言うまでもないだろうが、僕はこんなばかげたゲームに付き合うつもりはない。一刻も早く他のみんなを見つけて、ここを脱出する方法を見つけようと思う。
 そこでだ、こいずみ。まずは君にこの周辺を見回ってきてほしい。
 幽霊の君なら、殺し合いに乗った参加者に見つかっても危険はないだろう」
「あの……それがですね」
「どうかしたのか?」

プロ意識の強いこいずみさんは、高雪の命令を断ることなどめったにない。
その彼女が拒絶の意思を見せたことに、高雪は首をかしげる。

「どういうことなのかわかりませんが、私と高雪様の結びつきが不自然に強くなっていて……。
 今の私では、高雪様からそれほど離れられないんです」
「何だって?」
「今、実際にご覧に入れますね?」

驚く高雪から、こいずみさんはスーッと遠ざかっていく。そして、ある地点でぴたりと止まった。

「このあたりが限界のようですー」
「だいたい、500mぐらいか……。わかった、こいずみ。戻ってこい」

高雪は、すぐさまこいずみさんを呼び戻す。

「まあある程度は離れられるといえ、これは不便だな……。あの少年が、何かしたのか?」
「あの、それからですね……」
「まだ何かあるのか?」
「結びつきが強くなったせいで、万が一高雪様が亡くなられた場合……」
「君も現世にとどまっていられなくなる……。そういうことだな?」

こいずみさんの表情から、高雪は彼女が言わんとすることを理解した。

「す、すいません、高雪様! メイドが主人に向かってこんな不吉なことを言うなんて……」
「気にするな、こいずみ。それを聞いて、ますます生き延びたいという気分になったよ」

平謝りのこいずみさんに、高雪は優しく笑いかける。だがその額には未だびっしりと汗が浮かんでおり、無理をしていることが一目でわかる。

「さあ、まずは会長やみんなを見つけないとな。行くぞ、こいずみ」
「かしこまりました、高雪様」
「現在地がE-6だとすると……。東に行けば大きな道に出るみたいだな。そこから北上してみるか……」

地図を片手に、幽霊を従えた少年は夜の闇に溶けていった。


【一日目 深夜 E-6 豪邸前】

【兎屋高雪@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
【状態】精神的疲労(小)
【装備】こいずみさん
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:ゲームには乗らない
1:研究会メンバー(ユウキ、美冬、光司、りおん)と合流。
2:この島からの脱出方法を見つける。
※原作終了後からの参戦です

※こいずみさんについて
高雪に仕えるメイドの幽霊。高雪の意思によって現世に出現したり引っ込んだりする。
現世にいる間は、全ての人間が存在を視認できる。
飛行、物質の透過が可能。家事全般は一流だが、昔の人間のため現代科学に関する知識はほとんどない。
今回は主催者が課した制限により、高雪から500メートル以上離れることは不可能。高雪の死亡により成仏する。

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自分ロワ第10話 ゆずれない願い

2008-12-10 01:30:26 | 自分ロワ
註:残虐描写が含まれます。

島の南東の端、G-7。ネプチューンマンは、そこで自分と共に飛ばされてきた牛の丸焼きをむさぼりながら考えを巡らせていた。

(あの小僧の願いを叶えられるという言葉……。果たして真実か?)

確かにあの少年はネプチューンマンの好物を当て、それを彼の目の前に出して見せた。
だが、好物を調べるだけなら全能の力などなくても可能だ。即座に出現させたことに関しても、物質を転送できる能力があれば事足りる。

(確かにあの小僧は力を示して見せた。だが、あれだけでは願いを叶えられると信じるには足らぬな……。
 まあいい。本当に願いを叶えてくれるのなら儲けもの。そうでなくとも、元の場所に返してくれるのなら文句はないわ)

こんな殺し合い、自分にとってはお遊びに過ぎないとネプチューンマンは思っていた。
名簿に乗っていた自分の知る超人は、全部で三人。キン肉万太郎とチェック・メイト、それにすでに殺害されたキン肉スグルだ。
一度自らが撃破したチェック・メイトなど、ものの数に入らない。ゆえに注意する相手は、万太郎のみ。
ひょっとしたら自分の知らぬ未知の超人が紛れ込んでいるかも知れないが、大多数の参加者はただの人間だろう。
超人にとって人間を倒すなど、それこそ赤子の手をひねるようなもの。勝負になるはずがない。
パートナーのセイウチンがいないとはいえ、自分が参加していた究極の超人タッグに比べればはるかに楽な戦いだ。

「では、さっさと片づけるとするかな……。この程度のことで願いを叶えてもらえるのだとしたら、こんなにお得な話はないぜー!」

残った牛肉を無造作にデイパックに放り込むと、ネプチューンマンは意気揚々と歩き出した。


◇ ◇ ◇


G-7には、古代ギリシャを連想させるような荘厳な神殿が建っていた。
そしてその神殿の前には、一人の少女がちょこんと腰掛けていた。

「ふみゅ、困ったなあ……」

その少女……水鏡美冬は、童顔に物憂げな表情を浮かべて呟く。
殺し合い。まさかそんなものに、自分が参加させられるとは思っても見なかった。
しかも自分のみならず、大切な怪奇現象研究会の仲間たちまでもがこんな陰惨なゲームに参加させられているのだ。
殺すのも殺されるのも、美冬はいやだ。殺し合いのルールに、素直に従うわけにはいかない。

(やっぱり、あの男の子を見つけ出してこんな事やめてもらうように言うべきだよね。
 けど、素直に言うこと聞いてくれるかなあ? 聞いてくれない時は……)

美冬は、他人を傷つけるのが嫌いだ。だが、傷つけられるのも嫌いだ。
特に大切な友達を傷つけられるのは、自分がやられるよりはるかに苦痛だ。
美冬には力がある。友を守るためならば、美冬はその力を他者に向けることも辞さない。
この殺し合いが止まらないと言うのなら、力ずくでも止めてみせる。それが、美冬の出した結論だ。

(うーん、それにしても……。あの子のおうちはどこにあるんだろう……)

至って真剣な表情で、美冬は地図とにらめっこを始める。そして、何の進展もないまま数分経過。
そこで彼女は、自分に近づいてくる人影に気づく。

(あれは……)

美冬は、その男に見覚えがあった。とは言っても、旧知の仲というわけではない。
先程あの少年が殺し合いの説明をしていた時見かけた、仮面の男だ。
何でも願いを叶えるという話に、食ってかかっていたのを覚えている。

(あの人……出来る!)

一流の剣客であるからこそ、美冬はその男が実力者であることを敏感に感じ取る。
そして、彼が自分に敵意を向けていることも。

「ごきげんよう、お嬢さん。そしてさようなら」

挨拶もそこそこに、仮面の男……ネプチューンマンはいきなり美冬に殴りかかる。
しかし美冬は即座に左へ跳び、その拳を回避する。

「ほう、人間にしてはいい反応だな!」

笑みを浮かべながら、ネプチューンマンは続けて蹴りを繰り出す。
美冬はそれも回避し、バックステップで距離を取った。

「おじさん、殺し合いをするつもり? 他の人たちを殺すの?」
「ああ、私以外の連中は死んでもらう!」

美冬の問いに、ネプチューンマンはためらうことなく答える。

「じゃあ、私がおじさんを止めるよ。人殺しなんて、絶対やっちゃいけないことだから」

真剣な表情で言い放ち、美冬は背中に隠し持った愛刀「虎徹」を抜こうとする。
だが、その手はむなしく空を切った。

「あ、あれ? ない! ないよ? なんで?」

虎徹が没収されていることにようやく気づき、慌てふためく美冬。
ネプチューンマンはそんな彼女の姿に若干毒気を抜かれつつも、容赦なく攻撃を続ける。

「うわ! ちょっと! 困ったなあ、もう!」

ひらりひらりと攻撃をかわしながらも、美冬の心には焦りが募る。
ネプチューンマンの攻撃は、どれもまともに受ければ戦闘不能に陥るレベル。一撃でも当たってしまえば敗北は確実だ。
慣れぬ体術で立ち向かおうとしても、おそらくどうしても生じる隙を突かれてやられてしまうだろう。
勝利のためには、やはり刀が不可欠だ。

(そうだ、あのカバン!)

戦いの中、美冬は地面に起きっぱなしになっていたデイパックの存在に気づく。あの中になら、虎徹が入っているかも知れない。
ネプチューンマンの猛攻をすり抜けつつ、美冬は自分のデイパック目がけて走る。
そして何とか目当てのものにたどり着き、そこに手を突っ込んだ。

(虎徹、虎徹……。あ、これかな?)

それらしき感触を覚え、美冬は急いで手を引き抜く。彼女の手の中にあったのは、確かに一振りの刀だった。
だが、それは彼女の愛刀ではなかった。

(あ、あれ? 虎徹じゃない? あの子、入れ間違えたのかなあ? まったくもう……)

美冬は、支給品がランダムに配られると言うことを理解していなかった。しかしまあ、ここでそんなことはさして重要ではない。

(でも緊急事態だから、使わせてもらおう。持ち主の人には、あとでちゃんと謝れば許してもらえるよね)

美冬が、鞘から刀を抜く。光り輝く刀身が、外気に晒された。

「ぬう!?」

光に目を射抜かれ、ネプチューンマンは一瞬怯む。一方美冬は、光をものともせず刀を見つめていた。

(この刀……。なんて言うか、きれいな力が流れてる……。文左衛門くんの太刀と一緒だ……)

幼くして<悪玉精霊>を退治するために全国を飛び回っている少年、榊文左衛門。その愛刀を、美冬は一度だけ借り受けたことがある。
今手にしている刀は、その太刀と同じく「魔」を払う力に満ちていた。
その刀の名は、流星剣。天から落ちてきた流れ星のかけらより作られた、破邪の刀である。

(これなら……いけるかも!)

よりいっそう表情を引き締め、美冬は刀の切っ先をネプチューンマンに向ける。
その堂に入った構えに、ネプチューンマンは思わず感嘆の声を漏らした。

「その構え、素人が見よう見まねで取れるものではない。貴様、サムライか?」
「似たようなものだね」

ネプチューンマンの問いに、美冬は張りつめた声で返す。

「そうか。相手が超人レスラーなら凶器の使用をなじるところだが、サムライなら話は別だ。
 一度手合わせしてみたいと思っていたものよ……。来い、小娘!」
「言われなくても……行くよ!」

大地を蹴り、美冬が突っ込む。ネプチューンマンが間合いに入った瞬間、彼女の握った刀が大きく弧を描いた。
ネプチューンマンはのけぞり、その攻撃を回避。しかし、刀の切っ先が仮面をかすめる。

「やるな! 先程までとは動きが別人のようだ!」

美冬の動きを賞賛しつつ、ネプチューンマンは彼女の体をつかみにかかる。
だが美冬は素早くその手を払い、いったん距離を取る。
ネプチューンマンは空いた間合いを再び詰めつつ、右ストレート。
紙一重でそれを回避した美冬は、相手の足下を狙って刀を振るう。
ネプチューンマンは、それを跳躍して回避。だが美冬は刀の軌道を強引に変え、下からネプチューンマンの脇腹を捉える。

「ぐぬっ!」

脇腹を襲う鈍い痛みに、思わずネプチューンマンは苦悶の声を漏らす。

(ん……? これは……)

直後、ネプチューンマンは違和感に気づく。そう、彼が感じたのは「鈍い痛み」。
明らかに斬撃ではなく、打撃の痛みだ。

「貴様……今の一撃、峰打ちだな?」

ネプチューンマンの問いに、美冬は答えない。しかしネプチューンマンは、それを肯定と解釈した。

「どういうつもりだ! この私に情けでもかけようというのか? ここは殺し合いの場だぞ!」

怒声をあげるネプチューンマン。それに対し、美冬は静かに口を開く。

「人を殺すのは……」
「む?」
「人を殺すのは……いけないことだよ」

微笑を浮かべながら、美冬は優しい声で呟く。だが、その言葉はネプチューンの理解を得ることは出来ない。

「失望したぞ、小娘。貴様とて戦う術を学んだ者だろう! 戦う相手を殺す覚悟もないか!」

苛立つネプチューンマン。彼は、左腕を高々と掲げる。これまで温存してきた、おのれの必殺技を放つために。

「所詮は人間、期待するだけ無駄だったか……。この一撃で終わらせてくれる!」

左腕を上げたまま、ネプチューンマンは美冬に向かって突進する。
そのスピードはいっさいの手加減のない、全速力。

(かわしきれない!)

予想以上のスピードに、美冬から回避という選択肢が奪われる。とっさに彼女は、刀を自分の前にかざして盾とした。

「私にこの刀を抜かせたら最後だ! 喧嘩(クォーラル)ボンバー!」

光り輝くネプチューンマンの左腕が、美冬に叩きつけられる。何とか刀で受け止める美冬だったが、衝撃を受け止めきれない。
彼女の体はボロ雑巾のように吹き飛び、地面に叩きつけられた。

「ウウ……」

全身を襲う激痛に、美冬の口からうめき声が漏れる。特に、腕のダメージは大きい。
骨折や脱臼をしていないのが不思議なくらいだ。
この状態では、もはやまともに刀を振るえそうにない。

(それでも……私は戦わなくちゃいけない)

この男は、人を殺すことにためらいがない。放っておけば、殺し合いを望まない人々に危害を加えるだろう。
美冬の仲間たちにも、それ以外の人間にも。
美冬は、それを許すことが出来ない。
彼女の強さは、人を殺すための強さではない。人を守るための強さだ。
それだけは、ゆずれない。

「まだ生きているか……。刀を盾にしたとはいえ、人間にしては丈夫だな」

立ち上がる美冬を見つめながら、ネプチューンマンは呟く。その視線はすでに「敵」ではなく、「弱者」を見るものになっていた。

「これでわかっただろう。貴様では私には勝てん。尻尾を巻いて逃げるか、おとなしく私に殺されるか選べ」
「どっちもいやだよ。おじさんみたいな危ない人は、誰かが止めてあげないと!」

震える腕で、美冬は今一度刀を構える。その目に、絶望や諦めといった負の感情は微塵も見られない。

「そのダメージで、まだやれるつもりか?」
「やれるよ」

問いに答える美冬の声にも、やはり一点の曇りすらない。

(たとえ体がボロボロでも……。この技なら!)

大きく息を吸い、吐く。同時に、円を描くように構えを大上段に持っていく。

「む?」

ネプチューンマンの、超人レスラーとしての本能が告げる。美冬は今、必殺の一撃を放とうとしていると。

「面白い……。人間がどこまで出来るか見極めてやろう。来い!」

あえて妨害するようなことはせず、ネプチューンマンは静観の姿勢を取る。
その間に美冬は、腹式呼吸で体内に「気」を練っていく。
そして十分な量の気を体内に蓄えると、ネプチューンマンに向けて走り出した。
そしてすれ違いざま、刀が振られる。その刃は、ネプチューンマンの目の前の空間を切り裂いた。

(外した?)

一瞬、ネプチューンマンの頭をそんな考えがよぎる。だがすぐに、彼は自分の考えが間違っていたことに気づかされた。

「ガハッ!!」

声にならぬ声と共に、ネプチューンマンは地面に膝をついた。

(バカな……。私の体の中を、見えない刃がすり抜けていった……?)

ネプチューンマンの抱いた感想は、間違ってはいない。
体内で高めた気を刀に乗せ、生み出した見えない刃で敵を斬る。
敵はいっさいの外傷を負わず、ただ「斬られた」というダメージだけを受ける。
それが美冬の切り札。その名は、「不殺(ころさず)の太刀」。

「ふう……。もう駄目だ……。体力使い切っちゃったよ……」

全身全霊を出し切った美冬もまた、地面に膝をつく。

「そうだ、あのおじさんどうしよう……。とりあえず縛ったりした方がいいのかなあ……。
 でも、へとへとで動けないし……」
「そんなことを気にする必要はない」
「え……?」

美冬は、自分の耳を疑った。確かに倒したはずのネプチューンマン、それが自分に語りかけている。
それどころか、立ち上がってこちらに向かってきている。

「そんな……」
「今の技、申し分ないフィニッシュホールドだった。だが、やはりそのダメージでは活かしきれなかったようだな。
 私を殺すつもりで来ていれば、結果は変わったかも知れぬものを……。所詮、貴様は甘いのだ」
「それでも……人を殺すのはいけないことだよ」

微笑すら浮かべて、美冬は言う。

「そうか」

短く呟いて、ネプチューンマンは左腕を振るった。


◇ ◇ ◇


(私は勝った……。だというのに何だ、この苛立ちは!)

頭部を砕かれ、無惨な屍と化した美冬を見下ろしながら、ネプチューンマンは心の内で呟く。
不快感の原因は、うっすらとはわかっている。殺しをかたくなに拒否する美冬の態度が、若い頃の自分に重なって見えるからだ。
まだ、喧嘩男と名乗っていた頃の自分と。

「くだらん感傷だ……。今の私は喧嘩男ではない。完璧超人、ネプチューンマンなのだ」

目的は一つ、この殺し合いに生き残ること。そして、優勝の褒美で完璧超人の復興をなすこと。
おのれを奮い立たせるために、ネプチューンマンは右手を挙げて叫ぶ。

「ナンバーワーン!!」

【水鏡美冬@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル 死亡】
【残り49人】


【一日目・深夜 G-7 神殿前】

【ネプチューンマン@キン肉マンⅡ世】
【状態】ダメージ(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、牛の丸焼き(残り60%)、不明支給品0~2
【思考】
基本:優勝し、願いを叶える。
※究極の超人タッグ編、一回戦終了後からの参戦です。

※流星剣@里見☆八犬伝、美冬のデイパック(支給品一式、不明支給品0~2)は、美冬の死体のそばに放置されています。

※支給品紹介

【流星剣@里見☆八犬伝(小説版)】
鍛冶屋の文吾兵衛が、流れ星のかけらから作った刀。
破邪の力を持つ聖剣であると同時に、持ち主に孤独を与える呪いの刀でもある。

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自分ロワ第9話 決意の王女とのんきなオタク

2008-12-01 00:34:03 | 自分ロワ
人気のない町並みを、一人の少女が歩いている。
彼女の名は泉こなた。小学生といってもまったく違和感のない容貌の持ち主だが、実際には高校生である。

「それにしてもまいったねえ。まさか拉致されて殺し合いに参加させられるなんて非現実的なこと、実際に起きるとは考えてもみなかったよ」

独り言の内容の割には、彼女の顔はそれほど深刻そうには見えない。
彼女は身長が低いうえに最初の広間で後ろのほうに配置されていたため、キン肉スグルが殺される瞬間を直接見てはいなかった。
ただ、血しぶきが上がったのを確認しただけだ。
そのせいもあってか殺し合いという現状を理解はしつつも、どうしても実感が湧いてこないのだ。

(人殺しなんてしたくないし、どうしようかなあ……。とりあえず、みゆきさんかななこ先生を捜そうか。
 あの二人なら、人殺しなんかせずに帰れる方法を思いつくかも知れないし)

この殺し合いに呼ばれている、彼女の知人は二人。二人しかいないというべきか、二人もいるというべきか。
とにかく、こなたは彼女たちとの合流を当面の目標に定めた。そしてやってきたのは、自分のスタート地点から一番近い施設。

「都庁って書いてあったからもしかしてと思ったけど……。本当に東京都庁だねえ……」

目の前にある建物……「都庁」を見上げながら、こなたは呟く。
二つのビルが並び立つ、特徴的な姿。埼玉県民である彼女でも知っている、東京都庁そのものだ。
しかしその建物は、彼女が知っている都庁とは大きく異なる点があった。

「けど、都庁ってこんなにボロボロだったっけ……。まあいいや、とりあえず入ってみよう」

自らが覚えた違和感を気にすることなく、こなたはその中に足を踏み入れた。


◇ ◇ ◇


荒れ果てた都庁の内部。そこに、一人の少女が座っていた。
まるで人形のように整った美貌の持ち主である彼女の名は、タリア。
大国シトラネウスの王女であり、同時に優れた魔術師でもある。

(いったい、どういうことなのでしょう……)

その美しい顔に憂いの表情を浮かべながら、タリアは溜め息を漏らす。
理解不能。彼女の思考を一言で表せば、こういうことになる。
あの人畜無害であったティレクが、自分たちに殺し合いをさせようとしている。しかも、自分の世界に帰ったはずの由真まで再び呼び寄せて。
何がどうなれば、こうなるというのだろうか。占いでヒントをつかもうにも、今の自分には水晶玉も沈黙の首輪もない。

(まあ、これが私のところに来たのは不幸中の幸いと言えるのでしょうけど……)

タリアは、自分の指にはまった指輪を見つめる。それは「真氷の指輪」。
タリアが本来所持する沈黙の首輪と同じく、魔神の復活と封印を司る六つの秘宝のうちの一つだ。
タリアは虚弱体質を、秘宝の魔力を体力に変換することで補っている。
それ故秘宝を手放すと一気に体力の消耗が激しくなってしまうのだが、とりあえず今のところはその心配はなさそうだ。

(さて……。この場で私はどうするべきなのでしょう……。原因がわからないとはいえ、殺し合いが始まってしまったことは事実……)

顔の前で手を組み、タリアは思考の海に沈んでいく。

(ここはやはり、旦那様を最後の一人まで生き残らせるというのが最善の策でしょうね……。
 旦那様なら、きっとティレク様に願って死んだ者全てを生き返らせてくれるはず。
 万が一旦那様が志半ばで命を落とされた場合は、私かムニ様が生き残れば……。
 リンダさんの場合は……まあ、少なくとも旦那様は蘇生してくださるでしょう。
 旦那様さえいれば、後はあの方がどうにかしてくださるはず……)

タリアの出した結論は、旦那様……すなわち由真を生き残らせるということ。
それが駄目でもデルトリアの力を知る仲間たちの誰かが生き残れば、全てを元通りにすることが出来る。
問題は、デルトリアの力を私利私欲に使おうとする人間が生き残ってしまった場合だ。
そうなれば、復活など夢のまた夢となってしまう。

(ならば、私は私利私欲に走りそうな人間を処分する役割に回りましょう……。
 旦那様、この手を汚すタリアをお許しくださいませ。全ては大義のためでございます)

誰もいないというのに、泣き真似をしてみせるタリア。少々自分の世界に入ってしまっているようである。

(しかし、私の力ではそう簡単に他の方を殺せないでしょうね……。真氷の指輪で凍らせるにしても、私は戦いに関しては素人ですし……。
 旦那様のように戦いに慣れている方と正面からぶつかったのでは、勝ち目はないでしょう。
 ……そうですわ。誰か仲間を作って、その方に戦っていただけばいいのです。
 その方が亡くなられたら、また他の仲間を見つければいい。どうせ最後には生き返らせるのですから、恨まれる筋合いもありませんし。
 うん、名案ですわ!)

無意識に、黒い笑みを浮かべるタリア。その直後、彼女の耳にかわいらしい声が届いた。

「誰かいませんかー?」


◇ ◇ ◇


数分後、タリアと声の主……こなたは、並んで言葉を交わしていた。

「へー、タリアさんってお姫様なんだ。すごいなー。私、本物の王族なんて初めて見たよ」
「うふふ、そんなたいしたものではありませんわ」

目を輝かせるこなたに対し、タリアは口元を押さえて笑う。
それまでの会話はほんのわずかなものだったが、それだけでタリアはこなたが無害な存在であることを察していた。

(戦力にはなりそうにありませんが……今すぐ殺す必要もなさそうですわね。
 ここは仲間に引き込んでおけば、何かの役には立つでしょう)

打算を巡らし、タリアは早速こなたの勧誘に入る。

「こなたさん、私は殺し合いをしたくはありません。よかったら、私と一緒に来ていただけませんか?
 きっともっと仲間を集めれば、殺し合いを中断させる方法も見つかると思うんです」
「ん、いいよー。一人より二人の方が心強いしね」

あっさりと勧誘を快諾するこなた。二人は、笑顔で握手を交わす。だがそれぞれの笑みが違う意味を持つことに、こなたは気づかない。

「ところでこなたさん、一つお聞きしたいことが……」
「ん? 何ー?」
「その格好……何か意味でも?」
「んにゃ、せっかくカバンに入ってたから、着てみないともったいないような気がして」

猫の着ぐるみに身を包んだ少女は、薄い胸を張って堂々とそう言った。

(大丈夫でしょうか、この人……)

【1日目・深夜 B-5 都庁一階】

【泉こなた@らき☆すた】
【状態】健康、緊張感の欠如
【装備】伊御特製の着ぐるみ@あっちこっち
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:みゆきかななこと合流し、無事に帰る方法を考えてもらう。
1:タリアと共に行動する。


【タリア@世界征服物語】
【状態】健康
【装備】真氷の指輪@世界征服物語
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:由真を優勝させる。それが達成できなかった場合は、自分かムニかリンダを優勝させる。
1:他人を利用し、私利私欲のために願いを叶えそうな参加者を殺す。
2:1のために仲間を集める。
3:まずはこなたと共に行動。
※単行本1巻終了後からの参戦です。


※支給品紹介

【真氷の指輪@世界征服物語】
由真が来た当初から、魔神城に安置されていた秘宝。身につけると氷を操ることが出来る。

【伊御特製の着ぐるみ@あっちこっち】
文化祭の準備中、伊御がつみきに着せるために作った猫の着ぐるみ。顔だけが出る仕組み。
友人一同曰く、「(つみきに)似合いすぎて違和感がない」。

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