二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

最近はこんな本で遊んでいる ~大岡信「折々のうた」

2016年10月16日 | 俳句・短歌・詩集
大岡信さんが、朝日新聞の第一面に「折々のうた」というコラムを連載していたのは知ってはいた。
しかし、引用してある「うた」は、1行か2行。それに対し、180字ばかりのコメントが付せられているだけなので、毎日眼にはしていたが、読むにはいたらなかった。
さっき調べてみたら「折々のうた」は、1979年1月にスタート、1989年まで、足掛け10年連載されたという。
これほど長期に渡ってつづくことになろうとは、新聞社側はむろん、大岡さん自身も、予期せぬことであったらしい。

ふと立ち寄った高崎の古書店に置いてあるのを見かけ、例によって立ち読み。
数ページでひきずりこまれて買って帰った。
“「予が風雅は、夏炉冬扇のごとし」 ~芭蕉へのアプローチ(1)”という日記を書いたのが、9月25日だから、おそらく9月半ばころから、俳諧・俳句関連の本を読みはじめたのだ。

柴田宵曲さんの「蕉門の人々」、堀切実さんの「芭蕉の門人」などを読めたことは、わたし的には大きな収穫であった。
芭蕉が確立した発句の伝統が、その後どういった推移を辿ったのか、あまり知らなかったからだ。



そういった中で徐々に興味が湧いてきたのは、「去来抄」。この刊本も、高崎のみやま書店で、岩波の「連歌論集 俳論集」(日本古典文学大系)を見つけることができたのはさいわいだった(^ー^)
わたしの古典力、日本語力はたいしたことはないが、近世まで下ってくると、注釈をたよりに、内容をなんとか理解することができるようになる(*^ー゚)


ただ俳諧や近代以降の俳句を読みすすめていくと、和歌・短歌も気になってくる。
これはいたって自然ななりゆきだろうとおもわれる。
そこに「折々のうた」との出会いがあった。
新聞連載時は180字の制約があった。しかし、岩波新書版では、それに30字足して、210字としている。これにともなって、表現を一新したところもあったようである。

コメントというが、ようするに鑑賞ということである。大岡さんの批評家としての洞察力が読みどころ(^^♪
これが非常におもしろい。
なにしろ、古典詩歌としての万葉集があったかと思うと、伊東静雄や萩原朔太郎に飛び、芭蕉や其角に飛ぶ。あるいは村上鬼城や、閑吟集や白居易、紀貫之、慈円がいる。
「うた」という大きなくくりの中で、大岡さんは、驚くほど自在に航行している。わたしはこういう本は、これまで読んだ経験がない。

「うた」のゆくえをさぐる旅は、そのまま日本語の美を追究する旅になる。そこから、なんというか、じつにスリリングな、ことばへの慈愛が滲みでて、読者を巻き込んでいく。
憶良と晶子と楸邨を、同じまな板の上で料理するなんて、ご法度であった。しかし、食材は同じ板の上で、料理人の包丁さばきを待っている。

おそらく、連載途中から、大岡さんご自身が、夢中になったのではないだろうか。だれにもできる仕事ではない。広範な知識、傑出したセンスの持ち主でないと、こうはいかないだろう。読者から好評をもって迎えられたからこそ、長期連載が可能となったのだ(^-^*)/
専門知識なんて必要ない。
和歌・短歌、俳諧・俳句、漢詩、近代詩・・・それらを、1行または2行に切り取って俎上にのせる。
わたしはここでは無邪気な客となって、料理人の腕を堪能すればよい。

いまでは岩波は分冊では扱っていないようだが、古書店を探せば見つけられるだろう。現在「第四 折々のうた」も手許にある。
古めかしい比喩となるけれど、若鮎のように生きいきとして、眼のまえで跳ね飛んでいるようなことばたち。あるいは沈痛な思いを、数行に託して去っていった人のおもかげ。
考えてみると、ずいぶん贅沢極まりない読書といえるのではあるまいか!



ほかにこんな本もスタンバイさせてある。



さらに、NHKテレビテキスト「俳句」2012年4月号というのが、100円コーナー(税込108円)にあった。短歌もそうだが、俳句もとてもとても裾野が広い。だれにでも、それらしい作品がすぐにもつくれるからだろう。少なくてもそう思われている。元手もかからない。



わたしが短歌、俳句になぜ近づかなかったかというと、大学時代に桑原武夫さんの「第二芸術」論を教えてくれる人があったからだ。俳句界はこれをうけて、当時ハチの巣をつついたような騒ぎになった。
しかし、いまとなって読み返すと、浅薄、性急な部分がむしろ気になる。戦後の典型的な近代主義者桑原武夫は、現在ではほぼ忘れられてしまった。
それに較べ、正岡子規は、100年後の日本で、確実に読み継がれていくだろう。それが歴史の下す審判なのである。


はてさて・・・そういうわけで、雨が降ろうが槍が降ろうが、しばらくは困らないMikenekoである(笑)。
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