たばこを一本吸ったら
出かけていこう。
人びとで混雑するあの街へ。
そこで神に出会うかもしれない。
人の顔をし 固有名詞すらもっている神に。
彼自身 自分が神であることを知らない。
老いた山羊のような白いあごひげをたくわえ
腰が曲がっている。
仰ぎみるほど長い杖の先がTの字になっていて
そこに赤い鳥 青い鳥が止まっている。
その杖のひとふりで
マーラーのシンフォニーのような 壮大な音楽が響きわたる。
彼はそのへんの道を
ゆっくりといったり きたりする。
すれ違う通行人は
その老人が神であることを知らない。
一足ひとあし
なにかぶつぶついうことがある。
呪文を唱えているのか
なんのために?
彼が世界の恒久平和を願っているとは思えない。
数百年昔の乱世からやってきて
数百年後の乱世へ向かっている。
ぼくにはそう思える。
「死ね 死ね!
そして復活するのだ」
飛び出た目玉の奥に
刃のようなものが煌めく。
火を消したはずのたばこをその老人の背後に投げると
そこにもうひとり髪の長い妙齢の女が立っている。
その女をつれて
ぼくは今夜
百年前の世界と
百年後の世界を旅することになっていた。
たばこを一本吸ったら
出かけていこう。
腰の曲がった神と
唇が曲がった女が待っている路地のほうへ
人びとで混雑するあの街へ
ぼくの未来へ。
出かけていこう。
人びとで混雑するあの街へ。
そこで神に出会うかもしれない。
人の顔をし 固有名詞すらもっている神に。
彼自身 自分が神であることを知らない。
老いた山羊のような白いあごひげをたくわえ
腰が曲がっている。
仰ぎみるほど長い杖の先がTの字になっていて
そこに赤い鳥 青い鳥が止まっている。
その杖のひとふりで
マーラーのシンフォニーのような 壮大な音楽が響きわたる。
彼はそのへんの道を
ゆっくりといったり きたりする。
すれ違う通行人は
その老人が神であることを知らない。
一足ひとあし
なにかぶつぶついうことがある。
呪文を唱えているのか
なんのために?
彼が世界の恒久平和を願っているとは思えない。
数百年昔の乱世からやってきて
数百年後の乱世へ向かっている。
ぼくにはそう思える。
「死ね 死ね!
そして復活するのだ」
飛び出た目玉の奥に
刃のようなものが煌めく。
火を消したはずのたばこをその老人の背後に投げると
そこにもうひとり髪の長い妙齢の女が立っている。
その女をつれて
ぼくは今夜
百年前の世界と
百年後の世界を旅することになっていた。
たばこを一本吸ったら
出かけていこう。
腰の曲がった神と
唇が曲がった女が待っている路地のほうへ
人びとで混雑するあの街へ
ぼくの未来へ。