俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

イングロリアス・バスターズ INGLOURIOUS BASTERDS

2009年11月29日 17時07分00秒 | 時系列でご覧ください

第二次大戦下のフランスを舞台に、ナチスに家族を殺されたユダヤ人女性に、情け容赦ないナチ狩りで恐れられるユダヤ系アメリカ人部隊“バスターズ”、そして女性スパイたちが加わってが繰り広げる壮絶な復讐の行方を、クエンティン・タランティーノ監督ならではの映画愛あふれる演出で見事に描ききったアクション・エンタテインメント大作。

とにかく想像以上の面白さ。
かつてのマカロニウエスタンを彷彿させる音楽と設定から始まるオープニング、そしてそこから繰り広げられる緊張感ビシバシなユダヤ人を匿う農夫とランダ大佐とのやり取り。
あるいはドイツ軍人に化けた連合軍中尉の正体が、言葉の訛りでばれそうになるシーンでの息詰まるやり取り。
そうした「映画的緊張感」が作品全体に漲っていて、2時間半と言う時間を全く感じさせない仕上がり。
加えてそうしたスリリングなやり取りのあとに繰り広げられるサム・ペキンパー張りの暴力描写もお見事。


そんな中、目に付くのが魅力的なキャスティング。
予告編ではまるで主演のように思えるブラッド・ピットの「バーン・アフター・リーディング」的なおバカキャラ起用はバジェット獲得のため必要だっただろうし、それに充分応えていたけれど、それよりも何よりもこの作品でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞したランダ大佐扮するクリストフ・ヴァルツの存在感ある演技に惚れ惚れ。
戦争映画ながら戦闘シーンがない分、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語と言葉がまるで銃弾のごとく飛び交う中、にこやかにそんな言語を嫌味ったらしく流暢に使い切るその姿は底知れぬ不気味さをも感じさせ本年度のベストヒール賞もの。


そしてまさにスクリーンの華だったメラニー・ロランの完璧な美貌や、二重スパイの女優ダイアン・クルーガーの色気もタランティーのらしい舐めるようなカメラワークはない分個人的には寂しかったけれど(アハッ)ほぼ完璧。


さらに終盤の映画館でのシーンは、元映写技師(なんてことをしていたこともあるのですわ)としては、フィルムセメントを使ってフィルムを繋ぐところや、フィルムを映写機にかける様子、さらには映写機を切り替えるときにスクリーンの右上に小さく映し出されるタイミングマークのアップ、そして普段見ることが少ないスクリーンの裏側といったフィルムおよび映画館に対するディテール描写に厚く感動し、タランティーの映画への愛を改めて感じたのでありました。

とにかく最近の「キル・ビル」2部作や「グラインドハウス」のような狂気じみた迫力が希薄ながら、その分これまでタランティーノを敬遠していた人でも充分に楽しめるであろう超一級のエンタテイメント作として大いにオススメであります。
機会があれば是非!



今日の1曲 “ CAT PEOPLE (PUTTING OUT FIRE) ” :  DAVID BOWIE

プレミアの夜、復讐に燃えるメラニー・ロランがドレスアップするシーンで流れるのがデビッド・ボウイのこの曲。
頬に紅を添えるその姿、そして強い目力、やっぱここは梶芽衣子に捧げているように感じてしまったのであります。
ともあれ1981年公開のナスターシャ・キンスキー主演の同名作品の主題歌であったことはご存知の通り。



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6 コメント

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Unknown (えい)
2009-11-29 21:37:07
おおっ。
フィルムセメント。
ぼくも、その昔、
8mmを作った初めのころは、
まだテープがなくて、
削って貼り付けていました。
いやあ、懐かしかったです。
下手で、すぐ切れてしまうんです。
◇えいさんへ (nikidasu)
2009-11-30 08:54:04
8mm フィルムは確かに薄い分作業は難しかったです。
その点35mm はそれなりに厚いので、その分作業はやり易かったです。

そして映画会社から予告編を大量に借りて繋ぎ合わせて
「予告編だけの上映会」という企画を行なったことも懐かしい思い出です。
サイコー (すとん)
2009-11-30 22:47:36
タラちゃんファンで足フェチの俺にはサイコーの出来映えやね
足の銃創グリグリやハンスの足見してみそシーンでタラの控え目ながらの舐める的シーンにニヤリです
俺的にはイーライ・ロスの喜々としてドイツ兵をブチ殺しまくる演技にユダヤ人達想いが凝縮されている感じがして凄いと思いましたっす。
タラはやっばサイコーです。
◇すとんさんへ (nikidasu)
2009-12-01 08:32:09
すとんさんみたいなマニアックなタランティーノファンのみならず、
普通の映画ファンにも映画的面白さを伝えた快作でした。
劇中ブラビがうそぶく「これは俺の最高傑作だ」という台詞は
まさに本人の自信の表れだっただったんでしょうね。
とにかく堪能させてもらいました。
タランティーノがいてよかった (OLDGEAR)
2009-12-05 16:22:00
音楽もいいし役者もいいし無駄に長い会話もいつものように全然むだではないしブラピものりのり、
この時代にタランティーノがいてよかったなあ......
と思うくらいの傑作でした。
ほんとにヨーロッパの俳優たちを使ったのも大当たり。

タランティーノの選曲ってどの映画も反則のように思いつつもすごく合ってますよね。110番街交差点は110番街交差点の曲じゃないか、キャット・ピープルはキャット・ピープルの曲じゃないか……しかしドンピシャであると。

僕らの頃の8ミリは完全にテープでしたス…

◇ OLDGEAR さんへ (nikidasu)
2009-12-08 10:46:46
当方未見ながら「110番街交差点」をご存知とは流石であります。
今度是非観ようと思っちょります。

ちなみに8ミリの編集、思い出せば確かにテープの時代でしたッス。アハッ!

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