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「ブラック・スワン」  BLACK SWAN


圧巻の演技というのはこういうのを指すのであろうナタリー・ポートマンの演技を超えた渾身の演技にすっかり魅せられたサイコ・ホラーの衣をまとった成長物語。

そもそも映画の大きな背景となるバレエ作品「白鳥の湖」は、チャイコフスキーの音楽はもちろん、代表的な場面も何度か観ていたこともあって、実のところ単なるわかりやすいお伽噺だと勝手に思い込んでいた。

ところが、こういった解釈ができるのだと思わせる人間の内面性に深く切り込んだ内容に驚かせられ、加えて全く性格の違うオデット(白鳥)とオディール(黒鳥)を同じバレリーナが演じ、踊り分けていたなんて知るはずもなく、そこから見えてくる一人のバレリーナの孤独と焦燥が、一人の女優の成長物語とリンクして胸を打たれてしまったのだ。

  

途方もなく大きく難しい役そのものに押しつぶされそうになる主人公・ニナがそれでも舞台へ向かう姿は、ダーレン・アロノフスキー監督の前作「レスラー」でのミッキー・ローク扮するランディの姿と相通じるものがあるけれど、人生の下り坂を歩み始めた諦観の中で希望を見出させてくれたランディに対し、清濁併せ呑む人生へと突き進み始めるニナの危うさにもまた、強く心惹かれてしまう。

  

そして黒鳥が似合う自由奔放な新人(ミラ・クニス)、かつての自分を投影しながら歪んだ愛情を娘に降り注ぐ母親(バーバラ・ハーシー)、そして長らく君臨していた主役の座から未練たっぷりに去っていくベテランバレリーナ(ウィノナ・ライダー)、そうした彼女を取り巻く女性たちの三者三様の在り方もまた極めて恣意的で、その組立て方にも思わず唸らせられ、あまり多くは語られていないような気がするけれど、その脚本の妙にもとても感心させられた。


それにしても終盤20分間、様々な試練やしがらみや自意識、そうしたものすべてと対峙しながら、やがて白鳥から黒鳥へと移り変わるシーンはまさに圧巻。
元々13歳まで8年間バレエを習っていた上、この作品のため1年の猛特訓したというナタリー・ポートマン、彼女の存在抜きでは語る事が出来ないけれど、それをサポートする見事なカメラ、編集、SFX。
これぞ映画だ! とぞくぞくしながら魅入ってしまった。


思えば4年ほど前、主計町のお茶屋「一葉」さんで、「一官一舞」によるたか子女将の『鶴の舞』を見せてもらったことがあるけれど(その時のエントリーはコチラ)、そこには紛うことなき鶴が舞い、ひとつの物語として堪能させてもらったのと同様、ここでの黒鳥へと至るその姿には、自身の中に潜んでいた“ 黒鳥 ”の部分に苦しめられていた純白の野心を持つニナがやがて解き放たれていき、狂気の闇へと移り変わる物語へと収斂されていくように感じ、さらには白鳥へと戻った時の安らぎ…、とにかく見応えたっぷりだったのでありました。


そして加えるなら、基本的にニナ目線で展開されるこの映画、どこまでが現実でどこまでが夢想なのか、その境界線が極めて曖昧で、だからこそ揺れ動く心情吐露となっていくわけだけど、いささかトリッキーな演出に対して好みは分かれるかもしれないなあ。

ともあれ、いろんな意味で見応えたっぷりな作品であることは間違いないので、機会があれば是非!なのであります。

コメント ( 6 ) | Trackback ( 32 )
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コメント
 
 
 
まさに! (oke)
2011-05-26 11:56:59
圧巻!
面白かったです。

「夢か現実か訳分からん」という人もいましたが、、
私は全然OK。

色んなシーンでナタリー・ポートマンに魅せられましたわ♪
バレエって美しい〜
 
 
 
◇ oke ちゃんへ (nikidasu)
2011-05-26 19:31:51
だよねぇ、普通にちゃんと面白かったよね。

四角四面に考えてしまう人には違和感があるかもしれないけれど、
揺れ動く心の投影として、素直について行けましたッス。

そして確かに「バレエって美しい〜」、同館であります。
 
 
 
Unknown (けん)
2011-05-27 01:15:20
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
 
 
 
◇けんさんへ (nikidasu)
2011-05-27 08:24:30
自分も含めてですが、TBを送るだけの人が多い中、
ご丁寧にありがとうございます。

こちらからもTBさせてもらいました。
よろしくお願いします。

 
 
 
Unknown (はる)
2011-05-27 16:04:26
まさかの展開で、特にお母様が怖かったです。
みごとなスリラーでしたね。
ラストのブラックスワンの舞は
鳥肌ものでした。
一緒に行った友達の腕を掴みそうになりました。
上半期、上位の一本です。
 
 
 
◇はるさんへ (nikidasu)
2011-05-31 09:49:04
物語を重層的に見せる一つのファクターとしてサスペンス的要素が取り入れられ、
それはそれで、ちゃんと機能していたと思います。

そしてお母さんは確かにいろんな意味で「怖い」存在でしたね。

ともあれ、グラミー受賞も納得の作品でした。
 
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