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「ラスト、コーション」 LUST, CAUTION 色・戒

舞台は1942年、日本占領下の上海。それまで普通に生活を送っていた女子大生が、「演じることの喜び」を知り、ちょっとした恋心をきっかけとして過激な抗日運動に身を投じていき、そこにはやがて思いも寄らぬ展開が待っているという、エスピオナージュ的サスペンス要素も盛り込まれた、アン・リー監督が描く男と女の物語。

とにかく、いろんな意味でとてもとても濃密な映画。
2時間半という長尺ながら決して緊張感は途切れることがなく、「アメリカン・ギャングスター」とはまた違った意味で時間を感じさせなかった。



麻雀に興ずるチャイナドレスの女性たちの鮮やかな切り替えしのシーンから、喫茶店で意味ありげに電話をするシーン、そしてそこから過去に遡っていくという導入部だけでも心どきどき。

そしていかにも大学生ならではの時代の空気に身体を染めるかのように抗日運動に身を投じるアマチュア活動家の輪の中に身を置くこととなる女子大生ワン(タン・ウェイ)。
衝動に駆られて行動は起こしたものの、自らは更なる一歩を踏み込むことの出来なかったグループの中にあって、一人距離を置きはじめるワンの女性としての変化が、撮影前はほとんど素人だったというタン・ウェイの役者としての進化とオーヴァーラップして見えてきて、キャスティングの妙を感じてしまった。



そしてそんな彼女の変化の原因となったのは、敗戦が濃厚となっている日本にしか後ろ盾を求められない汪精衛の傀儡政府の特務機関長、イー(トニー・レオン)。
彼もまた、誰をも信じられず、用心に用心を重ね、不安と猜疑心の中で生きていた。

そんな二人が、互いに強く惹かれ「暗殺者」ターゲットという本当の姿を明かさぬままに重ねはじめる逢瀬。
最初は男主導で、そしてやがて立場が逆転し女主導で行われる虚飾を捨てた肉体によるストレートな感情表現。

“ LUST ”とは欲情、そして“ COUTION ”とは戒め、という意味なんだそうだ。
踏みとどまることが出来ずに戒めを捨ててまで突き進んでしまった欲情の果てに、やがて訪れる切ない、あまりに切な過ぎる「戒」。



話そのものは、正直言ってそんなに魅力に富んだものではないのだけど、説得力のある背景設定に加え、例えば艶やかなチャイナドレス、例えば口紅の付いたコーヒーカップ、あるいは老上海を感じさせる街の佇まいや登場してくる古い映画の数々などなど、丁寧に丁寧に積み重ねられたディテールの数々、そして素晴しいカメラワークなど、そういったものが一体となって作品自体が重層的なものになっていて、単なるメロドラマでとどまらない人間が持つ愛おしさや愚かさ、そして愛の厳しさを強く訴えかけてきたのだ。

それにしても眼差しだけで語りかけるトニー・レオン、時間経過とともに激しく美しくなっていくタン・ウェイの姿に思わずため息でありました。



なんとも一筋縄ではいかない映画(苦笑)ではありますが、機会があれば是非。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 26 )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございます (悠雅)
2008-02-08 00:26:38
こんばんは。
ここ数ヶ月、gooブログさんへTBと、コメントのURLが弾かれてしまうので、
コメントだけで失礼させてください。

『ブロークバック・マウンテン』を観て以来、新作の公開を長らく待っていましたが、
期待に違わない、凄い作品を作ってくれました。

>丁寧に丁寧に積み重ねられたディテールの数々
>単なるメロドラマでとどまらない
全く同感です。公開を待っててよかったです。
 
 
 
うーん ()
2008-02-10 12:25:43
ご無沙汰です。

信頼するnikidasuさんのエントリを読んで、私の感じ方とやや違うので、うーんと唸ってしまいました。私は英語字幕を追うのに忙しく、映画をちゃんと受け止められなかったかもしれない、と自分でも思ってましたから。機会があれば日本語字幕でもう一度見てみます。それにしても、ディテールの鮮やかさは見事でした。
 
 
 
◇悠雅さん (nikidasu)
2008-02-11 17:07:09
返事がすっかり遅れてしまいました。すいません。
まさに「神はディテールに宿る」、そんな作品でもありました。
そして観終わった途端、さまざまな想いがこみ上げてきました。
 
 
 
◇雄さん (nikidasu)
2008-02-11 17:17:11
雄さんに信頼されるほどのものは何もないので、そう言って貰うと
何とも焦ってしまいますが…、

それはさておき、アメリカで外国映画を観るのは、ある程度字幕に
集中しなくてはならない分、確かに大変だと思います。

それにしてタン・ウェイの見事な演技にアン・リー監督の執念めいた
ものすら感じてしまいました。
 
 
 
Unknown (kimion20002000)
2008-09-23 22:01:35
こんにちは。

>丁寧に丁寧に積み重ねられたディテールの数々、そして素晴しいカメラワークなど、そういったものが一体となって作品自体が重層的なものになっていて、

まさに、そこですね。アン・リー監督は、たしかに大胆な主題の設定をしますが、丁寧な演出にかけては、天下一品だろうと思います。
 
 
 
◇kimion20002000 さん (nikidasu)
2008-09-25 22:32:32
コメントありがとうございます。
アン・リー監督の次回作はあのウッドストックフェスティバルを題材にした
映画になるそうで、こちらも楽しみです。
 
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