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「愛を読むひと」 THE READER


戦後のベルリンで15歳の青年が36歳の女性とひょんなことから出会い、愛し合い、やがて突然の別れがやってくるという“ひと夏の恋”的な印象を持つ序盤から打って変わって続く意外な再会、そしてそこでやがて知ることとなる女性の過去を通してさまざまな問題提起を感じ取ってしまったベルンハルト シュリンクによる小説「朗読者」の映画化作品。



ナチの戦犯の宣告を受ける裁判の途中、法廷に立ってハンナが裁判長に問いかけるシーンがある。
「わたしが言いたいのは……あなただったら何をしましたか?」
原作では裁判長は苦し紛れにその場逃れのことを言っていたはずだけれど、映画の中では口ごもるだけで何も答えない。

いずれにせよ、ホロコーストという歴史の真実に対していかに向き合うのかという、この作品が持つテーマのひとつが一番わかりやすく提示されるこの場面が原作を読んだときは一番印
象深く、男女間の物語としてではなく、贖罪といった歴史的文脈での読み方をしていた。



ところが、実際に映像化された作品を見ると、そうした側面に加え(大きく年が離れた男女のスキャンダラスな恋物語でもなく、ナチの親衛隊員だったハンナが犯した罪を糾弾するものではなく)、移り行く時間とともに心近づけ理解しようとしながら、決して相手の心を埋めることが出来ず、結果として時に身を委ねてしまった男の悔悟の想いが主人公からの回想的展開が積み重なっていく中、強く印象に残ってしまったのだ。



それにしてもなるほどケイト・ウィンスレットの「体を張った」演技は見事で、待望のオスカーも納得とは言え、そして監督も脚本家も英国人だとは言え、ここでの全編英語というのはあまりに違和感が強過ぎた。

せっかくドイツ人やドイツ人っぽい俳優たちを集め、現地ロケしているのに何故に英語?(ちなみに娘役に「4分間のピアニスト」のハンナー・ヘルツシュプルングも出ていたしね。ブツブツ)
そして主人公の名前もミヒャエルからマイケルになっていたのもなんだかトホホでありました。

出来ることなら音声はドイツ語バージョンで、そして日本語字幕で観ることが出来ればより一層違った観方が出来たような気がしないでもないのだけど、はてさて・・・。

まあそれはともあれ、セックス、愛、戦争責任、裁判の意義などなど多面にわたって語られる短くも豊かな原作に対して真摯に向き合った力作であります。
決して口当たりの良い甘い作品ではないけれど、機会があれば是非是非!



今日の1曲 “ Stella Maris ” : Einst醇вzende Neubauten

予告編を観たときに流れていたイメージソングが本編でも流れたらどうしょうかと思ったけれど、それが杞憂となったのは何よりでした。
ということで、ならばと、映画の冒頭でのマイケルとパートタイムな恋人との朝の出来事から思い出したアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのこの曲を。
ちなみに日本ではインダストリアル・ミュージックやノイズ・ミュージックの代表的存在として紹介されることの多かったこのバンド、実はベルリン在住の友人の友達バンドだったりして金沢にはファンが多かったりしますのだ(ん?)。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 28 )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございます。 (rose_chocolat)
2009-06-21 15:47:43
コメントは初めてでしょうか。

確かに全編英語は気になりますね。 それでもこれは違和感が少ない方でしたが。。。
ヨーロッパ映画はその国の言語で観てみたいものです。
 
 
 
◇ rose_chocola tさんへ (nikidasu)
2009-06-22 11:40:15
コメントありがとうございます。
原作を読んでいて、その世界観を想像していた分、
何とも違和感があって、困ってしまいました。

聞くところによると、実際にドイツ語バージョンがあるそうで、
ちなみにケイト・ウィンスレットだけは吹き替えになるそうですが、
是非観てみたいものです。
 
 
 
こんにちは♪ (ミチ)
2009-06-25 11:03:50
nikidasuさんも原作を読まれているのですね〜。
前半の恋愛部分よりも、ナチスに対しての戦後世代の思いという部分に興味を引かれて、以前読んでよく理解できなかったヤスパースの「戦争の罪を問う」を引っ張り出して来て再読したりしました。
映画は、ドイツ語じゃないこと以外は大満足の出来でした。
ドイツ語の響きと英語のそれとは全く違いますから、映画の空気すら変わっていたかもしれませんね。
 
 
 
◇ミチさんへ (nikidasu)
2009-06-26 00:43:41
はい、日本語の翻訳が出たときに読んでいました。
実は本を読んでいたときは、正直言ってあまり面白いと感じず、
苦労して読んでいた気がします(苦笑)。

それに較べ映画版は、恋愛の比重が大きい分、馴染みやすかったように
思えます。

ただ、ドイツ語が、ドイツ語が…(苦笑)
ちなみに The は Das なんでしょうね、やっぱり。
 
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