俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

バッテリー

2007年03月16日 02時44分09秒 | 時系列でご覧ください
なんだろう、久しぶりにきっちりとした日本映画らしい日本映画を見た気分。
当たり前だろうけれど、新東宝や獅子プロ時代の破天荒な演出は影を潜め、真っ向勝負の青春映画として滝田洋二郎が奇をてらうことなく手堅く撮りあげたベストセラー小説の映画化作品。

あさのあつこの原作の感想はこちらこちら

まず何よりもどれよりもとにかく演じる子供たちの見事なキャスティングに脱帽。
特にミドルティーンになろうとしている微妙な年頃の主人公・巧を演じた林遣都。巧が持つ焦燥感や渇きを見事に演じて見せてくれているのだけど、新人ならではの演技の不安定さがちょうどそんな巧の揺れ動く心の表現と期せずとも合致していたし、台詞が少ないのも正解だったし、さらに具体的に言えば肩を摑まれて苛立って母親の目の前で思わず壁を殴る「ノット・アンダーコントロール」寸前のシーンなど特にほぼ原作のイメージ。



そしてそんな巧とバッテリーを組む豪に関しては、原作にある豪自身の葛藤がかなり省かれている分、どちらかというと従来のスポーツ映画の典型的なキャッチャー像となっていていささか物足りなかったけれど、それを補って余りある巧の弟である青波の存在。

大人たちがいくら知った風に巧のことを語っても、それがすべて見当違いであることを知れしめてくれる青波の存在は(鎗田晟裕の好演も含めて)映画の中だからこそより輝いていたように思えた。
さらには中学の野球部の様々な魅力的な少年たちの描き方もずいぶん健闘していたと思う。

とにかく、主人公・巧を中心とした少年たちの心を同じ目線で描いた原作と別物として観る分には良く出来たスポーツを題材とした娯楽映画と言えるだろうし、爽やかな鑑賞後感を含めて充分楽しんで観ることが出来、滝田洋二郎監督の手馴れた演出にも感心。

ただ、だけど、あまりにまともすぎる予定調和的な話の持って行き方に、単なる青春物語に括れない原作の持つ広がりに対してどうしても少なからず物足りなさも感じてしまったののも事実だったりもするのだ。ウーム。



今日の1曲 “ コミック雑誌なんていらない ” : 内田裕也

この前日比谷で裕也さんみたいなロッケンロールな爺さんと道で出会った。
思えば随分むかし、この曲をもとにした映画がニューセンチュリープロデューサーズ作品として世に送り出され、そのときの監督が当時ピンク映画若手のホープと称せられていた滝田洋二郎でした。
~ 俺にはコミック雑誌なんていらない 俺にはコミック雑誌なんていらない 俺にはコミック雑誌なんていらない 俺のまわりは漫画だから ♪
もともとは今となっては知る人ぞ知る頭脳警察のパンタの曲ですが、そういえば裕也さんて、東京都知事選に立候補したこともありましたっけ
まさかあるとは思わず見つけてしまった動画はコチラ
ちなみにこの動画、後半だけでOKです


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4 コメント

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こんにちは。 (ジョー)
2007-03-17 10:21:53
TBありがとうございます。
ほんとに、こういうきっちりした日本映画を久しぶりに観た気がします。木下恵介以来でしょうか。(って、その時代に私は生きていないのですが)滝田洋二郎監督も「コミック雑誌はいらない」に比べずいぶん端正な映画を撮るようになったものです。
こんばんは♪ (ミチ)
2007-03-17 20:46:49
この映画の成功はまずキャスティングの成功だと思いました。
原作を読んだときのイメージに極めて近いキャスティングでしたよね。
原作では豪君がちょっとオマセな口をたたくことがあるのですが、それが映画では無くなっていてホッとしました。
あれは原作を読んだときにちょっと違和感を感じていたのです。
◇ジョーさん (nikidasu)
2007-03-18 15:24:56
とにかく何ら奇を衒うことなく正攻法で撮りあげた滝田洋二郎監督の演出に
すっかり魅せられてしまいました。
個人的には昨年の根岸吉太郎監督とともに嬉しい復活でした。
◇ミチさん (nikidasu)
2007-03-18 15:33:03
漫画や小説など原作ものの映画化作品はどうしてもイメージがずれることが多い中、
この作品の登場人物は本当にイメージにかなり近いものでした。
そういった意味では原作を読んでいても違和感なく入り込めました。

>豪君がちょっとオマセな口をたたくことがあるのですが
うっ、そんなところありましたっけ?
すいません、覚えていません。
ただ、原作では豪は豪なりに悩みを抱えていて、そんな彼と巧との対比が興味深かった
のですが、映画ではさすがそこまでは描いていませんでしたね。

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