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「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」  There Will Be Blood

時代表記があるだけで、全くの台詞なしでその時代背景や人物像をレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドの不気味でノイジーな音楽とともに延々と20分近く描写するオープニングシーンから思わず釘付け。
表面上は石油を追い求める一人の男の一代記となっているけれど、題名にあるように彼が求めた「石油」はまさしく資本主義国家を機能させる「血」そのものであり、背景としての時代こそ100年近く前に設定されているけれど、現代に通じる寓話的色合いを強く感じてしまった。



そして欲望にまみれ、富と権力を追い求め、ある意味『アメリカンドリーム』の体現者となり、やがて金の亡者となってしまうダニエル・デイ=ルイス扮するダニエル・ブレインビューの強引でかつ哀しい人生を機軸に、ファナティックで胡散臭い宗教家(ポール・ダノ)や家族を騙って近づいてくる男(ケヴィン・J・オコーナー)、あるいは息子(ディロン・フレイジャー)との関わり合いを通して破滅の道へと加速度的に突き進んでいくその姿に、独善的な道を突き進む大国としてのアメリカに対するアイロニックな批判精神が垣間見れたのだ。



とにかく、演出、演技、音楽、撮影と、すべてにおいて最近のアメリカ映画の中では群を抜くその完成度の高さは素晴らしく、観終わってからの後味は人それぞれにあるだろうし、すべての人にオススメとはいかないクセのある作品なれど、機会があれば是非! であります。



今日の1曲 “ Brahms Symphony No.3 Poco Allegretto ”



5月の『ラ・フォル・ジュルネ』以来、ちょいとクラシックに興味を持ち始めていたこともあって( ← 我ながら本当に単純なオヤジだ:汗)、劇中流れたこの「ブラームスのヴァイオリン協奏曲第3楽章」の使われ方には心ぐらぐら。
こうした具合に心に響くクラシック音楽の使い方はひさしぶりだったような気がします。
題名を聞いてピンとこない人はコチラをば…。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 8 )
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コメント
 
 
 
ミルクシェーキ♪ (YOSE)
2008-06-20 01:54:40
胡散臭い宗教家は前々作『マグノリア』にてサリンジャー的モチーフのTV番組にておしっこをちびる天才少年を演じていたのを思うと月日の流れを感じます。クレジットにて『ロバートアルトマンに捧ぐ』とありましたが元々アルトマンライクな群像劇のデビュー作、2作目ときてアート志向で実験作的な3作目ときて、骨太な個人の歴史絵巻ともいうべき今作に到達したポール・トーマス・アンダーソンには本当に感服しました。『ノーカントリー』にしろ最近のアメリカ映画(一部)の方向性がニューシネマ的なテイストに回帰しつつあるように感じませんか?
最後に関係ないですが、俺も『いたる』行きたかった!行くなら、やはり冬っすね!!
 
 
 
◇YOSEさん (nikidasu)
2008-06-20 09:19:31
>最近のアメリカ映画(一部)の方向性がニューシネマ的なテイストに回帰しつつある

それがたまたまなのか少々判断つきかねる部分はありますが、
何となくそんな気は(願望を含めて)確かにしますね。

それにしても通称P.T.A.監督。
まだ37歳という若さで、こんな作品を取り上げるとは本当に驚愕であります。

そう言えば金沢の料理人も若くしてとんでもない料理を出す人間が増えたので、
機会があれば久々に是非遊びに来てください。
 
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