goo

「蝉しぐれ 」

「文四郎さんのお子が私の子で
 私の子どもが文四郎さんのお子であるような
 道はなかったのでしょうか」

かつて「人間、年を重ねていくうちに、オジサンは司馬遼太郎を読み、オバサンは渡辺淳一を読む」と喝破したのは愛すべきおばはん田辺聖子だったけれど、年齢的にまさにそういわれる世代となったものにとって、藤沢周平の作品もまた、たまらなく読みたくなる、大いにそんな気にさせられた映画でした。

物語の始まりは主人公・牧文四郎が15歳であった少年時代。文四郎は、寡黙ながらも実直に生きる父を大変尊敬していましたが、父は信念に従った結果、世間に誤解を受け切腹させられる運命を背負います。しかし、文四郎は父を決して恥じることなく、母を助け懸命に生きてゆきます。文四郎が人生の無常なる逆境に立ち向かい成長する過程には、「青春」があり、「友情」があり、「人との出会い」があり、「恋」があり、「父から子へと継承される人としての生き方」という普遍的なテーマが見事に織り込まれています。(公式HPの解説より)

まさにそうした物語が、移り行く四季の風景とともに見事に映し出されていて、とても抑制の効いた良い映画でした。

その中でも、亡き父の遺体を大八車に乗せ坂の途中で立ち往生してる時に、坂の上から駆け下りて来る幼馴染のふくの姿が契機となり、文四郎とふくの一途な愛の姿にすっかり心動かされ、終盤、本当にきれいな日本語で綴られるふくからの文(ふみ)から続く二人の別れのシーンには、いささか目頭が熱くなってしまいました。

そしてなによりここで語られる言葉ひとつひとつが、本当にきれいな日本語で心に響き、そんな二人を演じる市川染五郎と木村佳乃の気品ある凛とした演技も素晴らしく、日本人としてのDNAを感じてしまいました。

また予告編で使われていた一青窈の歌を安易にエンディングで使わなかったことにも製作者側からの心意気を感じ、(じつのところ優等生過ぎていささか居心地の悪さを個人的に感じないことの無かったとはいえ)とても丁寧にとてもちゃんと作られた映画なのでした。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 11 )
« 「ダブリン上... 「いつか読書... »
 
コメント
 
 
 
TBさせていただきました (ミチ)
2005-10-09 09:33:01
こんにちは♪

私もいつも藤沢周平の世界には日本人のDNAを刺激されてしまいます。

このごろはイメージソングが大流行ですよね。

この作品でも「かざぐるま」が流れるかと思いきや流れなかったので、ホッとしたようながっかりしたような(笑)

個人的な好みで言えば有名歌手の歌がエンディングで流れるのは特に好きではありません。

(もちろん時と場合によりますが)
 
 
 
TBありがとうございました (mimia)
2005-10-09 17:36:54
私は渡辺淳一読みませ~ん(笑)



山田洋次の前2作が山形弁だったのに対し、本作は東北なのに標準語だったのは、山田洋次作品との差異を作るため?と思ったのですが、綺麗な日本語のためだったのかもしれないと…nikidasuさんのを読んで思いました。
 
 
 
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ (nikidasu)
2005-10-10 02:32:49
★ミチさんへ



曲そのものは決して嫌いではないのですが、とにかく今回、本編で流さなくて大正解ですよね。

そしておっしゃるとおり時と場合によりますが、邦画で成功していた例って、すぐには思い浮かびませんね。



★mimiaさんへ



年を重ねていくほどに、改めてきれいな日本語を聞きたくなる今日この頃です。

それにしても木村佳乃みたいな人があんな風に話してくれたら、かたじけないでは済まないでしょうね、絶対。

 
 
 
こんばんは♪ (miyukichi)
2007-09-01 01:32:10
 TBどうもありがとうございました。

 木村さん、凛としていてとてもよかったですね。
 これまで観たなかで、この作品での木村さんが
 一番美しかったと思いました。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
 
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
 
 
映画「蝉しぐれ」 (ミチの雑記帳)
映画館にて「蝉しぐれ」 ★★★★☆ ストーリー:江戸時代の東北の海坂藩。下級藩士の牧文四郎(市川染五郎)の父(緒形拳)は、藩の派閥抗争に巻き込まれ、冤罪によって切腹を命じられた。以後、文四郎は謀反をおこした父の子として数々の試練にさらされる。 藤沢周平原
 
 
 
蝉しぐれ (mimiaエーガ日記)
★★★★藤沢周平作、同名原作を映画化。お家騒動に巻き込まれた下級武士の生涯を描
 
 
 
蝉しぐれ (ネタバレ映画館)
 「文四郎さまのお子様は?」「未だ・・・」「いまだ・・・とおっしゃいますと?」「未だ・・・い、今田耕司」  『たそがれ清兵衛』『隠し剣、鬼の爪』と続いた藤沢周平作品の映画化。今回は、山田洋次監督ではなく、黒土三男監督がメガホンをとった。どうしても山田作品
 
 
 
映画館「蝉しぐれ」 (☆ 163の映画の感想 ☆)
日本史が大嫌いだった私。そんなわけで、実は今までこのような時代物の映画はあまり観ていませんでした。最近は、面白い邦画も沢山あるので観ることにしました。 幼馴染の2人、文四郎とふくが思いを寄せ合っているのだけれども、その恋は成就することはない、、、そん...
 
 
 
#36:蝉しぐれ (*KAZZの呟き*)
KAZZのこの映画の評価   いいねっいやぁ~泣けました こういう映画で感動するようになったって、 やっぱり自分もおじさんなんだぁ~とちょっとショック 邦画は、やっぱり王道の時代劇なのかな ”たそがれ清兵衛”などで知られる 英雄でも、偉人でも無く...
 
 
 
「蝉しぐれ」息詰まる大画面の悦楽 (soramove)
「蝉しぐれ」★★★★☆大満足! 市川染五郎、木村佳乃 主演 素晴らしい作品に出会った。 桜、蝉しぐれ、目に眩しい稲穂 そして一面の銀世界。 目にそして耳にと季節の移り変わりを感じ、 隣同士の幼なじみは それぞれの運命に翻弄されつつ それでも自分...
 
 
 
蝉しぐれ (toe@cinematiclife)
どうも、中学・高校時代、歴史の授業がすごく苦手で、「大切なのは、過去よりも未来だろ!!」なんて、傲慢な考えをしてまして(ーー;) が、映画を見るようになってから黒澤作品を見るようになり、時代劇の面白さを知るようになったのです。 しかし、なにせ歴史の勉強が嫌い
 
 
 
蝉しぐれ (★☆★ Cinema Diary ★☆★)
日本らしい良い作品だとは思うけど、自分には合わなかった。しかし観る人によっては素晴らしい作品に映ると思います。ラストの市川染五郎と木村佳乃の対話は必見。
 
 
 
蝉しぐれ (黄昏ミニヨン想録堂)
 今回で最後。『蝉しぐれ』である。
 
 
 
蝉しぐれ [Movie] (miyukichin’mu*me*mo*)
 映画 「蝉しぐれ」     (黒土三男:監督/藤沢周平:原作)  のTV放映を昨日観ました。   蝉しぐれNHKエンタープライズこのアイテムの詳細を見る  藤沢さんの原作は、たしか読んでるはずなんですが、  何しろもう10年くらい前なので、  筋書きなんてまった...
 
 
 
蝉しぐれ (☆彡映画鑑賞日記☆彡)
 時は江戸時代-15歳の牧 文四郎(石田)は、東北の下級武士の父親の助左衛門(緒形)を尊敬し、剣術と学問に明け暮れていました。  隣家に住む幼馴染のふく(佐津川)に淡い恋心を抱いていた文四郎でしたが、ふくもまた優しく頼れる兄のような存在の文四郎に憧れて...