俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「グエムル -漢江の怪物- 」

2006年09月05日 01時28分49秒 | 時系列でご覧ください
予告編を観る限りでは怪獣が出現し暴れまわるパニック映画程度にしか認識していなく、実はさほど食指が動かなかった。
しかしたまたま今日の午後、時間が合って実際に観ることが出来、その有無を言わせぬほど説得力溢れ、批評精神に満ちた素晴しい仕上がりに思わず感動。

とにかく全編に流れる人間として持つべき大きくて深い「思い」の伝わり具合が決して半端なものではなく、さらにその「志し」の高さにもいたく感心してしまった。



モンスターの誕生との因果関係として在韓米軍の関与が描かれていることからアンチ米国というメタファーは当然のことながら明確に提示されているけれど、それにとどまらず軍隊、警察、官僚、マスコミといった言わゆる「権力」の理不尽な横暴に対しての批判が、決して声高ではないけれど、見事に描かれていて思わず賛同。

そしてそうした込められた思いが決して一人歩きするわけではなく、娯楽映画としてちゃんと作られていることにも大いに感心させられた。

ソン・ガンホ扮するカンドゥのダメ親爺ぶりもさることながら、コ・アソン扮するその娘ヒョンソの脱出を試みる際の力漲る眼つき、あるいは試合では躊躇するもののここぞという時にきっちりやるべきことを成し遂げるペ・ドゥナ扮する妹のナムジュ、昔とった杵柄とばかり火炎瓶を投げ込む弟のナミル、さらにはまさに犬死となってしまう一家の長であるパク・ヒボン、そうしたひとつの家族のありよう、そして置かれている状況に韓国の今ある姿が凝縮されているようにすら見え、とにかく力いっぱい堪能させられた。



それにしても最後の最後、きれい事で幕引きを計ろうとする権力側の様子を伝えるニュースを放送しているテレビに対して、さも興味なさげに電源スイッチを、しかも足先の指!を使って消してしまう演出にはほとほと感心させられてしまった。
こんな批評精神溢れるアナーキーな監督、なかなか今の時代いやしない。



そしてこの映画が国内映画史上最大の観客動員を記録し、今も更新中という韓国という国、こちらもまたある意味改めて凄い国だなあと思わず感心してしまった。

とにかく1本筋が通った骨のある映画なので、かつて映画青年だった伊藤俊也監督ファン辺りは特に必見の作品であります。



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4 コメント

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あ、私も・・・ (mimia)
2006-09-15 22:42:08
ソン・ガンホの足蹴にした演技、皮肉を込めてて面白いと思いました。

それにしてもnikidasuさんも評価高いですね。私は韓国のドラマや映画の中で描かれる例えば父であったり兄であったり、いろいろな「無償の愛」に魅かれます。それは血縁であってもそうでなくても・・・。やはりラストがよかったです。
血縁 (nikidasu)
2006-09-16 00:52:52
■mimia さんへ



実は韓国映画はそんなに多く観てないので偉そうなことは言えません(苦笑)。

ただ「無償の愛」の尊さはさておき、この前友人が韓国映画は

物語の展開に血縁を簡単に使いすぎると憤慨していて、

妙に納得してしまいました。

それにしてもソン・ガンホの足蹴にした演技、誰も何とも

言ってくれなかっただけに同意してもらって嬉しかったッス。
イマイチ (はっち)
2006-09-18 09:19:22
TBどうもでした~♪



ネットの掲示板なんかでは、評判エエみたいだったので観にいったんですけどね・・・僕の腐った感性にはヒットしませんでした。

ペ・ドゥナちゃんもずっとジャージ姿だし・・・
Unknown (ちえ)
2020-02-05 02:51:02
なんかイマイチ興味惹かれてなかったんやけど、ポンジュノ監督の映画がアカデミー賞の作品賞にノミネートされとるし、一回観とこうか。。。と思って録画したのを観てみたんやけど、やっぱ評判よかっただけのとこはあったわ〜早く観とけばよかったわ〜😅
なんかヘンテコな怪獣に目を奪われがちやけど、実はしっかり繋がってる家族愛!とか、それぞれのキャラクターも、癖が強いが実際いるわ〜って人ばっかで、隅々まで目が離せなくなる感じが凄い!
やぱ評価されるだけのことあるわ〜この監督って感じよ。
パラサイトも後味いいかどうか謎やけど映画館で観てこうかなあと思っとります。

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