話が少し脱線しますが、知的なゆっくりさんの小3の☆ちゃんのレッスンで、こんなことがありました。
この子はこれまで繰り返し訓練してきたことに関してはかなり上達して、4ケタの足し算引き算とか短い文を読んで、そこに書かれている内容についての問いに答えることはできるようになっています。
ところが、それまでやったことがないプリントをさせたり、教具を見せて問いかけると、驚くほどでたらめな答えを言います。
どれも☆ちゃんが今できていることからすると易しいはずの問題です。
たとえば算数用のタイルを使って、38という数を作るとします。
10ずつの塊が3本とその下にバラバラのタイルを8並べます。
☆ちゃんは数についてずいぶん理解が進んでいて、足し算引き算だけでなくかけ算や割り算の学習にも取り組んでいる子ですが、その38個のタイルを指して
「あと2つ増やすといくつになるかな?」と問うと、
「10」と答え、
「よく考えて」とうながしても、その間違いに気づけないのです。
「あと2個増やす」という言葉に引きずられるのか、38個のタイルの下の8個だけをじっと見ています。
「☆ちゃん、☆ちゃん。この問題はどこからどこまで見ればいいのかな」
とたずねて、指で見る範囲の枠をなぞることを
教えると、「40」と正しい答えが言えるようになりました。
このように見る範囲の枠を指でなぞってから、算数の文章題や国語の問題を解くようにいうと、たちまちとんでもない間違いが減ってきました。
☆ちゃんは「問題がわからない」というより、自分が相手をしている範囲、見る範囲がわからなくて、目についた一部の情報に反応して、パッと思いついたことを言ってしまうようなのです。
ですから、「見る範囲」「考える範囲」の枠を指でなぞる仕草をすると正しい判断ができるようになる場合もたくさんあるのです。
この「見る範囲」「考える範囲」の捉え方の問題は、前回まで書いてきた「暗算ができるできない」(この書き方は誤解を生む可能性があるのですが)ことで起こってくる問題と近いものがあります。
前回の記事に次のような質問をいただきました。暗算の話の続きを書かせていただく前に質問にお答えしますね。
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自宅で塾を開いています。小2の生徒さんで全く同じ反応を示す女の子がいます。
反復練習で計算や漢字はなんとか学校の進度についていけるようになりましたが、やったことのない問題や教具を使って問いかけると、解けません。
何が原因で思考が停止してしまうのか・・・彼女の頭の中が見えるようになりたいです。
彼女の中で「何か」がひっかかて、次のステップに進めない状態になっているのはわかるのですが。
その「何か」が見えなくて・・・
先生のおっしゃっている、「見る範囲」「考える範囲」の枠を指でなぞる仕草・・・とは具体的にどういったことなのでしょうか。
「枠」とは何を指しているのでしょうか。
すみません、どうも具体的なイメージがわかなくて。
今後の指導の参考に是非させていただきたいので、ご回答いただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
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ひとことで、「見る範囲」「考える範囲」がわからないために新しい問い方をされるとそれまでできていたことが全くできなくなる、といっても、
その子が自閉傾向がある子(広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの診断を受けている子)か、知的障害のある子か、LDを持っている子か、ADHD傾向がある子か、さまざまな問題を重複して抱えている子か、
一般的な子ではあるけれど日常体験や遊び等が極端に不足している子かによって、困り方も異なるし、対応の仕方も違うものになってくると思います。
わたしが教えていて実感しているのは、「見る範囲」「考える範囲」について配慮することで、急激に成績が伸びることがよくあるのは、広汎性発達障害やアスペルガー症候群などの診断を受けている子たちです。
こうしたハンディーを持っている子たちは記憶力がとてもいい子が多くて、状況によってルールが変わったりしない決まった秩序が守られている場で高い能力を発揮します。
「見る範囲」「考える範囲」については、パソコンのソフトを利用するなど、いつも決まったルールで動き、決まったフィードバックが返ってくる教材を使うと短期間に驚くほど能力が伸びることがあります。
自閉傾向のある子たちの「見る範囲」「考える範囲」については、また次の機会にくわしく書かせていただきます。
前回の記事の知的ゆっくりさんに対する「見る範囲」「考える範囲」を指でなぞるという方法については次の記事で書かせていただきますね。