虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子育てって、より偏差値の高い学校に子どもを進ませるための競技なの? 3

2011-02-10 19:35:10 | 教育論 読者の方からのQ&A
子育てって、より偏差値の高い学校に子どもを進ませるための競技なの? 1
子育てって、より偏差値の高い学校に子どもを進ませるための競技なの? 2

の続きです。

上の記事で話題にした「大学受験」を中心とする日本の教育システムは是か非か、はたして受験勉強は悪なのか、善なのか……
相変らず、どっちとも言えないどっちつかずの気持ちです。


受験肯定派にすれば、
「過度の受験競争がわが国の教育をゆがめているという常識は、非常識じゃないか? 
第一、日本の高校生たちは少しも勉強していないぞ」
と言いたいところなのでしょう。

学力低下は事実だし、高校の授業時間や一日の授業数が増えているケースを差し引いても、
今時の高校生くらい苦学とか猛勉強という言葉が似合わない人種もいません。

でも、だからといって、

「ゆとり・個性化・多様化・生きる力」といった
スローガンを掲げる教育改革をして、
マスコミや教育関係者が
「知識軽視」に拍車をかけた結果、
高校生が勉強を馬鹿にしてやらなくなったのだ。
学力低下は、「受験=悪玉」と決めつける態度で起こった

と理路整然と説明されると、
「うーん、どうなのかなぁ?」首をかしげてしまうのです。

関西圏の子どもの勉強しない原因と見られる意識の変化は、
『知識軽視』とか『受験=悪』とかいうより、

経済的に不安定な状態とお笑い番組やヤンキー礼賛ドラマの影響で、

『ヤンキーかっこいい!』『馬鹿のがえらい!』

という信仰にも似た思い込みが蔓延しているからでもあるのですよ。

それと受験勉強へのモチベーションを壊滅的なほどに下げているのは、
文部省や教育学者の意見に熱心に耳を傾けた結果というより、

良い大学に進んでも、良い就職ができるとは限らないし、良い就職しても会社の将来はわからない……というリアルな現実や、
小学生まで自分の国の首相を馬鹿呼ばわりするようになるような政治の報道のせいでもあるんですよね。

これじゃ、がんばってどんどん上を目指すなんて、子どもだってあまりにも不毛に感じるでしょう。
今の子は学校の先生の言うことは聞かないけど、
テレビのお笑い番組やニュース報道番組内の醜いドタバタ騒ぎからは吸い取り紙みたいに学びますから。

昔は、「子どもが見てるから」「子どもも見ているから」と大人たちが
自分たちの醜い姿を晒すのを自制する姿があったものですが、

そんな姿ばかりがスキャンダラスに繰り返されるものですから、
教室の内外で接する子どもたちはそれだけを見て、日本や社会の全てを知った風な気持ちになって軽蔑しているところがあります。

実際、日本の企業の研究開発とか、世界で行っている仕事とか、小さな会社のさまざまな工夫や社会の仕組みを見ていると、「日本ってすごいなぁ」と圧倒されるばかりなのですよ。

もちろん問題がないわけではないのです。
でも、そのどれを取っても、よく知らない大人たちが
「あの企業もこの企業もダメだ」「日本は海外に負けてる」とか「あの政治家はダメ」「この政治家もダメ」とテレビ画面で口汚くののしるのを聞いて、

まだ社会を知らない子どもや若者までがいっしょになって
「世の中馬鹿ばかり。日本はもう終わり」
と口をそろえて言うようなものではないのです。

「不景気で思うようにいかないこともたくさんあるけど、
日本はやっぱりすごいな。
自分も日本の新しい道を切り拓いていく一助となろう」と誇りを持っていえるようなすごい技術ばかりなのです。

子どもたちの多くは自己肯定感がとても低いです。
自分の有能さや価値が感じられないのです。

以前も書きましたが、私は子どもがどんなに幼くても、障害を持っている子でも、
「あなたは社会の一員で、社会はあなたの力を必要としています」

というメッセージが伝わるように接しています。

そうするだけで、子どもは元来の素直さや向上心を取り戻して
がんばるようになっていきます。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「社会はあなたの力を必要としている」から始まる (まさ(climbmasa))
2011-02-11 23:50:39
そう、社会には地道に活動している人たちがたくさんいます。でも、「まじめに生きたら損」という風潮と、それを後押しするお笑い番組などに、大人も子どもも振り回されてしまっています。
「あなたは社会の一員で、社会はあなたの力を必要としています」、大人たちにも必要なのだと思います。今の私の職場を見ていると、それを一番に感じます。
微力であっても、それを社会に伝えていきたいと考えています。
p.s. 絵画展、とてもよかったです。お話の中で、同じ方向性を持つことがわかったことも、とてもうれしいです。
これからもよろしくお願いします。

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