虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「若者たちはなぜ、社会に対して何かを訴えたり行動したりしないのか」という内田樹氏への質問 4

2011-10-22 13:28:01 | 番外(自分 家族 幼少期のことなど)

私は息子に次のようにたずねてみました。

「内田樹先生は、若者たちは連帯の作法を失っているとおっしゃっているけど、

それを取り戻していくための具体的な方法はあると思う?」

 

息子 「うーん、そうだな。難しいことなんだろうけど……案外、

小説とかマンガとか映画とかゲームといった若者文化って呼ばれているものが、

唯一の救いのように、そうした役割を果たしていると思うよ。

 

今の社会構造は私利私欲に走る人が多いほど、社会情勢がうまくいく

ような面があるから、そうした文化的なものから得る生きがいのようなものからしか、

人が変わっていけないところがあるんじゃないかな。

 

教育は内田樹氏の言うように、ゆがんだ社会構造を守るために

利用されているからね。

といっても、本当にそれが自分たちが教育されてきたものや

社会で刷り込まれてきた私利私欲に走る考えを浄化して、

互いに連帯して何かを作っていこうってところまで行くには、

もう少し、大人と呼ばれる層もそうしたぼくたちを取り巻いている文化に関心を持って、

それを通して本気で語り合っていくといったことが必要なんじゃないかな。

 

若者とひとくくりにして、遠巻きに眺めているだけじゃ、

どんなことを考えているのか、

どんな夢を描いているのか、何に不安を感じ、何を面白いと思い、

どんなときに真剣になれるのか、どこでどんなつながりが生まれているのかなんて

わからないんじゃないかな。

ネットで暴言を吐いているように見える人々も、結局は後ろにいるのは

生身の人間なんだよ。

 

物語や、ゲームや映画の下地になっているファンタジーは、

ずっと生きる意味を扱ってきたことで評価されているのだろうけど、

これからは、もっともっとその真価と、人と人の心をつなぐ力が

見直されていってもいいんだと思う。

遊ぶだけ見るだけで自己完結して、

しまうのは、多くの人が、文化は学ぶものではなくて

自分たちで作りあげていくものだということを忘れているからじゃないかな?」

 

母 「文化? そうね。あんまり考えたことがなかったけれど、

お母さんも子ども時代、まるで人生とか世界の全てを結晶にしたような

児童文学の作品や絵本に触れるなかで、自分より先に生きている世代から

愛され大切にされていることを感じとったものよ。

ファージョンの童話やマリアグリーペの書く物語は、

人生の真実に気づかせてくれた。『ムギと王様』なんて暗唱するほど

繰り返し読んだから。

本気で生きている大人はどんなことを考えているのか、

この人は自分に大切な何を伝えようとしているのか、

そうしたものを子どもは驚くほど正確に受け取る力が

あるから。

そうね、そうした文化の継承は読んで終わりではなかったわね。

私のなかで、さまざまな考えや夢とか

能動的なものが渦巻いていたわ。あれは読んだのではなく、自分で自分の

文化を作っていく体験だったのね」

 

息子 「たとえば、数学なんかにしても、解くもんじゃなくて、

自分で作りあげていくものなんだよね。

数学で何ができるのかっていう

創造的な素材として

数学と付き合ったら、それだけで人間のいろんなことが

見えてくるんだよ。

 

文化も同じで、

文化って見物したり、保管するものじゃなくて、

自分たちが日常のなかで作っていくものでさ、

身近な自分たちの生きる営みから

自然に形作られていくものだから、

文化にフォーカスすることで、それまで気付かなかった

さまざまな価値が発見できるし、生じてくるんだと思う。

ある種、ネットの発達で、新しい文化があちこちで作られていて、

まだマイナーな人同士の楽しみで終わっているけど、

それが今の日本人の不幸で苦しいって状況の一部を、

解決してくれるのかもしれない。

 

でも、そのためには、一度、

今は経済的に苦しいから、もっとお金をもうけて、もっと競争力をつけて、

もっと評価される存在になって、もっと成功して、世界との戦いで勝ち残らねばならない

って強迫観念を、脇に置いてみないとダメなんじゃないかな。

 

そうしないと、シンプルに人と出会って、相手のことを思いやるとか、

いっしょに楽しむなんてできないから。

いっしょに文化を創造している仲間だって認め合うとか、

他人を助ける喜びを感じるとかは、

そうしたシンプルな関係の上にしか築けないからね」

 

 


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1 コメント

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色々考えさせられます・・・。 (ふね)
2011-10-22 23:19:40
『学ぶ』という行為は、ただ単に「知る」「知識を蓄える」ことだけではなく、『自らの中で何かを創造し発信するためのモノ』でもあるのですね・・・。

自分にも思い当たる部分はあります。
何だかとても感慨深いです・・・。

子ども達が、これからも生きて暮らしていかなければならないこれからの時代、ずっと先の時代・・・
正直絶望していた部分があったのですが、少し希望が持てたような気がします。

学ぶこととは、学んだこと全てを集約して自らの中で創造し、外界へ発信すること。


他人を思いやり、人を理解し、支え合って生きていくのが大事なんだと気づいてくれる人が、少しでも増えるように・・・

今、私に出来ることは、せめてそのような考えを持てるような人への接し方、言葉遣い、気遣いを自ら実践していくことと、その姿を息子に見せることかな・・・?

色んな事をたくさん学んで集約した結果、それはどんなことであっても最終的には、自分の子どものためであったり、親しい人のためであったり、自分以外の人のためになる。

そのために人は学びたがるんだな・・・と思いました。

なぁ~んだぁ~(笑)
結局人は、他人を思いやる「種」持ってるんじゃない♪

自己満足だけで学ぼうと思ってるんじゃないのね♪
よかった!





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