超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

食戟のソーマ 4巻/附田祐斗・佐伯俊

2013-09-04 15:38:47 | 漫画(新作)
















附田祐斗・佐伯俊「食戟のソーマ」4巻読了。

















前巻の熱い引きから本誌でも大人気だった四宮シェフとの食戟編なワケですけど
このエピソードの一番良い部分はこのお話を通して誰もが株を上げた、ってところなんですよね
今までずっと創真に助けてもらってばかりだった田所ちゃんの懸命な姿だったり
実は裏事情があって非情にならざるを得なかった四宮の本音と前進
そしてサポート役に徹してるだけなのに要所要所でその確かな技術で存在感をアピールした創真、
更に過去のエピソードで実は深い絆があることが分かった卒業生の面々に
元々は単なる衝突だったはずの今回の出来事を
最終的には見事なお互いの前進に変えてしまったある意味本当の魔術師堂島さん
少年漫画でここまで後腐れのない爽快感と意義のあるエピソードを読めたのが嬉しかったです

そもそも「食戟のソーマ」は最初期は創真の実力は凄いんです!と彼の力をアピールする事で
カタルシスを生み出し人気に繋げる類の漫画だったはず
だけどこの4巻はそれだけでなく
しっかりとキャラの成長だったり一皮剥ける姿を描写出来ていて
純粋にキャラクターの成長・進化を伝える物語として読めるのが良いですね
創真の腰巾着状態だった田所ちゃんが自分なりに考えて今の答えを出し、伝わる様は
2巻でのポテンシャル提示の描写を読んだ事もありようやく一人立ちを果たせたようで感慨深かった
そして、その元々無敵状態だった創真もここで初めて敗北を喫するワケですが
自身が直接調理した食戟でないことから
彼自身の株は下がらず、
だけどそれでも勝つつもりだった向上心とプライドを垣間見せてポイントが上がりました
そうやってキャラ自身をスケールダウンさせないまま展開にメリハリを付けるのが上手いなあ、と
こと構成に関しては神懸かってるなあ、と思わず感じてしまった最新刊でした。
ちなみにこの後も創真の株を下げずにピンチを作り出すので
その辺のネームの上手さも期待していて欲しいです


そういった「その場の勢いでごまかさない良さ」は四宮の処遇にも表れています
ここで安易に勝たせるほど四宮の実力を軽視しない一方で
彼が初心を忘れ、
新しさに触れる事なく停滞している現状の事情を描き
だからこそ他の審査員には四宮の料理ほど響かなかった田所ちゃんの料理が沁みてしまったという顛末
彼自身の料理の腕前の表現にブレはない上にその先を目指すからこその欠陥を提示して
最終的にはその影響のお陰で認められ退学がなくなった・・・という見事なオチ
それもまた腰巾着を卒業して自分の全力を尽くしたからこそ得られた成果、
こういうネームの練りこみの上手さが遺憾なく発揮されてたのが素晴らしかったな、と

何より3巻までは印象最悪だった四宮がちゃんと読者から感情移入をされる
漂白されて好感を持てるキャラになったのは大きいですね
子供の時のエピソードや
元々は純粋で真っ直ぐだったあの日のまなざし
だけどトラブルがあって歪んでしまった思想、だからある程度は同情出来るし
だからこそここで矯正される事も必然的だし今後の為にも良かったな、と思えるし。
それに日向子との絡みも夫婦漫才みたいで面白いですしね(笑)。
無双主義の作品ではなく様々なキャラの成長を各々の形で描いてくれるのが爽快で読み心地良いなと
少なくとも創真を持ち上げるだけの作品・・・というイメージはこの巻を読めば消えてくれると思います
田所ちゃんの健気な成長に、四宮の頂からの前進、そして創真の初めて覚えた悔しさ―
後の展開にも繋がってくれるだろう成長要素が多くてワクワクもありましたね。
後半では田所ちゃんがしっかりと成長の成果を発揮してたり
清く正しい少年漫画へと作品自体も進化している印象です
その上水原さんのちょいエロリアクションがあったりマジカルキャベツがあったり初心も忘れてはいない
演出力、画力の凄味も合わさってかなり高品質の少年漫画を読んでいる感覚でした
本誌では表紙巻頭カラーを飾ったり人気路線驀進中でもあるので
何の心配もなく風呂敷が少しずつ畳まれていく様子を楽しんでいけるのが嬉しいですね


しっかしまあ、4巻の引きも相当気になる話を最後に持って来てますね
勿論これには理由があるんですけど、引きの鋭さに関して言えばかなりのものがあるなと
実際田所がメインで料理作れ、とかコインが一つも入らなかった回とかは本誌で相当の威力発揮してましたから
そういった先の展開を煽るセンスと「どうなるんだ?」ってドキドキを演出するセンスは高いですね
その上煽っただけではなくきちんと納得の行く展開をこなせる地力の高さもお気に入りです。
絵柄は最先端でネタ要素も多々ありますが、中身は古き良き少年漫画をしっかりと再現出来てる印象です。













あと、創真とえりなの絡みは相変わらずえりなの反応が面白くてクスクスしてしまいます
そんなえりなの実力もまたブレずに描かれています
えりなもまたそこから一歩前進するエピソードがいずれ描かれるんだろうな、と
作家に対して信頼が置けるようになった内容だったと思います。カバー裏の二人も笑った(笑)。





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