(なるべく)疑い得ない地点への着地を目指して

関西地方で司法修習生をやっています。このブログでは、趣味の音楽や本について語っていけたら良いなと思います。

『砂漠』伊坂幸太郎(実業之日本社)

2005-12-11 01:40:39 | 読書日記
近年若手作家の中では、最も注目されている一人である伊坂幸太郎の書き下ろし新作。

テーマは、政治的な話題、超能力、大学時代の青春、と伊坂幸太郎の神髄ここにあり、と呼べる王道なものが選ばれており、その期待に違わず、内容も素晴らしい。

筆者自身インタビューでは、それを否定していたものの、前作『魔王』が、現実の小泉政権をめぐる動きと、幸か不幸か(はっきり言えば、不幸の方、、)一致する部分が多くあり、話題がそこに集中し、純粋に小説として話に入り込み楽しむことが少なくとも私には困難だった。また、その作り込みの若干の甘さは福田和也によりやんわりと指摘されていた。

しかし、本作は伊坂ワールドを大いに堪能できるものであり、大学を今春卒業する私は、本作の登場人物が大学で繰り広げる四年間を自分に思わず重ね合わせもしたた。

又何かを失っても決して諦めることなく、自己を奮い立たせてなぞを解明していく、という伊坂作品に一貫して感じられるメッセージも、きわめて明確に伝わってきて読後感も良かった。

筆者には、『魔王』のような冒険的な作風も期待するが、本作のような作品も定期的に発表していってもらいたいものである。

AC/DCが同じような作風を長年続けているように、あるいは内田樹氏が同じような内容を異なる言い方で述べているように。


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBさせていただきます。 (流石奇屋ヒット)
2005-12-11 16:51:20
はじめまして。

まさに伊坂ワールドって感じでしたね。

読み始めはやや異種な感じがしましたが、読み終わると更に長編うまくなったんじゃない!と偉そうな感想を持ったりしました。

これからもよろしくお願いします。