国立オリンピック記念青少年総合センター にいどんブログ

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墨塗り教科書

2017-10-11 09:44:29 | 日記


 先日、教科書研究センターの教科書図書館で、「墨塗り教科書」の経緯について、調べてきました。今回、参考とした図書は「文部省諸作教科書墨ぬり教科書 解題・削除資料集」(編著者中村紀久二 芳文閣出版部刊)、「文部省著作戦後教科書 解説」(監修中村紀久二 大空社刊)です。


東書文庫所蔵教科書

 皆さんも、墨塗り教科書を映像等でご覧になったことがあるかと思いますが、そもそも墨塗りの箇所を、だれがどう指示したのかということが話題に上りました。私は、漫然とGHQが指示したものと思っていましたが、戦後直後、その基礎となる指示は、当時の文部省が出しているのです。

 まず、昭和20年8月28日付けで、文部次官から地方長官あてに、学校を平常の授業に戻すよう求めた「時局ノ変転二伴フ学校教育二関スル件」を発出します。これまで、勤労動員のため、停止していた授業の再開を、これの通牒で求めました。

 続いて、9月~10月にかけて、「時局ノ急変二伴フ学校教育二関スル件」「新日本建設ノ教育方針」「新教育方針中央講習会開催二関スル件」などを立て続けに発出、戦時教育令の廃止、学徒動員の解除、学校教練など軍事教育の廃止、集団疎開学童の復帰などを求めました。

 これらの中でも、教科書に関する取扱いは、特に喫緊の課題として認識されており、その根本的改訂を断行しなければならないとしながらも、差し当たり、訂正削除すべき部分を指示する旨を通知しています。

 具体的な削除の指示が出されたのは、9月20日の文部次官通牒「終戦二伴フ教科用図書取扱方二関スル件」においてです。通知によりますと、ー中等学校、青年学校及び国民学校に於ける教科用図書については、追って指示があるまで、現行教科用図書を使用することは差支えないが、戦争終結に関する詔書のご精神に鑑み、適当ならざる教材については、左記により、全部或いは部分的に削除し、または、取扱に慎重を期するようー、求めています。

 左記に掲げられた内容は、まず、削除・修正の基準です。ここでは、具体的な基準を、5点に分けて示しました。1国防軍備を強調する教材 2戦意高揚に関する教材 3国際の和親を妨げるおそれのある教材 4戦争終結に伴う現実の事態に著しく遊離し、または、今後における児童生徒の生活体験とこと甚だしく遠ざかる教材として価値を減損する教材 5その他承詔必謹(天皇の命令)の点に鑑み適当ならざる教材というものです。

 逆に、補完する場合も示されており、国体護持・道義確立に関する教材、文化国家の国民にふさわしき教材、農産増強に関する教材、国際平和に関する教材などを、適宜採取補充するように指示しました。

 続いて、国民学校後期用国語教科書で、削除・修正の対象となる教材を例示として掲げ、「海軍のにいさん」「にいさんの入営}(よみかた四)、「観艦式」「大演習」(初等科国語四)などを削除、「満州の冬」(よみかた四)、「広瀬中佐」(初等科国語四)などを注意を要する教材としています。

 次に出した通牒は、翌21年1月25日の「國民學校後期使用図書中ノ削除修正箇所の件」(教科書局長より地方長官)です。

 ここで、細部の修正まで求めるようになり、たとえば、物語の中で、カメが「バンザイ」と言う場面を、カメが「ウサギサン」と言うように修正させています。ちなみに前述の「海軍のにいさん」は、全文削除の対象となっています。これらの削除、修正は、GHQの承認を得て、実施されました。

 混乱の時期とはいえ、文部省が自らこのような動きをしたことに、私は、子どもの教育を担当する行政として、一種の誇りのようなものを感じます。これまでの教育に対する自戒の措置だったのかも知れません。皆さんは、どう感じられますか。(にいどん)



 
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