リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第24回 存在の証し ダム建設で途絶える前にもう一度会いたいと…

2016-02-28 14:29:33 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

390万年という歴史を生きてきたメコンオオナマス。ダム建設で絶滅の時が迫っている。偶然あったときから、ボクのメコン行きはその回数を増していた。もう一度、会いたい。しかし…

 

生存の証

リーはラオスで使われている簗(やな)の一種だ。細く長い木の幹で造られているのだが、10年ほど前に作り方が劇的に変わったという、竹を撚りロープにして木を縛ったのを、鉄の釘で固定するようになった。強度が増して、水位が高くなっても、リーは流されない。メコンオオナマズがメコンの分流 フーサホンで捕獲されるようになったのは、それ以後のことだ。

 メコンはラオス南部で最大30mの落差の無数の滝になっている。大型の魚などはその滝で阻まれ、移動ができないと思われてきた。ところが、2009年10月、私はフーサホンでメコンオオナマズがとれた時、偶然に居合わせた。フーサホンは、巨大魚も遡上できる魚の通り道であることが証明されたのだ。そのフーサホンでダム建設が始まろうとしていた。

フーサホンをメコンオオナマズが上る。それを示す貴重な標本は、地元政府が保管したはずなのだが、正式な記録は無く、捕獲した時の写真と、私が切り取ったヒレの先以外はどこかに消えてしまった。

フーサホンにダムが出来ると、メコン上流にある繁殖場所にたどり着けないメコンオオナマズは、絶滅してしまうだろう。誕生から390万年というその歴史は、途絶えようとしていた。

存在の証を残したい。生きた姿を見たい。その思いでフーサホンに通うことになった。

11年。到着すると10日前にとれたが、村人たちがすでに食べてしまっていた。12年。雨期の始めに洪水となり、リーが流れてその年の漁はできなかった。13年。二週間待って雨は降らず、ラオスを出国した日、雨期が始まった。14年。雨期の中、一ヶ月待ち続けたが、大魚はリーに掛かることは無かった。

島をあとにする朝、村長が5㍑ほどの容器を私に手渡してくれた。大きなナマズのなれ鮨だった。

 

 

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