日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 横山加賀介祐永 Sukenaga Katana

2017-10-31 | 
刀 横山加賀介祐永


刀 横山加賀介祐永天保十四年

 江戸期に大成した長舩鍛冶の作。戦国時代末期の天正年間に長舩一帯は大きな水害が起こって鍛冶業が潰えてしまった。わずかに残った祐定家の刀工がその命脈を保ち、江戸時代中期の横山上野大掾祐定の代に至って再び活性化を見せ始めた。だが時代は平和。優れた刀を製作しようにも大きな需要が見込めず、江戸後期になり、祐定門流の祐永によって備前刀に新たな作風が見出された。遠く鎌倉時代の互の目丁子とは風合いを異にする綺麗な互の目丁子の誕生である。
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脇差 手柄山正繁 Wakizashi Masashige

2017-10-30 | 脇差
脇差 手柄山正繁



脇差 手柄山正繁

正繁は宝暦十年姫路の生まれ。父手柄山氏繁に学び、白川藩松平定信に仕え江戸駿河台に居住した。この脇差は、寸法長めに身幅重ねが尋常、適度に反って中鋒の、打刀として片手で扱うにも、長めの脇差としても均整のとれた姿。地鉄は詰み澄んだ小板目鍛えで、地沸が微塵に付いて肌瑞々しく潤う。刃文は津田越前守助廣風の濤瀾刃を基調に、水晶玉のような丸い互の目、矢筈風の刃、尖り調子の刃を交えて高低広狭に変化し、粒の揃った小沸が付いて刃縁明るく、小形の沸筋、砂流しが掛かる。帽子もよく沸付いて小丸に返る。助廣と同じ香包鑢で仕立てられた茎は保存優れ、銘字が鑚強く刻されている。刃長一尺七寸強、反り二分半。
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脇差 手柄山正繁 Masashige Wakizashi

2017-10-28 | 脇差
脇差 手柄山正繁


脇差 手柄山正繁

 綺麗な互ノ目乱刃の脇差。永貞の刀と同様に、棟の肉を削いで実用性を追求している。一尺五寸弱。正繁は綺麗な互の目、濤瀾乱刃などを焼いて人気が高い。身幅が広くしっかりとした造り込みで、腰樋が活きている。地鉄は小板目肌が良く詰んでおり、子細に観察すると、繊細な地景が均質に交じっていることが判る。刃文は小沸出来。刃中に淡い沸足が入り組み、相州伝とは言え、古作のそれとは異なる、諸要素が綺麗に揃った出来となっている。古刀にはないこの点が江戸期の刀の大きな魅力であろう。
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刀 永貞 Nagasada Katana

2017-10-27 | 
刀 永貞


刀 永貞

江戸時代前期以降、新々刀期にかけての綺麗な刃文を紹介している。江戸時代に進化が進んで良く詰んだ小板目鍛えの地鉄が一般的になると、刀工は個性を見出すために刃文構成に目を向けたようだ。三品派の丹波守吉道が川の流れのような刃文を生み出し、越前守助廣が濤瀾乱刃を生み、霧の立ち込めたような沸の深い互の目を真改が創作した。新々刀期の刀工は、それらを受けて独創を加味した。あるいは再び古作への回帰を狙った刀工(正秀のように)の背景にも、新刀期の綺麗な刃文構成があった。いずれも、刃文構成は偶然の要素を多分に含むところから明確な創造へと移り変わった。この刀は、三寸ほど磨り上げられてもなお二尺四寸弱。かなり長い刀であった。現在は無銘。元先の身幅が広く、鋒は中鋒延び調子で、南北朝頃の刀に間々みられる二筋樋が掻かれている。地鉄は板目が流れて柾がかり、良く詰んで地景が目立つ。地肌は刃中に及び、互の目乱の刃境がほつれ掛かり、その一部が金線、沸筋、砂流しとなっている。帽子はわずかに乱れ、掃き掛けを伴い返る。刃沸の明るい出来である。
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刀 御勝山永貞 Nagasada Katana

2017-10-24 | 
刀 御勝山永貞


刀 御勝山永貞

 永貞は幕末の美濃の刀工。美濃刀工とは言え、江戸時代も降ると美濃伝は薄れてくる。この工も南北朝時代の大太刀を磨り上げたような元先の身幅が広く、がっちりとした陰影の刀を製作している。この刀も、鋒が大きく伸びて物打が張り、大薙刀を磨り上げたように腰元に樋を施し、その上から鋒までも棟の肉を削いで刃の抜けを良くしている。江戸時代の刀工の多くが、古刀期の五箇伝には収まらない、伝法を超えて融合させたような作風に至っている。本作も相州伝が下地にあるが、備前伝風の互の目丁子も窺え、相伝備前かというとそれとも異なる、綺麗な地鉄に綺麗に揃った刃文を焼いた、総体に綺麗な出来となっている。
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脇差 出雲長信文久二年 Naganobu Wakizashi

2017-10-21 | 脇差
脇差 出雲長信文久二年


脇差 出雲長信文久二年

 一尺二寸強、わずかに先反りの付いた鵜首造の脇差。腰樋を掻いており、この種の脇差や短刀は操作性を追求した武器の一つであることが良く判る。地鉄は良く詰んだ小板目肌。刃文は互の目乱。淡く刃中に足が流れ込み、帽子は沸で乱れて浅く返る。長信は冬廣の名跡を継ぐも、江戸に出て長運斎綱俊に作刀を学んでいる。それゆえに備前伝を主体とした作刀だ。綱俊門流の工はいずれも斬れ味が鋭いことで良く知られている。長信もその通り、斬れ味で名を上げた。
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刀 長信 Naganobu Katana

2017-10-20 | 
刀 長信


刀 長信

二尺二寸五分、樋を掻いて重量を軽減した扱い易い刀。造り込みの基礎は南北朝時代にあるが、地鉄は小板目肌が良く詰んでおり、微妙に質のことなく鉄を交えたものであろう、綺麗に肌目が浮かび上がって見える江戸後期のもの。刃文が互の目丁子で、備前伝。焼頭に高低抑揚があり、足はやや下方に射し込んでいる。匂口柔らかく、明るく冴えている。
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刀 雲州藩高橋長信 Naganobu Katana

2017-10-19 | 
刀 雲州藩高橋長信


刀 雲州藩高橋長信文久二年

 幕末を代表する刀工の一人、高橋長信は冬廣の末孫に学んで冬廣家を継いだ鍛冶、即ち冬廣流の刀工になるが。作風は、南北朝時代の大太刀を磨り上げたような、元先の身幅が広く、鋒延びて刃先鋭く、互の目、大互の目などを焼くを特徴とした。この刀は、刃長二尺二寸六分、反り五分、細やかに詰んだ小板目鍛えに地沸が厚く付き、冴え冴えとした地刃。沸強く深く、刃境から刃先に向かって沸が淡く溶け込み、刃中は透明感がある。遠祖の相州風を感じさせない、江戸期の清新さに溢れている。
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刀 冬廣作 Fuyuhiro Katana

2017-10-18 | 
刀 冬廣作


刀 冬廣作

 これも藤左衛門尉冬廣。冬廣の初代は若狭に移住した相州次廣の子と伝え、相州に学んだ後に故地若狭に戻って本拠としており、その門流はいずれも戦国武将の信頼高く、伯耆、備前、備後、出雲で活躍、新刀期においても山陰から山陽にかけての各地で根を張るように技術を定着させ、江戸末期まで栄えている。この刀は、常に比して元先の身幅が広く中鋒延びて張りがあり、鎬が高く仕立てられて堂々とした造り込み。板目鍛えの肌間が小板目状に密に詰んで極上の質感を呈し、肌目に伴って繊細な地景が縫い、微細な地沸が全面を覆って淡い映り状の動感のある景色が展開している。刃文は湾れに穏やかな互の目を交え、帽子はごく浅く乱れて丸く返る。匂口の締まった焼刃は冴え冴えとして明るく、地中の地景が刃境を越えてほつれを伴う金線となり、互の目に生じた長短の足を切って流れ、匂が立ち込めて明るい刃中にも幾層もの金線と匂の砂流しが元幅から先まで断続している。□
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刀 冬廣 Fuyuhiro Katana

2017-10-16 | その他
刀 冬廣


刀 冬廣

 大磨上無銘の冬廣と極められている刀。板目が強く現れた地鉄は、地沸が付いて地景が肌目に沿って入、肌立ち、湯走りが掛かり、室町時代の相州伝の特徴が良く現れている。刃文は湾れに互の目交じりで、帽子は強く掃き掛けてわずかに返る。互の目に尖り調子のところが窺え、これが矢筈風となり、角刃となるのが室町期の相州伝の特徴の一つ。
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刀 雲州住冬廣作 Fuyuhiro Katana

2017-10-14 | 
刀 雲州住冬廣作


刀 雲州住冬廣作

 二尺二寸強、使いやすい寸法だ。反り深く、腰に彫物が映えている。地鉄は地景を伴う板目が強く現れ、地沸が付き湯走りが掛かって凄みがある。相州地鉄だ。刃文は尖刃交じりの互の目乱刃で、刃境に小沸が付いて明るく冴え、帽子は掃き掛ける。肌目に沿った細い沸筋が刃中を走り、淡い砂流が掛かり、互の目の頭がわずかに割れて矢筈風となっている。
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短刀 冬廣作 Fuyuhiro Tanto

2017-10-11 | 短刀
短刀 冬廣作


短刀 冬廣作

 藤左衛門冬廣の七寸三分の短刀。身幅を控えて引き締まった印象のある出来。板目鍛えの地鉄は、地景で流れるような肌が現れ、総体に良く詰んで潤い感がある。小沸出来の刃文は湾れの所々が乱れた構成で、刃境がほつれ、島刃が入り、湯走り掛かり、砂流し沸筋、金線が入る。帽子は掃き掛けを伴い浅く湾れて深く返る。互の目が顕著ではない湾れや乱刃出来の、相州振りが示されている。


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刀 冬廣 Fuyuhiro Katana

2017-10-10 | その他
刀 冬廣


刀 冬廣

 二尺四寸半ほどの腰反り深い太刀のような出来。八幡大菩薩の仏神名が彫刻されている。古風な太刀姿であり、馬上から打ち下ろすと言われるような使い方であったろうと思う。地鉄は小板目肌に板目が地景を伴って浮かび上がる出来。刃文は沸の強い互の目が複雑に乱れた相州振りの顕著な構成。匂口明るく、刃境に小沸が付き冴え、刃中への小足と共に地中への小足様の働きも窺える。無銘冬廣と極められた作で、変化に富んで鑑賞要素の多い、楽しめる作となっている。
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刀 冬廣 Fuyuhiro Katana

2017-10-07 | 
刀 冬廣


刀 冬廣

 大和鍛冶金房派が大和古伝に新たな作風を採り入れたように、室町時代も降ってくると、各地の刀工が古法に新たな作風を加味した刀が製作するようになる。新刀期の到来間近といったところ。いつの時代においても少なからず刀工の移動があるものだが、戦国時代には刀匠が各地の武将の需で移住しており、移った先の伝法を採り入れてゆくのであろうか、そのような動向は面白いと思う。以前に美濃刀工の活躍を説明したこともある。冬広は、そもそもは相州鍛冶。若狭国に移住して栄え、さらに求められて西国へと活躍の場を広げた。
 本作は細直刃出来の刀。輪反り深い太刀風の造り込み。地鉄は杢を交えた板目肌が小板目肌の中に肌立ち、焼刃に迫るように映りが立つ。細直刃はわずかに湾れ、帽子も端正に丸みを帯びて浅く返る。冬広というと相州色の現れた互の目乱刃を思い浮かべるが、本作は特別の注文であろうか、端正な直刃。上身を見ただけでは冬廣が思い浮かばない。
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刀 金房左衛門尉政定 Masasada Katana

2017-10-06 | 
刀 金房左衛門尉政定


刀 金房左衛門尉政定

 南北朝時代大太刀を磨り上げたような姿格好。戦国時代末期の大和金房派に間々みられる造り込み。この刀は特に身幅がたっぷりとし、先反りと共に物打辺りが張り、大鋒も加わって迫力がある。地鉄は板目肌が小模様に詰んでおり、地沸が付き、上部に施された皆焼調の焼刃による地沸が付き、その中に湯走り沸筋が流れる。刃文は匂口の締まった互の目丁子。特に刃境が複雑に乱れ、深い焼からなる激しい景観が特徴的。大和には、古調な大和物そのままを踏襲した末手掻と呼ばれる室町時代の手掻派もいるのだが、金房派には、古鍛法を伝えながら、直刃ではなく互の目丁子を焼いた作が多いというのは面白い。
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