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リヴィーばあちゃん 「その1」

2017-02-21 08:36:33 | 随筆
リヴィー (オリヴィアの愛称) ばあちゃんから電話が来ない。 いつも月に一度は連絡があるのに、最後にパーマをかけに彼女の家へ行ってから2ヶ月は経つ。 こちらから電話をかけてもよいのだが、できればそうしたくない。 リヴィーは次女のケイト (独身、53歳)と同居しているが、私はケイトのことがあまり好きではない。 いつ顔を合わせても不機嫌そうで、母親のリヴィーに冷たい。 80を過ぎた母親にもっと優しくしてあげればよいのに、と思う事が多々ある。 

私は30年近く美容師をやった。 最後に働いた町の美容院でオーナーとケンカをしてやめてから、出張サーヴィスをするようになり、リヴィーはその得意客のうちの一人だ。 自宅でのピアノ教室が忙しくなってから、美容師は止めたが、彼女からの注文だけは受け続けている。 

私が働いていた美容院に、娘と一緒に初めて来店した彼女は、今の私と同じくらいの年だった。 真っ白になった髪に自分でヘアカラーを続けていたらしく、バリバリに痛んでおり、背中まで伸ばしたそれはリヴィーを老けて見えさせた。

「思い切って短くしたらいかがですか? 若く見えますよ。」

私の提案を承諾した彼女はイメージチェンジをし、たいそう気に入ってくれた。 以来、20年近く私達は連絡を取り続けている。 リヴィーは誰にでも優しく、よく笑う。 高血圧なので塩辛いものは避けたほうがよいのに、おいしそうにしょっぱいものをもぐもぐと食べる。 私のことを 「ベイビー」 と呼び、訪問するたびに歓迎してくれる。 オカメインコの「ザック」を溺愛している。 私を見るといつもギーギーといやな泣き声をだし、つつこうとするこの鳥に、口移しでクラッカーを食べさせたりするのだ。 

初めて彼女の家を訪問した時に、美しい少女の写真が目に飛び込んできた。 ハリウッド女優のような輝かしさ。 

「まぁ、きれいな人ね。 誰?」
「誰だと思う?」
「...、 リヴィー! あなたなの?!」
「そ、17歳の時。」

空を見上げるように、あごを上げた写真を私はしばらく見つめた。 汚れなき美を、ありったけ凝縮させたような美しさだ。 

「なんてきれいなの...。」
「うふふ。」

リヴィーばあちゃんは私が仕事をしている間、昔話をするのが好きだ。 フィリピンの裕福な家に生まれ、乳母や、お手伝いさんたちに育てられた彼女がどうしてアメリカで暮らすようになったか、少しづつ話してくれた。

[リヴィーばあちゃんの話]

今考えると、貧しい人たちが多いフィリピンで、本当に贅沢な暮らしをしていたもんだわ。 両親はやさしかったし、6人の兄弟、姉妹たちとも皆仲がよかった。 今残っているのは私と、カリフォルニアの弟だけ。 あ、そこはあんまり短く切らないでね。 

何の不自由もなく幸せだった。 私が10歳の時に戦争が始まるまではね。 食糧難で食べるものがなくなってくると、雑草をむしって食べたりしたわ。 カエルなんてご馳走だったのよ。 日本の陸軍がやってきて、隠しておいたお米や芋を奪っていかれた時は、おなかが空きすぎて泣く力もなかった。 その時の栄養不足で歯をやられ、総入れ歯になっちゃったけどね。 あなたに当てこすりをするつもりじゃないから、怒らないで聞いてね。 日本軍には本当に苦しめられた。 私は、父や兄たちに守られたけど、私の友達は何人も彼らに陵辱されたわ。 夜中にドアを蹴破って娘達を連れて行くのよ。 恐かった。

戦争がようやく終わった時には、栄養失調でみんなガリガリだったわ。 両親と兄たちは死に物狂いで私達に食べさせるため働いて、その頃私は高校生になっていたのよ。 家はぼろぼろ、使用人たちも殺されたり、逃げたりで、さんざんだったけど我が家はみんな無事だった。 そんな時にラリーにであったの。 そう、ジャズミンとケイトの父親よ。 ハンサムでかっこよかったわ。 父の仕事仲間の息子でね。 金持ちの御曹司だった。 私はひと目で好きになったわ。 でもこの人、実はとんでもない男だったのよ。

リヴィーばあちゃん 「その2」 に続く。 
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2 コメント

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Unknown (マコ)
2017-02-22 09:00:26
楽しみに次回を待ってます。
「その2」 (フィー)
2017-02-22 09:27:50
ありがとうございます。 出来るだけ早くお届けします。

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