ここまで2回にわたってぶら下がり取材について、過去の経緯を中心に説明してきた。
はっきり言って私はこのぶら下がり取材というスタイルや一日の2回も国家のトップが記者団の前でコメントを出すという頻度については、問題が多いと考えている。
アメリカのオバマ大統領が記者会見するのは1月に1回程度、他は自分である程度コントロールできるインターネットでの情報発信を行っている。イギリスのキャメロン現首相のやり方は分からないが、ブレア元首相の場合は、やはり会見は多くても月1回程度、後は自分が好きな政治番組をセレクトして出演していた。もちろん、アメリカもイギリスも報道官がおり、毎日の情報発信や政府の公式ステートメントは報道官を通じて発表されている。
日本の総理大臣だけが、本人が1日2回記者団の前で質問に答え、そのうち1回はテレビカメラが回っているという状態になっていた。毎日2回も記者団とやり取りしなければならないというのは、内外の諸課題の対応で多忙きわめる総理大臣にとっては事前の準備も含めて大変な負荷である。
また、このぶら下がり取材を行う首相官邸担当記者は入社数年目の若い記者が多い。一国のトップと熟達の政治記者の丁々発止のやり取りというよりは、狙ったコメントを取るための単純なやり取りになる傾向がある。たとえば「今日、株価が下がりましたが、『受け止め』は?」といった質問が繰り返される。『受け止め』などというのは完全にマスコミ業界用語だが、こういうニュース用コメント取りの質問がまかり通ってきた。時には失礼な態度での質問や、同じ質問が反復されたりして、総理がイライラして「さっきも答えたでしょう」などと言おうものなら、その映像がニュースで流れてしまう。
また国益にかかわる深刻な問題点もある。例えば微妙な外交問題などは、国のトップとしてコメントしない方が国益にかなうという場面が多々ある。関係国が外務省の課長クラスや報道官によるコメントで済ましている案件であっても、毎日ぶら下がり取材をやっている限りは、日本だけが総理大臣がコメントしなければならないという事態になってしまう。
安倍内閣が発足する時に、こういった総理に対するぶら下がり取材の問題点を関係者で議論した。いきなりぶら下がり取材を止めるのは反発が想定されたので、当面ぶら下がり取材を1日1回に減らしながら、記者クラブと協議して、早期にぶら下がり取材を止め、総理の情報発信の場は週1回程度の着席スタイルの定例記者会見にし、日々の情報発信は官房長官の記者会見と首相補佐官の会見で実施していこうという方針で臨んだ。
しかし、このことが記者クラブ側の大反発を受け、安倍内閣とメディアの大きな揉め事になっていった。(続く)











