大同2年(807)、弘法大師空海が桂川に沿って修善寺を訪れました。
清流の桂川に少年と弱った身体の中年の男性の姿が見えました。どうやら少年は、病に疲れた父親の身体を清流の水で洗っているようです。
弘法大師は少年のひたむきな親孝行に感心しました。そこで、手に持っていた独鈷杵で桂川の中の岩を打ち砕きました。
するとどうでしょう、独鈷杵が岩を砕いた場所から、熱い湯が噴出してきたのです。
弘法大師は少年に、この湧き出た霊泉こそ疾病の治療に有効であるということを説きました。少年は大師の言われるまま父親を霊泉に浸け、現代で言う湯治療法を始めました。
やがて父の病は完治することとなり、これより修善寺に湯治療養が広まったと伝えられます。そしてこの湯こそが、修善寺温泉発祥の温泉と言われると同時に伊豆最古の温泉とも呼ばれる由縁なのです。
現在の独鈷の湯は桂川のほぼ中央にあります。
岩を土台として浴槽の位置を水の流れよりかなり高い位置にしています。そのため観光客はそのまま川岸から橋を渡って、気軽に独鈷の湯へ行くことが出来るようになっています。
しかし、かさ上げされている状態のため、大雨のときなどは川の流れが阻害される要因にもなっていることから、静岡県では現在地から左岸下流の河川敷に移動させるという計画もあるそうです。
この独鈷の湯を下流から見て右側に修禅寺、左に独鈷の湯公園、さらに先に指月殿(⇒ 指月殿を骨で聴く)、上流方向にいぼ石(⇒ いぼ石を骨で聴く)や桂谷八十八ヶ所(⇒ 桂谷遍路を骨で聴く)、阿字苑(⇒ 阿字苑を骨で聴く)などがあります。
まさに盛りだくさんな修善寺です。
ところで独鈷杵とな何かというと、金剛杵・ヴァジュラ (वज्र [vajra])の一種で、密教法具です。これはある種の象徴されたもので、古代インドの短剣状の武器ヴァジュラに由来するもののようです。仏の教えが煩悩を滅ぼして菩提心を表現しているそうです。
その中で独鈷杵は、槍状の刃が柄の上下に1つずつ付いたものののことをいいます。
密教の神秘的な世界が具現化されて温泉の伝説になるというのは、弘法大師ならではといえるかもしれません。本質が具現化されたことにより庶民への伝達が容易になり、それが口承し続けることでその地のアイデンティティも確立されていくのかもしれません。
う~む、奥が深いものです。
この具現化というものの最たるものは、体験的な要素かもしれません。温泉療法もいわば効果・効能に弘法大師の法力伝説が加わり、しっかりと根付いた可能性があります。
体験的要素は骨伝導にも通じ、百のコトバより一回の体験でそのすごさが伝わります。
⇒ 骨伝導の体験とは
さらにいえば経営にもいえるかもしれません。営業利益を上げるノウハウをいくら学んでもそれは所詮机上の空論かもしれません。実践的に利益アップの方法は体験して初めて分かるものかもしれません。
⇒ 一瞬にして利益を上げる方法
とにかく、伊豆の修善寺は様々なことを学ばせてくれます。
恐るべし、弘法大師!
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