水晶の夜 ~KRISTALL NACHT~

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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

2010-04-27 17:57:27 | 映画
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」2008年/監督若松孝二/日本

「イデオロギーが社会や国を動かしかけた時代、学生運動の一部、過激分子から派生した極左暴力、そこから生み出された連合赤軍の若者が何に突き動かされ、どのような葛藤を経てあさま山荘事件へと至っていったのか、そして自滅したのか・・・。」
あらすじはwikiより引用させていただきました。

私はこの時代よりひと足遅れて生まれた世代ですので、当時のことは知りません。
ただ、幼少の頃にテレビで流れていたニュースには、こんな感じの暗い話題がたくさんあったように思います。
やがて私も大人になり、色々な社会の軋轢なども経験し、この世にはたくさんの理不尽が存在することを知りました。
そして、その理不尽な社会に対して、たくさんの人々が、こんなにもアツくなった時代があったということも・・・。

だから尚更、こういう形で終焉になってしまった経緯を知りたくて、過激派が横行していた当時のことを書いてある本を読みました。気づいたときは、連合・日本赤軍などの主要人物の名前をいくつも覚えてました。
でも、いくら本を読んでみたところで、この事件にまでいたった本当の理由というのが、今の私にはまだ理解が足りないかなと、ずっと思っていました。

映画の冒頭部分は、その時代に何が起きたのか、当時の映像を交えながらナレーション(原田芳雄さんでした)を入れ、わかりやすく説明してくれます。
もう一度おさらいするつもりで、食い入るように見ました。
おなじみの登場人物が名前入りでどんどん出てきます。
結構、役者さんたちも、髪型とか雰囲気とかを当人に似せている工夫が感じられました。

映画の中頃から、追い詰められる赤軍派が、軍事訓練を行っていた山岳ベースでのリンチ事件を起こす経緯が描かれます。
「総括」という言葉が多く出てきます。それはメンバーが、メンバーに対して政治的な反省を迫ることらしいのですが。
最初は言葉で紡がれていた総括も、それでは本当の総括になっていないとの判断で、暴力にまで発展します。口で言ってもわからなければ体でわからせるということの応用でしょうか・・・。このへんがいまだに理解に苦しみますけども。
あとで知ったことによると、この時点で、公安のスパイが潜り込んでいたとかいう噂もあって、内部では疑心暗鬼な雰囲気が漂っていたのかもしれません。
映画ではそのへんの説明が足りなかった気がするので、事件を知らない人からすると、ちょっと分かりづらかった面もあるかと。

総括の理由付けですが。
同棲していた女性を逃がし、その女性がメンバーのことをしゃべってしまったからとか、自分たちの命に関わったりする理由も最初はあったりしましたけれど。
キスをしていた恋人同士のメンバーとか(そのくせ、リーダーたちは男女関係を結んでいます)、鏡を見ていた女性メンバーだとか、リーダーの「目が可愛い」と言った女性メンバーとか、そんな革命とはほど遠いと思われることで総括されていくメンバーがあとから増えてきたのがとても気になります。
いや、彼らにとっては、そういうことがそもそも反革命的なのか。
あくまでもストイックに。ということなんでしょうか?
中には、見るからに嫉妬が原因で殺された人もいました。妊婦も子供もろともです。悲惨です。


途中から山岳ベースに参加した坂井真紀さん演じる遠山さんと、重信さんの別れ・・・あとで思うとこれが今生の別れになってしまったのですね。しかも遠山さんは、お化粧をしていたとか、髪を伸ばしているとか、主に女性らしさを総括され、挙げ句は自分の顔を自分で殴らされ、無惨な顔で、正気を失いながら死んでいった・・・。正視に耐えない場面ですが、目が離せなかった。坂井さんの演技がとても良かったです。
良かったといえば、永田さん役の並木愛枝さん。見事にハマってて怖いくらいでした。

あさま山荘で捕まった加藤兄弟は二人だったけど、実はもう一人いて三兄弟。
一番上のお兄さんは、前述の、恋人とキスをしていたという理由で総括された本人です。そのとき弟二人も、お兄さんを殴らされました。苦しそうな顔で殴る、二人の弟の顔が印象的でした。
やらなければやられるという重い雰囲気・・・これが集団狂気というものなのですね。
彼らが置かれた状況というのは狭くて苦しくて、進むことも戻ることさえできない。
一人一人が、間違えているこの総括を止めることも出来たはずだと言ってしまうことはたやすいですが、そういう状況におかれたら、私自身もビビってしまってみんなと同じようにしていたかもしれません。
それ以前に、おかしくなってしまうかもしれないけれど・・・。
それほどまでに私は、この映画にのまれました。

映画は最後に、あさま山荘での攻防を描きます。
制作費がそんなになかったようで、撮影は若松監督の別荘を壊しながら行われたとか。
攻防も、山荘の内側だけで済ませ、最後の突入時に機動隊の姿が5、6人くらいしか見えないという思い切った撮影法でした。あくまで「あさま山荘への道程」を描く映画なので、それもいいかと。

森・永田リーダーが呆気なく逮捕され、取り残された9人のメンバーたちは、4人と5人にわかれ、別行動をとります。このとき、4人組みの方は逮捕され(映画では描かれなかったけど山小屋生活でしみついた悪臭が原因だそうです)、残りの5人組は空からも陸からも追い詰められ、たどり着いたあさま山荘で山荘の奥さんを人質に立てこもります。
そこでも、クッキーをつまみ食いしたとかでメンバーが自己批判を迫られ、こんな状況でもそんなことを・・・と、見ていて正直ちょっと苛立ちました。

「全力であなたを守りぬきます」
機動隊の突入が行われる日、自分たちが原因であるのに、人質の奥さんにこんな台詞を言ってしまうところがまた何とも言えません。ちょっとカッコイイと思ってしまった自分はまだ青いかもしれません。
メンバーたちは、奥さんに対してあくまでも真摯的で、警察の側にも自分たちの側にもつかない、中立の立場を要求。
奥さんも頭の良い人で、私を裁判に呼ばないでくださいときっぱり言い放ちます。
この映画は、あさま山荘事件での当事者から聞いた台詞を採用しているらしいので、本当にこんなやりとりが行われていたのでしょう。

「落とし前なんかつくはずないじゃないか。あんなの革命じゃない。みんな勇気がなかっただけじゃないか!」
総括で死んでいった仲間の落とし前をつけるというメンバーに対して、最年少の加藤末弟が放った言葉は唯一のフィクションだったようですけれど、あの時代に生きた監督自身にも向けられていることだと思うし、或いはあの時代に生きたかもしれない私にも響いてくる台詞でした。

もとは「国を変えたい」という純粋な気持ちから起きた事件。暗く、重すぎて、現代を生きる私には持ちきれないものですが。
歴史は繰り返すと言いますから、こういう時代があったのだということを、もっとたくさんの人たちに見てもらいたい実録映画だと思いました。


以前にも貼った気がしますが、予告編を貼っておきます。




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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人に人生あり、なんですが… (てんてけ)
2010-05-02 22:22:10
はじめまして。
連合赤軍が駄目だったのは、世の中を敵と味方の二つにしか見なかったからであって、
奥さんが何故「私を裁判に呼ばないでください」と言ったのか、全く考えなかったんですよ。
映画の監督もそのことを知っていたとは思うのですが、さすがに取り入れることは出来なかったのでしょう。
「国を変えたい」という思いなんて、奥さんの救いにはならなかったんですよ。そしてそれは現代人にも、そうです。
てんてけさん、はじめまして♪ (ねこちぐら)
2010-05-03 00:32:19
まずは、こんな長ったらしい文章を読んでくださり、その上コメントまでいただいて、ありがとうございました!

連合赤軍を肯定しているかいないかはともかく、この映画は、連合赤軍側から見たもので、敵味方中間という三つ巴の描き方はしてませんからね。
そういう方面からいくと、奥さんの台詞から生まれてくるものが理解出来るし、連合赤軍が失敗したわけが分かるような気がします。

国を変えたいという思いは救いにならない・・・。
その通りかもしれませんね。
すべての人に当てはまるとは限らないけれど、今の現状を維持している現代においては尚更、それを考えることが救いにつながると思う人は少ないでしょうね。
生きていくのに、多少の不満はあるにしても・・・。
てんてけさんへ (ねこちぐら)
2010-05-03 13:56:44
貴重なお時間を割いてまでの記事のご提示、ありがとうございました。
ご希望の通り、削除させていただきましたけど、リンク先の方はブクマしましたので、他の記事についてもあとでじっくり読ませていただきますね。

人質の奥さんの件、初耳でした。
警察に対しては、呆れて物が言えませんね。
部外者が憶測で判断することはいけないことなのかもしれないけど、これはちょっと酷いなぁ・・・。

確かに人を変えるというのは難しい、或いは不可能、個人を変えられないのであれば、国を変えることなんて尚更出来るわけがありませんよ。

でもそれと同時に、そうと知ってても変えたいと思ってしまう気持ちも、正直なところ、私にはとてもよく理解できます。
それがてんてけさんのおっしゃる「すべての人の心にある“変えられないもの”」ということになるんでしょうね・・・。
結局のところ、そういうことのぶつかり合いが事件に繋がったのかもしれませんね。