ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして


学校の 事件簿 <1>

2017-07-29 19:47:06 | 教育
 教職の終着として校長になったものの、
度重なる校内事故・事件により、
定年を前に、学校を去った先輩・同僚を何人も見た。

 学校は、子ども達と教職員が共に生活し、
学習活動をする場である。
 どんなに注意をはらっても、
起こってしまう事件・事故が、必ずあると言っていい。

 なのに、私は、大きな学校事故に遭うことがなかった。
ただただ、幸運に感謝している。

 とは言っても、時には頭を痛めたり、
心臓のドキドキがなかなか止まらなかったり、
後々笑い話になったりする出来事は、数多くあった。

 その中から、もう20年も前になるが、
教頭時代のいくつかを記す。

 ①
 まずは笑ってしまう話から。

 北海道の多くの小学校は、今月25日で1学期が終わった。
その日、テレビニュースで、
札幌の小学校での終業式とその後の教室での様子が、
放映されていた。

 若干のなつかしさと共に、
教頭1年目に経験した、同様のシーンを思い出した。

 私の勤務校に、教育委員会を通して、
テレビ取材の依頼があった。
 2学期の終業式と通知表を渡す教室の場面を、
テレビニュースにしたいと言うことだった。
 特別の準備も必要なかったので、その取材を受け入れた。

 東京都内の小中学校が、一斉に冬休みに入る前日の朝、
学校には、テレビ局数社のカメラとスタッフの姿があった。

 テレビカメラを前にして、
子ども達も教職員も、いつもよりやや緊張気味の終業式になった。
 その後、2年生の教室で、
冬休み中の指導と、通知表を渡す場面がカメラに収められる。

 帰り際、テレビ局のスタッフに尋ねると、
一番早い時間にこのニュースが流れるのは、
午前11時半頃だと言う。

 その時間は、ちょうど子ども達が下校している真っ最中になる。
急きょ、時間を遅らせ、そのニュースを教室で見てから、
下校することにした。

 11時半が近づき、全学年の教室で、
子ども達が一斉にテレビに注目した。
 私も、職員室のテレビをつけ、
今か今かとそのニュースの始まりを待った。

 その時だ。
目の前の電話が鳴った。
 急いで受話器を取った。

 なんと、テレビ局からだった。
申し訳なさそうな、弱々しい声だった。

 「実は、30分程前に、首都高速でトラックと乗用車による、
大きな交通事故がありまして、
そのニュースを取り上げることになりました。
 そのため、今朝、伺った終業式については、
カットすることになりまして・・・。
どうも、すみません。」

 「子ども達が、今か今かと待ってます。
何とかなりませんか。」
 まさか、そうは言えなかった。

「ご連絡、ありがとうございました。」
重たい気持ちで、私は受話器を置いた。

 そして、その旨を校長先生に伝えるや否や、
校内放送のマイクを握った。

 「連絡します。ただ今、テレビ局から連絡がありました。
首都高速で大きな交通事故があり、
この時間のニュースでは、終業式の様子は取り上げないそうです。
残念ですが、準備ができた学級から下校してください。」
 子ども達の落胆の声が、職員室まで聞こえてきた。

 その日、テレビ各局は、
終日、交通事故のニュースを取り上げた。
 終業式の様子は流れることがなかった。
まさに『マボロシー!』だった。

 ②
 子ども達が下校した夕暮れ時だった。
確か、12月中旬だったと思う。
曇り空の寒い日だ。

 消防車のサイレンが、次第に近づいてくるのが気になった。
学校にはさほど近くない所で、
2,3台のサイレンが続いていた。

 「学区内の火災ではないだろうか。」
主事さんに、自転車で走ってもらった。
 しばらくして戻った主事さんからは、
学区から少し外れた空き地での、
ボヤ騒ぎだと報告があった。
 ホッとした。

 ところが、このボヤ騒ぎが、思わぬ展開をみせた。

 それから2,3日して、
突然、消防署の方が3名、校長を訪ねてきた。
 教頭の私も同席した。
署の方の話は、こうだ。

 ーーー 
 先日、学区はずれの空き地で、不審火があった。
乾燥注意報が出ており、その上若干風も強い日だった。
 もしも発見と通報が遅れていたら、
民家への延焼も考えられた。

 ところが、たまたまその空き地を通りがかった3年生A君が、
枯れ草が燃えていることに気づき、
近くの家に知らせたのだ。
 それで、大事にならずに済んだ。
 ーーー

 と言うわけで、消防署では、第一発見者のA君に、
感謝状を贈ろうと計画しているとのことだった。

 校長も私も明るい気持ちになった。
翌日には、A君を校長室に呼び、
担任と一緒に、その迅速な通報を褒めたたえた。
 A君は、若干はにかみながらも、嬉しそうだった。

 そして、半月後だ。
消防署長から感謝状の贈呈を受ける日が迫っていた。
 贈呈式には、両親と共に、校長と担任が招かれていた。

 感謝状を頂いた翌日には、全校朝会を行い、
全児童でお祝いをしてあげようと計画もしていた。

 ところが、その前日の午後のことだ。
消防署から、私に電話連絡があった。

 A君への感謝状の贈呈は取りやめになったと言うのだ。
突然の展開に、私は言葉を失った。

 消防署は、あの時の不審火について調べを続けていた。
その結果、放火であることが分かった。
 しかも、その放火は子どもの火遊びだった。
それをしたのは、なんとA君だったのだ。

 空き地から火が上がる前、
そこで枯れ草を集めて遊んでいるA君を見た方がいた。
 さらに、A君の家の机からは、
不審火近くにあった使い捨てライターと同じものが、
数個みつかった。

 そこで、署員がA君にもう一度聞き取りを行った。
その結果、A君が集めた枯れ草に、
ライターで火をつけたことが分かった。
 そして、火の勢いが強くなり、怖くなって、
近所の家へ駆け込んだと言うのだ。

 きっと小さな興味が引き起こした事件なのだろう。
でも、感謝状贈呈前に、真相が明らかになってよかった。
 もしも、これが反対だったなら、
ことはもっと大事になっていたに違いない。
                      ≪つづく≫




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