社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

朝日新聞 天声人語

2014-05-05 03:30:03 | 日記
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 きのうの「みどりの日」をもって春は終わり、きょう「こどもの日」から夏が始まる。暦の上のことだが、伸びざかりの命を祝う日にふさわしい。風薫る季節、タケノコがぐんぐん若竹に育っていくときだ。
 タケノコに限らず若い緑には新たな息吹がある。こどもの日の第1回を祝ったのは1949(昭和24)年だった。全国で270万人が産声をあげた年で、奇(く)しくもベビーブームの頂点にあたる。
 〈我ら戦争に敗れたあとに/一千万人の赤んぼが生(うま)れた/だから海はまつ青で/空はだからまつ青だ〉と叙情詩人の三好達治は書いた。生まれくる子は、傷だらけの体で立ち上がったこの国の、かけがえのない授かりものだった。
 えんやこらと復興の泥坂を上る大人を、小さな瞳が励ました。筆者は昭和30年代の生まれだが、あの頃も子どもが多かった覚えがある。昨今は、表で遊ぶ姿を見かけることも少ない。
 少子化に加えて、子どもの日常はますます遊びから遠のいていると聞く。時間、空間、仲間の三つを、遊びに欠かせない「サンマ(三間)」と呼ぶそうだ。放課後の外遊びもサンマがあればこそ。いまや都市部では原っぱという「黄金空間」も消えて久しい。
 〈少年時友とつくりし秘密基地ふと訪ぬれば友が住みおり〉笹公人(ささきみひと)。鬼ごっこも缶けりも、長じて何かの役に立ったとも思えないまま、何かの役に立っている。それが遊びというものだろう。サンマを上手に確保するつとめが社会にある。無論こどもの日だけではなく。

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