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国際刑事裁判所は正義か?(3)〜コートジボワール危機をめぐるスキャンダル

2017-10-11 16:00:07 | アフリカ情勢
ウェブ系メディアのメディアパール(Mediapart)が10月6日に報じた特ダネが、当地コートジボワールで反響を呼んでいる。この国のみならず、アフリカのオピニオンにも大きな反響が危惧される疑惑、おとといからシリーズで述べている。

疑惑とは2011年、コートジボワールがいわゆる選挙後危機を脱した直後に 、ルイス・モレノ・オカンポ検事総長が、フランス人外交官に、ローラン・バクボ前大統領の身柄を釈放しないよう求め、可及的速やかにハーグのCPIに移送してほしいと要請した、というもの。メディアパールは、「工作」を裏付けるフランス外務省の文書をあわせて入手しているという。

この事件のどこが大きな問題か?それを詳しく見る前に、前回までの記事では背景となる歴史について振り返った。

国際刑事裁判所は正義か?〜コートジボワール危機をめぐるスキャンダル
第一話 選挙後内戦とバグボ前大統領拘束
第二話 勝者による裁き


さて、その背景を踏まえて、今回のニュースの深層を眺めてみたい。



まず、コートジボワールの選挙後危機にまつわるハーグでの裁判は、CPIの首謀によって起こされたのではないか、という疑問が生じる。オカンポ検事長がフランス側にバグボ前大統領の身柄を当面拘束するように求めたのが、同氏拘束の直後。この時点で、コートジボワールはまだCPI加盟に必要な批准を行なっていない、未加盟国だった。CPIの中立性とは?正義とは?


次に、この交渉がコートジボワール側とではなく、コートジボワール危機にも介入に加担したフランスを通じて行われたという違和感。

そこに加担したフランス政権。当時のフランスは同年5月に大統領選挙を控えたニコラ・サルゴジ政権末期。当時の政権与党UMPは、先代のシラク大統領以降、バグボ大統領とは冷え切った関係であったとされる。フランスの利益のためのアフリカ介入、いわゆる'Françafrique'も疑われる。

さらに、オカンポ検事総長の要請では、バグボ前大統領が犯したとする「人道に対する罪」「平和に対する罪」について、罪状も根拠も示されていないとされる。国際的な司法機関が、恣意的な逮捕を行なったとも疑われる。


そもそもアフリカ諸国の中にはCPIに対する根強い反発がある。なぜアフリカ人ばかりがしょっぴかれてヨーロッパに移送されるのか。アフリカの犯罪はアフリカで裁かれるべきではないのか。アフリカの自立という命題を根本から否定する法廷である、と。

アフリカ連合総会では、CPIからの集団離脱の議論がまことしやかに行われてきた。急先鋒はパンアフリカニズムの旗頭、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領だ。

国際刑事裁判所、アフリカ諸国の脱退ドミノ?〜アフリカの犯罪をアフリカで裁けるか?(7)

他方、親欧米路線の穏健派政権はCPIを擁護派する。コートジボワールのワタラ大統領はこちらの立場。上記の歴史からすれば、その姿勢はあまりにわかりやすい。


国際社会の正義を標榜するCPI、しかしその正義の中立性と正当性を根本から揺るがしかねないスキャンダル。しかし幸か不幸か、すぐに燃え盛ることは当面ないかもしれない。当事国のワタラ大統領が本件を騒ぎ立てることはないであろうから。彼はむしろバグボをハーグで裁いてほしいのだから。


アフリカにおいて熱い議論が繰り広げられるCPI批判。この事件が同プリズムを映しだしていくのだろうか。

(つづく)

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