月曜朝の通勤電車は、とにもかくにも澱んだ空気で息が詰まりそうなのです。とうとう週末が終わってしまった、というこの世の終わりに直面した悲観的なおっさん達のその表情は、見るに堪えかねます。かくいう私もそのうちの一人なのですが。
ところが本日(月曜日)、私の背後では女子高生の二人組がお話をしていました。澱んだ車内に除菌するファブリーズ、と誰もが目を細めたことでしょう。かくいう私もその一人ですが、これがまた。
残念なことに満員電車で身動きがとれないために、私からはその顔は確認できません。が、声から判断すると柑橘系+ミント、フレッシュ濃縮還元50倍みたいな清涼感がありました。芸能人で言うと(あくまで声だけの判断なのですが)、市川由衣と相武紗季です。この二人が若さと清純さの二毛作で、なんだかもう大豊作なのです(あくまでも声だけの判断なのですが)。
二人の会話の内容に耳を傾けると、先日まで行われていた「高校バレー」に出場していた男子のことについて話しているようです。彼女たちの学校も出場していたらしく、ウチの男子がどーとかってなことを言っていました。
そのうち市川由衣(仮)が同じ学校の男子「つかさくん」について話し始めました。
市川「つかさもがんばってたよねー。」
相武「そーいえば、つかさってあんたに気がありそうじゃない。」
市川「えー、でも私たちそんなんじゃないよ。“友達以上、恋人未満”かな。」
“友達以上、恋人未満”って。そんな死んだフレーズを口にするほど恋は盲目ですか?君たちいくつ?90年代はじめの月9か?柴門ふみですらあのころの自分に恥じているというのに。もちろん確認したわけではないですが。
でもここは心と鼻腔の広さには定評のある私は許しちゃう。断然許しちゃう。だって「市川由衣と相武紗季」だもの。と、私がほんの少し心をゆるめたその瞬間でした。
市川「でも、つかさはだめだなー。だって小っちゃいもん。165センチくらいしかないんじゃないかな。」
・・・言うねー。「全国165センチの会」杉並支部長の俺を前にしてすげーこと言うねー。俺の仏面は3度はもたねーぞ。人を見た目で判断するなって、小学校で生理の授業と一緒に習わなかったのか?くそー、悔しい。泣きそう。いつの間にか「です、ます」口調を完全に放棄しているくらいに悔しい。
でも、しょうがないかも。若さにはかなわないもの。若さゆえの失言かもしれないもの。しかも市川由衣だし。悔しいけれど、瀬戸内寂聴のような寛大さで許します。
ただ、最後に折角だから二人の顔を確認しようと思います。と、電車を降りる際に振り返り、市川由衣と相武紗季の姿を確認した僕は、0,02秒後には心の中でこう叫んでいました。
「大丈夫!つかさくんは絶対に君のこと眼中にないから。絶対に!」