長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『遥か群衆を離れて』

2017-09-12 | 映画レビュー(は)

トーマス・ハーディ原作、1967年以来の再映画化はネオウーマンリヴの潮流がうねる今、ヒロインの造形がより今日性を持って甦っている。自立心旺盛な娘バスシーバは幾人からの婚約も「誰かの所有物になるのは嫌だ」と断り、女手1つで叔父から譲り受けた大農園を切り盛りしていこうとする。当時からすれば全く前例のない精神性の持ち主であるこのヒロインをキャリー・マリガンは等身大で演じ、バスシーバの独立精神を屹立させた。

だがそこはもちろんハーディ小説の主人公である。
ヒロインは時に意固地なまでの考え方で選択を誤り、運命の荒波に晒されてしまう。バスシーバを与する事なく、彼女と対等であろうとする男達に扮したマイケル・シーンとマティアス・スーナールツがいい。特にスーナールツは監督トマス・ヴィンターベアという符合もあってか、まるでマッツ・ミケルセンかと見紛うような色気だ(声質も非常に似ている)。

 一級の美術、衣装、撮影を揃えたヴィンターベアの王道演出によって堂々たる文芸映画に仕上がった。数あるハーディ原作映画の中でも最上の1本ではないだろうか。


『遥か群衆を離れて』15・米、英
監督 トマス・ヴィンターベア
出演 キャリー・マリガン、マティアス・スーナールツ、マイケル・シーン、トム・スターリッジ、ジュノー・テンプル
 

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