長内那由多のMovie Note

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『42 世界を変えた男』

2017-03-29 | 映画レビュー(は行)


こういう健やかさがアメリカ映画のいい所だ。
1945年、メジャーリーグ初の黒人選手となったジャッキー・ロビンソンの苦難の2年間を描く本作は偉人への敬意にあふれ、今の時代に多くを語る健全さがあり、何よりベースボール映画である。野球の動体運動とは映画のリズムとすこぶる相性が良く、観る者を高揚させる。


毎年4月15日は“ジャッキー・ロビンソン・デー”として全球団が彼の背番号42のユニフォームを着て試合をする。人種間の軋轢が増し、国家が分断されようとしている今こそ彼の忍耐、礼節、思慮深さから学ぶべきことは多い。公民権運動から遡ること20年も前にマウンドに立った彼は筆舌し難いほどの差別を相手チームはおろか、味方からも受ける。しかし、ロビンソンを抜擢したドジャース会長ブランチ・リッキーは「決して反抗するな」と言う。歯向かうな、抗うな、怒りに任せて下劣な差別と同じ土俵に立つな。劇中ではバックヤードで一人くじけそうになるジャッキーだが、これは映画の脚色であり、実際には弱音1つ吐かなかったのだという。その強さはやがて人々の意識を変革させていく。

監督のブライアン・ヘルゲランドは人々の善意が揺れ動く瞬間を見逃さない。
ジャッキーの才能に心動いていくヘッドコーチ、道端で激励してくれる白人男性、そしてチームメイトたち。先頃、『L.A.コンフィデンシャル』で組んだカーティス・ハンソン監督が亡くなったが、彼のような“演出・脚本・俳優”と3拍子揃ったコシのあるアメリカ映画作りの伝統をヘルゲランドが継承している事が嬉しい。

ロビンソンを演じるチャドウィック・ボーズマンは本作で大ブレイクを果たした。かつてのデンゼル・ワシントンのような精悍さがあって頼もしい(デンゼルのようなパンクな魅力はなく、ちょっとクリーン過ぎではあるのだけど)。今後、控えるマーヴェル映画『ブラック・パンサー』での主演に期待だ。
何よりハリソン・フォードが本気を出してくれている事が嬉しい。
近年、まったくもってやる気のなかった彼がブランチ・リッキー役で見せるおおらかさ、豪胆さはこの老スターの新しい魅力である。そう、カーティス・ハンソンは役者を光らせるのも巧い監督だった。ヘルゲランドが名称のDNAを継いでいる事も大きな発見の1本だ。



『42 世界を変えた男』13・米
監督 ブライアン・ヘルゲランド
出演 チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード
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