長内那由多のMovie Note

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『マネー・ショート華麗なる大逆転』

2016-11-02 | 映画レビュー(ま行)


2008年に発生した大手証券会社の一斉破綻“リーマンショック”。その引き金となった住宅バブル“サブプライムローン”の焦げつきにいち早く気付いたトレーダー達が、大手証券会社を相手に破綻を見込んだ金融保険商品を開発、まんまと売り逃げした実録コメディだ。
『マネーボール』の原作者マイケル・ルイスのルポをアダム・マッケイ監督は豪華スター集結のコンムービー(詐欺師映画)風に脚色。元々ウィル・フェレルとのコンビで『俺たちアザー・ガイズ』やブッシュ元大統領のものまねコントなどで風刺コメディをやってきた人だが、今回のオスカー脚色賞受賞で名実共に現代アメリカンコメディの注目株となった。

あまりにもゲスいサブプライムローンの実態とは裏腹に、軽妙なテンポとスター俳優たちのアンサンブルは小気味良すぎるくらいだ。会社に半袖、短パン、ビーチサンダルで出社する変人トレーダーに扮したクリスチャン・ベールがサブプライム崩壊を予見するが、大手銀行からは一笑に付される。何もしていなくても明らかに“この人オカシイ”という滲み出る狂気はベールの持ち味だが、この一見大きくない演技を評価したアカデミー助演男優賞ノミネートは意義深い。この年は同じ演技スタイルのルーニー・マーラもノミネートされており、アメリカ映画における演技トレンドが変遷しつつあるのかもしれない。

サブプライム崩壊を察知し、住宅市場の調査に乗り出すのがスティーブ・カレル。世の中のありとあらゆる事に腹を立てている彼の“キレ芸”はコメディアンとしての面目躍如だ。ついに格付会社に乗り込むシーンでは笑いの最大瞬間風速が吹く。常に「こいつらバカか。何言ってんだ」とこらえた顔が可笑しい。

当然、専門用語も頻出。もう限界!という所で挿入される解説Vのバカバカしさとわかり易さは本作の白眉だ。何と泡風呂に入っているマーゴット・ロビー(本人役!)がシャンパン飲みながらサブプライムローンを解説してくれるぞ!

結果は周知の通り。サブプライムは破綻し、一部の証券マン達が巨万の富を得た。
プロデューサーも務めたブラピが大物トレーダーに扮し、一喝する「多くの人達が職や家を失い、それで儲けた金なんだぞ」。

エンドクレジットではベール扮した“預言者”マイケル・バーリーの今注目している銘柄が“水”だと明かされる。
『マネー・ショート』は最高に可笑しく、そして笑顔も凍る絶対に笑ってはいけないコメディ映画だ。


『マネー・ショート』15・米
監督 アダム・マッケイ
出演 クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット
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