長内那由多のMovie Note

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『シーモアさんと、大人のための人生入門』

2016-12-07 | 映画レビュー(さ行)


イーサン・ホークが意気投合したのも頷ける。87歳のピアノ講師シーモア・バーンスタインの語り口はまるでホークが脚本を手掛けた“ビフォア3部作”のセリーヌやジェシーと同じだ。芸術を愛し、人生を模索し、そしてユーモア抜群。アーティストとしていかに人生を豊かに生きるべきか?スランプに陥っていたホークはたまたまパーティで知り合ったシーモアに惚れ込み、その精神性をカメラに収めようとドキュメンタリーに仕上げた。

一流のコンサートピアニストとして一世を風靡しながら50歳で突如引退、ピアノ教師としてその後の人生を費やしたシーモア。金や名声に人生の価値を見出さず、“教える”という行為を通して彼は“出会い”にこそ人生の価値を見出していく。卓越した技術と優しさで進行するレッスンを見続けていると、素人の我々ですら耳が啓蒙されてしまうのだから驚きだ。

本作の製作を境にしてホークのキャリアも再び充実期にさしかかっている。
おそらくユマ・サーマンとの離婚による慰謝料の支払いに追われていたのだろう。あまりにも心無いジャンル映画への出演が続いていたが、このところそんな“食うため”の仕事選びにもこだわりが見られ、ひとクセもふたクセもある作品に出演しながら盟友リンクレイター監督作や、彼ならではのチョイスによるアートハウス映画に出演しているのが心強い。ひょっとすると本作は後年“イーサン・ホークのキャリア転換点”として位置付けられるのではないだろうか。


『シーモアさんと、大人のための人生入門』14・米
監督 イーサン・ホーク
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