長内那由多のMovie Note

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

2017-05-19 | 映画レビュー(さ行)


実質上のシリーズ最終作『ジェダイの帰還』から30年。何がこうも僕たちを熱くさせるのか。
それは『スター・ウォーズ』という映画宇宙の中に、僕らと同じ実時間が流れていた事を実感できる空気があるからだろう。生みの親ジョージ・ルーカスは「この時代にわざわざヴィンテージとして作った」と批判的だが、オタク監督J・J・エイブラムスは僕らの大好きな“スター・ウォーズらしさ”の再現を優先した。ロケーションとセット、メイクと被り物というローテクにこだわり、CGを極力抑えた。これは近年『インターステラー』以後のハリウッド映画に顕著なCG離れであり、本作の歴史的な大ヒットにより、その傾向はより進んでいく事だろう(とはいえ、ミニチュアのドッグファイトはさすがにやれないので、途端に描き込み過ぎるCG画になってしまうのはご愛敬)。

さながら007映画のようにシリーズ過去作からの引用、オマージュを散りばめ、ほとんどパロディすれすれの作りは時に製作陣のオリジナリティも疑わせる程だが、仕掛屋JJらしくこの二次創作っぷりは旧ファンを新シリーズへ引き付けるためのファンサービスであり、装飾に過ぎない。事実、ルークを消し、レイアをカメオに留め、象徴的人気キャラであるR2-D2とC3POまでオミットして登場させた新キャラクター達はその誰もが魅力的だ。

新スター誕生となったデイジー・リドリーは清廉で美しく、そして近年のディズニー映画で確立された自立し、運命を切り開く力強いヒロイン像で堂々たる主演である。『スター・ウォーズ』以外でブレイクるするかはまだまだ未知数だが、新3部作の成功は彼女の起用によって確約されたと言っていいだろう。運動神経も良く、アクションもキレがあるし、何よりキュートでエレガントな英国訛りが心地よいではないか。

彼女の相棒となるジョン・ボイエガの“ヘタれキャラ”もハリウッド映画には新しく、デイジーとのケミカルも抜群。驚くほど正統派ヒーロー役のオスカー・アイザックが今後、2人とどう関わっていくかも楽しみだ。

中でも画期的な発明は悪役としてはあまりに危うく、不完全なカイロ・レンだろう。
不肖の父を憎み、一代で銀河帝国を築いた祖父ダース・ベイダーに信奉。残党軍ファーストオーダーに入ったのも、おそらくスノークの洗脳以前にその思想主義に勝手に肩入れしていたのではないか。カイロ・レンには悪を見極められず、容易に低きに流れるネット社会の若者然とした薄っぺらさがあり、だからこそ哀れであると同時に怖いのだ。自惚れと心の不安を体現したアダム・ドライヴァーは超大作でも物おじする事なく今後、さらにその性格俳優っぷりに磨きをかけていく事だろう。

旧シリーズと新シリーズのかけ橋となるのがハン・ソロだ。将軍まで上り詰めながら家庭は崩壊、賞金稼ぎに逆戻りし、ファルコンは取られるわ、借金は増やすわと変わらぬヤンチャぶりでそのままジジイになっているのがたまらなく嬉しい。かつて『ジェダイの帰還』で得る事のできなかった花道を得て、ハリソン・フォードは持ち役にかつてない深みと葛藤を与え、ほとんど主役のような存在感で生き生きと映画を牽引している。そして本作で僕らは『スター・ウォーズ』史上、最も衝撃的なモメントを目撃する事となるのだ。

次回エピソード8『最後のジェダイ』は『LOOPER』『ブレイキング・バッド』のライアン・ジョンソン監督が手掛ける。よりダークで複雑になるであろうドラマに期待だ。


『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』15・米
監督 J・J・エイブラムス
出演 デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、アダム・ドライバー、ドーナル・グリーソン、ルピタ・ニョンゴ、アンディ・サーキス、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、マーク・ハミル
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