長内那由多のMovie Note

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「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

2016-09-19 | 映画レビュー(た行)


50年代、アメリカで行われた共産主義者に対する思想弾圧“赤狩り”によってハリウッドを追われた伝説の脚本家ダルトン・トランボを描く伝記映画。トランボが本来持っていた思想、信条に対する言及がない等、突っ込み不足の感はあるものの、当時の風俗や業界内幕が再現されているのは楽しく、時代を知るサブテキストの1つとして数えておきたい作品だ。

議論となれば必ず相手を打ち負かしたという明朗さと、そして誰にも負けない頑固さを持ったトランボをブライアン・クランストンはさすがの芸達者ぶりで快演している。「ブレイキング・バッド」終了後の初主演でさっそくオスカー候補に挙がってみせた。見た目の似せ方もさすがなもので、トランボのトレードマークとも言える“バスタブでの執筆”は画になる生き写しぶりだ。酒とタバコでしゃがれたあの独特の声音まで再現してみせており、何より親分肌の快男児が持っていた反骨のスピリットと、決して無粋さで闘わなかったユーモアと知性を体現しているのである。

業界から干され、生活が困窮する中、B級映画を専門とするキング兄弟の下で覆面スクリプクトドクターとして日銭を稼ぎ続けた彼が“どうしても書きたい作品”として筆を取ったのがオスカーを受賞する事となる「黒い牡牛」であり、これを機にハリウッド内での立場が見直され始めてくる。

旅先で見た闘牛と、熱狂する大衆の中で一人悲嘆に暮れる少年の姿が忘れられなかったというトランボは少年と動物の友情を描きながらも、その本質は刺されても突かれても闘い続けた黒い牡牛の不屈の闘志にこそあり、故に彼は“Brave One(=原題)”と題したのだろう。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」はトランボの諸作を見ておけばより理解が深まるが、本作を観た後にトランボ作品を見るのもアリだ。秘められた葛藤、強い意志を知る事で名作がより味わい深くなる。伝記映画にはそんな楽しみもあるのだ。


「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」15・米
監督 ジェイ・ローチ
出演 ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ジョン・グッドマン、ヘレン・ミレン、エル・ファニング
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