長内那由多のMovie Note

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

『昼顔』

2017-06-19 | 映画レビュー(は行)


フジテレビで高視聴率を記録したテレビシリーズ完結編となる劇場版。
これまで数多の“劇場版”と名の付く映画がやってきた安易な引き延ばしではなく、職人西谷弘監督による文字通り“大人の演出”が施された純然たる劇映画のルックだ。西谷は過去にも『ガリレオ』シリーズを『容疑者Xの献身』へとバージョンアップさせており、フジの屋台骨を支える重要監督の1人と言っていいだろう。

不倫と濡れ場が話題のドラマだったにも関わらず、西谷はいわゆるベッドシーンは1つに留め(それも事後)、フェチズムによって豊富なニュアンスを得る事に成功している。正直なところ、上戸彩にこれほど被写体としての魅力があったとは驚きだ。不倫愛の末、縁故のない三浜の地で1人暮らしを始めるイントロからグッと来るものがあり、とりわけ誰に食べさせるわけでもない料理を丁寧に作る台所での佇まいは堪らない。上戸の華奢な手足に対する西谷のこだわりは強く、一人寂しく暮らす彼女が斎藤工のひと回りもふた回りも大きな手に包まれる様を幻視するシーンにはうずくものがあった。上戸彩は時折、顔にかかる髪から覗く、うつむき加減の表情が特に艶めかしい。

三浜で再会した2人は新たな人生を始めるも、「不貞の女」という烙印はつきまとい、周囲からは石打たれるというまさかのラース・フォン・トリアー映画のような展開に。彼の不可解な行動に怯え、彼からの嫉妬の言葉に関係は歪をきたしていく。愛を奪い、愛を手に入れても、いずれ愛を失うのではないかいう恐怖。ゆくも地獄、戻るも地獄の不倫愛にロマンスを求めてやってきた観客は凍り付く事だろう(伊藤歩の怪演を見よ!)。かといって“不倫は悪”なんて道徳を説くのではなく、“相手を傷つけること”の代償に目を向けた本作は余韻に満ちたラストシーンにたどり着くのである。不倫ドラマは大人の演出があってこそだ。



『昼顔』17・日
監督 西谷弘
出演 上戸彩、斎藤工、伊藤歩
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