長内那由多のMovie Note

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

『ババドック 暗闇の魔物』

2017-08-09 | 映画レビュー(は行)


あなたは天井の模様が人面に見えて眠れなくなった事はないだろうか?『ババドック』はあの眠れない一夜を思い起こさせる、震え上がるような一品だ。
シングルマザーのアメリアは出産のその日、病院へ向かう道中で愛する夫を交通事故で失ってしまう。それから6年、息子サミュエルとの2人暮らしは困窮していた。息子は学校でトラブルを起こし、アメリアは介護職で忙殺。生活レベルの違う妹とは反りが合わない。そんなある日、サミュエルが本棚から持ってきた絵本“ババドック”にはアメリアがサミュエルを殺すことが示唆されていた。絵本そのままにドアをノックする音が3回、そして電話が鳴る。「ババ…ドックドックドック…」。

子供を恐怖の対象と見なすホラーがあるが、『ババドック』はネグレクトを描いたホラーだ。神経衰弱に陥ったアメリアにババドックが憑りつくと、彼女はまるで悪魔のような声を発する。本作で長編監督デビューとなったジェニファー・ケントはキューブリックやポランスキー、そしてフリードキンの影響を受けており、抑制された前半から一転、畳みかけるような恐怖の連打はホラー好事家も頷くであろう威勢の良さだ。身を投げ出し、内なる恐怖と格闘するアメリア役エシー・デイビスの素晴らしい熱演には圧倒される事だろう。

恐怖とは人間が内から呼び起こした怪物である。ケント監督の知性とジャンル映画への偏愛はエモーショナルな母子のドラマへと昇華され、見る者の心に感動を残すだろう。
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