長内那由多のMovie Note

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『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

2017-06-14 | 映画レビュー(あ行)


2013~2014年は現代アメリカ社会のルーツを80年代に見出したアメリカ映画が続いた。
スコセッシは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でリーマンショックへと繋がるアメリカ資本主義の欲望の体質を描いた。『あなたを抱きしめる日まで』『ダラス・バイヤーズ・クラブ』では共に繁栄の影で野放しにされたエイズ禍をフリアーズ、ヴァレら外国人監督が一個人の物語に批評的視座を見出していた。『アメリカン・ハッスル』では浮かれた虚飾を身にまとわなければ自分を表現できない人々をデヴィッド・O・ラッセルが活写した。
本作のJ・C・チャンダー監督も映画に批評的視座を持ち込む社会派監督である。デビュー作『マージン・コール』、続く『オール・イズ・ロスト』は共にアメリカ資本主義への挽歌とも言うべき作品だった。本作は先の諸作よりも少し早い1981年、レーガン政権誕生前夜を舞台にしている。

主人公アベルは移民ながら一代でオイルビジネスを立ち上げた辣腕経営者だ。ついに港湾地区の広大な土地を手に入れかけた時、彼の会社のタンクローリーを狙った強奪事件が頻発する。競争各社の陰謀か?クリーンなビジネスをモットーに成り上がってきたアベルは、妻の言う強硬策にも賛同できず、ただ事態を静観するばかり。しかし、事態は悪化の一途を辿り…。

前2作はまだ“小品”というイメージだったチャンダーだが、81年の荒廃したNYを再現するランドスケープ、オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステインら知性あふれる演技派キャストを得た本作には、さながらシドニー・ルメット映画を彷彿とさせる風格が備わった。ブルックリン橋やスラムを駆け抜ける捕り物のダイナミズムも圧巻だ。

原題『a Most Violent Year』とはNYの統計上、最も暴力事件が多かった1981年を指す。チャンダーはレーガノミクス前夜こそが理性の時代の終焉だったのではとしているのだ。
終幕、アベルはドクドクと血のように垂れ落ちる石油タンクに蓋をする。僕たちは彼が以前の自分には戻れなくなってしまった事を知るのだ。


『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』14・米
監督 J・C・チャンダー
出演 オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デビッド・オイェロウオ、アルバート・ブルックス
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