移ろいゆく日々

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気にとめたことを忘れぬうちに

規制緩和と科学技術

2017-04-23 12:28:18 | Weblog
 少し仕事向きがかわって、法令に基づく官庁や諸団体への届出や報告の内容を知る機会ができた。
 日本は大戦後の50年代から60年代に飛躍的な高度経済成長によって戦後の復興を果たしたが、一方で人類が直面した労働災害や公害問題にも多く苦しめられてきた。その反省を踏まえて、60年代以降法整備がすすみ、労働基準法、労働安全衛生法および大気汚染防止法や水質汚濁防止法などが成立し、それに基づく様々な法令や官庁も整備されて今に至っている。例えば省エネルギー法などの整備はいち早く、昭和54年(1979年)に制定されて、資源エネルギー庁の所管でこの一事でも様々な規制がかけられている。
 これらの法令や届出の仕組みが、公共の安全安心に大きく寄与していることは間違いない。70年代に相当に荒廃した都市圏、工業地帯の環境は随分と改善し、例えば東京を例にとっても多摩川に鮎が戻り、隅田川がかつての流れを取り戻し今夏は川床のようなものも用意されるとも聞く。
 ところで、必要と過剰の間の線引きは議論されているのだろうか。極めて発がん性の高い化学物質にPCBがある。優れた絶縁性を持つために工業用民生用に一時期ものすごく普及がすすんでしまった。一方で、極めて危険なこの物質は化学的には安定で、一度環境に出てしまうと自然界での分解は遅く、長期間に亘って発がん性を発揮して、生態系や人間に害を及ぼす。昭和45年(1970年)に制定された廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)で使用の禁止が決まって後、その処理に関する特別措置法(平成13年(2001年))で、その廃棄物の運搬や処理まで多大なコストをかけて処理することが定められている。終わるのは平成34年、だがその目処がある訳ではないのが実情だ。
 問題はそのことではない。このPCBは早くに使用禁止が決まったにも関わらず、油類への溶解が容易なことから、絶縁油に汚染物として残ったために、絶縁油を使用する電気工作物に少量含まれる場合が生じた。このような懸念のある物質が80年代の終わりぐらいまでの製品に残存している。日本では、長らく製品の長寿命化がすすみ、2017年現在でもそこそこの製品が廃棄段階として残ったりしている。ただし、絶縁油そのものではなくその中の極低濃度の汚染であって、管理の行き届いた通常の廃棄物処分であれば何ら問題はない。しかし、「管理の行き届いた」状態にするには、廃棄される電気工作物(昔のテレビや電気機器類)などを一旦集めて、専門業者に検査させて、その量が微量であることを確認した後に産業廃棄物として処理をする、そのような必要が生じている。
 これにかかるコスト、単にお金だけではなく無駄な書類、労働力や余計な仕事による労働災害リスク、運搬に使うエネルギーなど、おそらくは新たな”公害”を生み出しかねない様相を呈している。本当は、何か合理的な根拠のある線引きをして、コストやリスクをかけずに廃棄物処理することが望ましいのに、制度設計の手抜きが問題を生み出している。
 本来の規制緩和は、ここに必要があるのではないか。高濃度のPCBはがんじがらめの規制で処理がすすまない一方で、極低濃度のPCB含有電気工作物は書類とコストを積み上げている。これでは新たな開発は生まれてこない。
 一方で、未だに過去の遺物に苦しめられている例もある。豊洲市場の問題である。同敷地は東京ガス株式会社のガス製造工場があった場所で、ベンゼンなどの有機化合物の汚染があるところだ。東京ガスはそのことは当然前提として知っていた訳で、それも売却に難色を示した理由だろうし、だからこそ瑕疵担保責任を回避する契約も求めた。その辺の手続き関係は都会議の百条委員会で明らかにしてもらうことにして、別の視点の話しを書く。環境管理という雑誌を読んでいたら、そもそも汚染土壌からの揮発物に関する法律や規制が日本にはないらしい。汚染土壌といっても、その場の井戸水を使うのでなければ、市場に大きな影響はないはずと感じていたが、どうやら汚染された土壌からの揮発物質が市場に働く人や製品(この場合はお魚か)に影響することを測る法律や指針がなく、土壌における環境基準で議論がなされている訳だ。
 豊洲市場なるまだ成立もしていないブランドが既に毀損した状態、マイナスからの開始となるとすれば、市場関係者にとっては憂慮すべき問題であろう。だからこそ、市民も冷静に事の是々非々を見極めていく必要がある。政治的な行政手続きの問題と、市場が影響される科学的評価とは分けて考えたほうがよい。そうしなければ、さらに血税が無駄に流されるというものだ。
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