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南シナ海の仲裁裁定は「なかったこと」? 中国の棚上げ主張と「勝者」ドゥテルテ比大統領の埋まらぬ溝

2016-11-07 11:57:41 | ニュースまとめ・総合

南シナ海の仲裁裁定は「なかったこと」? 中国の棚上げ主張と「勝者」ドゥテルテ比大統領の埋まらぬ溝

産経新聞 11/7(月) 10:05配信

 南シナ海問題をめぐって中国とフィリピンは「争いの棚上げ」に合意した-。中国外務省が初めてこう明言したのは、習近平国家主席(63)とドゥテルテ比大統領(71)の首脳会談が北京で行われた10月20日から6日後。東京でドゥテルテ氏と安倍晋三首相の会談が開かれる数時間前のことだった。フィリピン側にいたっては未だに「棚上げ」合意について言及していない。

 中国側が主張するように、南シナ海での中国の主権主張を退けたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の裁定について両国は「棚上げ」に合意し、一定の決着をみたといえるのか。

 「劇が終わって役者と観客はみな劇場を離れたのに、伴奏の楽団だけが劇を続けさせるために同じ曲を繰り返し演奏している」

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は10月31日付の社説で、仲裁裁定への順守を求める日米に対し、こう諭してみせた。仲裁手続きの〝主役〟である中国とフィリピンはすでに裁定の棚上げで合意し、2国間の対話による解決への道を歩み出したというわけだ。

 その証左として環球時報は、双方の対立が先鋭化していたスカボロー礁(中国名・黄岩島)近海にフィリピンの漁船が戻り、同礁を実効支配する中国の公船も漁の妨害をしていない現状を挙げる。中国外務省の華春瑩報道官は10月31日にこう述べた。「中国側は黄岩島で正常な管轄権を行使している。ドゥテルテ大統領が関心を持つ問題について、中国側は友情に基づき適切な対応を行っている」

 つまり、スカボロー礁の主権をめぐって中国側は一切譲歩していないが、中国に友好的なドゥテルテ氏に免じて漁は認めようという趣旨だ。裏返せばドゥテルテ氏が「非友好的」な立場をとれば、すぐに漁の取り締まりに転じることを示唆している。

 習-ドゥテルテ会談の直後、中国の劉振民外務次官は記者団に対し、スカボロー礁については議題にならなかったと説明した。また会談翌日に発表された共同声明もこの問題には一切触れておらず、あくまで非公式なやりとりであったことがうかがえる。フィリピン側の出方を注視した暫定的な措置なのだ。

 中国は仲裁裁定を「紙くず」と切り捨て、「なかったこと」「終わったこと」として無効化を狙っている。だがスカボロー礁近海で一時的にしろフィリピン側の漁再開を認め、軍事拠点化も抑制せざるを得なくなったこと自体が、中国の違法行為を認定した裁定の効果ともいえる。

 漁再開について米国のブリンケン国務副長官は10月29日、訪問先の北京で記者団に「仲裁裁定に合致した動きだ」と歓迎の意向を示した。

 ドゥテルテ氏は南シナ海問題や仲裁裁定をめぐり、安倍首相との会談で「われわれは常に日本の側に立つ」「判決に基づいた話しかできない」と述べている。では、争いの「棚上げ」があったとされる中国側との交渉ではどのような主張を展開したのか。ドゥテルテ氏自身の発言を基に再現してみよう。

 ドゥテルテ氏「スカボロー礁はフィリピンのものだ」

 中国側「われわれは南シナ海のほぼ全域において領有権を持つ」

 ドゥテルテ氏「こちらは裁定における勝者だ。決して譲歩しない」

 中国側「この問題は平和的に、血を見ることなく解決できる。ただ時間はかかる」

 ドゥテルテ氏「オーケー。われわれが得た仲裁裁定について、そのうち議論しよう。この裁定から離れることはない。われわれは主権問題で勝利したのだ」

 そもそも中国側の専門家も、ドゥテルテ氏に仲裁裁定を放棄させることの困難さを認識している。中国南海研究院の呉士存院長は首脳会談前に、環球時報への寄稿で「“勝者”であるフィリピンに裁定を完全に放棄させるのは絶対に容易ではない」と指摘。スカボロー礁の問題が原因となって会談が膠着(こうちゃく)しないために、「フィリピン側に中国の主権を尊重させる前提で、黄岩島周辺を含めた漁業協力について探ることも一つの選択だ」と主張した。現在の中国側の動向は、ほぼこの提言に沿ったものとみてよさそうだ。

 勝者の立場である仲裁裁定は堅持しつつも、中国の経済支援を引き出したいフィリピン。スカボロー礁の軍事拠点化は進めたいが、ドゥテルテ氏の「独立外交路線」への転換を利用して米国との引き離しも図りたい中国。双方は「一時的な議論の先送り」という点では一致したが、根本的な対立構造は何も解決されていない。

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