ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

 自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう.

死んだフリの効用

2017-05-12 08:39:10 | 日記
 今夜はダメよアナタ.私,死んでるの.

というタイトル.な,何なのだ? と,思わずクリックしてしまった.それは「ニューサイエンティスト」誌の記事:


 トンボのメスはオスの追跡を逃れるために,突如として死んだフリをする

 メスのトンボは望まないオスの求愛者を退けるために,ある極端な策略を用いる.彼女らは空から落ちて死んだフリをするのだ.

 スイス,チューリヒ大学のラッシム・ケーリファ氏はルリボシヤンマ (Aeshna juncea) のこの行動を初めて観察した.スイスアルプスでヤゴを採集していた彼は,オスに追尾されていた1匹のメスが地上に墜落するのを見た.そのメスはじっと仰向けに横たわった.まもなく追尾者は飛び去り,付近が静まるとそのメスも離陸した.


 トンボで見られたのは初めてだけど,死んだフリをする行動はクモとか robber fly とか,カマキリとかで知られているそうです(クモやカマキリはメスのほうが大きいので,死んだフリするのはオスでしょう).
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再訪 「赤の女王」説

2017-04-30 20:57:21 | 日記
 ・・・女王さまは言いました.「よいか,ここでは,おなじ場所にとどまっておりたければ,力のかぎり走らねばならんのじゃ」 (キャロル著,脇明子訳「鏡の国のアリス」岩波少年文庫)





 「赤の女王」説は,「生物にはなぜセックスがあるのか?」という大問題を扱った学説です.

 生物はセックスがなくても子孫を作れます(無性生殖).ただし無性生殖では遺伝子は変りません.子は親と全く同じ遺伝子です.子が何人(何匹)生まれようと,みな同じ遺伝子をもっています.無性生殖とは親のコピーを作ることです.
 
 これに対し,有性生殖では多様な子孫が作られます.環境が変化する時は,有性生殖のほうが有利になります.しかし環境が一定であれば,無性生殖に比べ有性生殖は圧倒的に不利です.

 だから現存の生物の大多数が有性生殖を採用している理由は,生物の生きている環境というのは見かけほど一定ではなくて,じつは時々刻々と変化するものに違いない,と考えられます.

* * *


 では,その時々刻々と変化する環境とは,どういうものでしょう? さまざまな「環境」が変化するでしょう.しかし最も重要なのは病原体の存在,かもしれません.

 生物と病原体の関係は,軍拡競争によく例えられます.それはしばしば,一方が生存すれば他方は滅びるという熾烈な勝負になります.負けそうになった側は,遺伝子の組成を変えます.そして勝ちに転じたら,こんどは相手の負けが混んできます.そこで相手も遺伝子の組成を変える必要がでてきます.こういう関係が続く限り,生物も病原体も,どちらも常に遺伝子組成を変える必要性に迫られているわけです.

 ところでこの場合,「軍拡競争」という比喩は,あまり適切でないかもしれません.ナイフで殺し合っていたのがピストルに,ピストルが大砲に,大砲が爆弾に,というような軍事技術の拡大や充実とは少し違っています.生物と病原体の競争は,むしろジャンケンに似ています.相手がグーを出している時は,こちらはパーを出せば良い.相手がチョキに切り替えたら,こちらはグーを出す.こういう競争では軍備の拡大や進歩はありません.相手の出方によってこちらも出方を変えるだけです.そこにあるのは「変化」であって,必ずしも「進歩」や「拡大」ではありません.

* * *


 生物集団の遺伝子の組成が変化することを,生物学では「進化」といいます.その定義を採用すれば,生物と病原体とは生き残るために,共に「進化」し続けているわけです.進化によって生物は進歩することもありますが,ジャンケンのように同じ所をぐるぐる回っているだけの進化もあります.生物学的には「進化」とは「変化」であって,必ずしも「進歩」を意味しません.

 病原体も含め,生物は他のさまざまな生物とともに生きています.こういう生物的環境は時々刻々と変化するので,生物は無性生殖で自分のコピーさえ作っておけば良いというわけにいきません.有性生殖を行なって,「全速力で進化し続ける」ことが常に要求されています.それはルイス・キャロルが「鏡の国のアリス」で描いた「赤の女王」の国とどこか似ています.

 「この世にセックスが存在するのは,生物が病原体と闘わねばならないからだ」と主張する学説が,「赤の女王」説と呼ばれるのは,そういう理由からです.
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こうちフィールドミュージアム協会について

2016-01-14 17:20:50 | 日記
 こうちフィールドミュージアムという県の計画が発表されたとき,それに賛同し協力して行こうという趣旨で誕生した民間団体が「こうちフィールドミュージアム協会」です.

 自然史博物館的な仕組みづくりをめざしつつ,自然や自然史に関する資料の収集,自然教育や環境教育,自然史関係者の交流や情報交換,などの活動をしようという集まりです.

 「こうちフィールドミュージアム協会」が実施する行事を,私たちはネイチャーサロンと呼んでいます.自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう,というメッセージを込めています.

 こうちフィールドミュージアム協会のネイチャーサロンは,多くの場合次の2つのいずれかのスタイルで実施されています.

1.ミクロコスモス
顕微鏡や実体顕微鏡を使って,小さな生物たちの世界を紹介します.

2.持ち寄り展示会
自然や自然史に関する物や情報を持ち寄って展示会を開きます.


 今後,より多様な活動形態を取り入れて行きたいと考えています.
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ミドリムシの培養液(2)

2015-06-23 00:24:26 | 日記
 「ミドリムシの培養液(1)」の続きです.

 まず,補足説明.

 ヨーグルト造り(乳酸菌)でも酒造り(麹と酵母)でも同じだけど,こういう微小生物を飼うとき注意せねばならないのが,他の微小生物の混入(contamination, いわゆる「コンタミ」)だ.

 特に,殖やしたいと思っている生物と性質の似た生物が混入すると,もう取り返しがつかない.藻類を飼う人は,他の藻類によるコンタミを green contamination(緑の汚染)と呼んで警戒する.ミドリムシの場合も,他の原生生物の混入だけは何としても避けたい.そういう理由から,「熱湯消毒」を強調して説明しました.

 消毒と言っても,今回説明する程度の作業では,バクテリアの混入を完全に防ぐことはできません.バクテリアや菌類の胞子は熱湯に漬けた程度では殺せません.研究機関の実験室のように,無菌操作のできる環境ではないので,培養液を作る過程でも,それ以後もずっと,バクテリアが侵入するチャンスはいくらでもあります.

 また,今回の方法では小麦の煮汁を使うので,液の中にはタンパクなどの栄養が含まれます.それを「食べて」バクテリアは増殖できます.

 バクテリアは仕方ないとしても,他の原生生物が侵入することだけは防ぎたい.そういう趣旨の「熱湯消毒」です.


 さて,ここからが本論.

 ハイポネックス1,000倍希釈液ができたら,次は小麦の煮汁(小麦浸出液)を作ります.

 小麦浸出液とは概略次のようなものです.1リットル用の三角フラスコに水を500mlほど入れて,小麦を40~50粒加える.このフラスコを火にかけて沸騰させる.5分ほど沸騰さ せて火を止める.熱が十分に冷めてから,濾過して小麦粒を除去する.最後に水を加えて全量を1リットルとする.

 ここでは三角フラスコなど利用できない一般家庭を念頭に置いて,もっと小規模で簡便な方法を採用します.

 まず,マグカップに水を100mlほど入れる.それに小麦を5粒入れる.そして電子レンジにかける.2分~3分.ハイできあがり.

 マグカップは自分がコーヒーを飲むとき使っているものでも構わないけれど,私は一応ミドリムシ専用として,安物のマグカップを用意しています.

 次に,電子レンジからマグカップを出す.マグカップ内は熱湯なので,使用する可能性のあるピペットで湯を吸って捨てる.こうしてピペットを「熱湯消毒」しておく.

 まずピペットで,マグカップ内の湯を,たとえば2ml取って,飼育用の容器に入れる.容器については以前の記事を見てください.容器には予め熱湯を通しておくこと.

 次に,同じピペットを使って,ハイポネックス1,000倍希釈液を2ml入れる.そして容器に軽くフタをして放置.

 十分に液の温度が下がったら,ミドリムシを,たとえば1ml 入れる.この時使うピペットは,改めて湯を通しておいた方が良いかもしれない.またはピペットを使わないで,直接注ぎ込む.量はアバウトで良い.

 注意を1つ.この方法ではバクテリアの侵入を完全に防ぐことはできません.ミドリムシを飼っているわけだけど,バクテリアも大増殖している可能性がある.だから,この方法で飼っているミドリムシを,決して口に入れないでください.
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ミドリムシの培養液 (1)

2015-06-18 18:15:44 | 日記
 ハイポネックスを知っていますか? 園芸用などに使われる植物の肥料です(写真).

 ミドリムシを飼うために私が考案した培養液は,まず,
1.ハイポネックスを水で1,000倍希釈したもの.
2.小麦粒を煮沸した液
を作る.
 次に1と2を等量混合する.これで完成.

   *   *   *

 しかし研究機関ならともかく,一般家庭でこの作業ができるだろうか? 1,000倍に希釈するには,たとえば水1リットルにハイポネックス1mlを入れる.しかし,1リットルとか1ml とかを,どうやって計れば良いだろう?

 名案が浮かばないので,私はプラスチックのピペットを使っています.研究室で使われている使い捨てピペット.写真のものは(株)栄研器材の製品で「滅菌スポイト3号」というらしい.2ml 用です.



 このピペットには4つの目盛り線が入っている.先端側から順に,0.5ml, 1ml, 1.5ml, 2ml だ.つまり,これを使えば,こういう量を計ることができる.


 というわけで,1 ml はそのように計ることにした.では1リットルとか,その半分(500 ml)とかは,どうやって計る?

 これは簡単.ペットボトルの飲み物を買う.たとえば 500 ml 入りのコーヒーを買ったら,そのペットボトルで水 500 ml を計ることができる.本当はペットボトルではなく,火にかけて加熱できる容器が欲しいのだけれど,ここではペットボトルを使う方法をご紹介します.

 まず,やかんで湯を沸かす.沸騰したらその湯をペットボトルに注ぐ.湯を注いだとき,へなへなと変形してしまうなら,そのボトルは使えない.湯を注いでも変形しないものを使ってください.

 方法.湯をペットボトルの口一杯まで注ぐ.次に,その湯をピペットで吸っては捨てる.大体この辺が500 mlだろう,というあたりまで捨てる.この操作によって,ペットボトルとピベットの両方を「熱湯消毒」したことになる.

 で,次にそのピペットを使って,ハイポネックスを0.5 ml取って,このペットボトルの湯に注ぎ足す.あとは軽く(ゆるく)フタをしておく.熱湯を扱うので,やけどに注意,です.とにかく,これでハイポネックス1,000倍希釈液ができる.

 この続きは,また今度書きます.
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