母父サクラバクシンオー

2015-10-27 10:58:47 | 配合論

キタサンブラックの菊花賞制覇にまつわる母父サクラバクシンオー云々かんぬんについては、スプリンターを母父に持つ馬が長距離の大レースを勝つことは決して珍しいことではないし、サクラバクシンオーはサクラユタカオー(テスコボーイ直仔の秋天馬)×サクラハゴロモ(アンバーシャダイの全妹)ですからたしかに典型的な短距離血統とはいえません
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1989108341/

しかしサクラバクシンオーの体型や走法や加速は明らかにスプリンターというべきもので、その特質を直仔にも孫にも伝えているのも事実

「バクシンオーは決して短距離血統ではなく、主に気性的なもので短距離を走っていた」という説もよく目にしますが、「気性的なもの」だけで歴代最強スプリンターに数えられるようなパフォーマンスを発揮できるはずはないし、ショウナンカンプやハクサンムーンみたいな馬を出すことも不可能です

サクラバクシンオーの全妹ラトラヴィアータがやはりスプリンターだったことや、アルフレードやリビアーモやバロンドゥフォールなどサクラハゴロモ直系子孫がマイラーが多いことからも、サクラハゴロモにはノーザンテーストの伸びのない体型とGallant Manの勝気な性分と「Bull Lea+Domino+Sun Briar」の組み合わせ特有の北米パワースピードがONになっていて、それをバクシンオーなどを通じて伝えつづけていると考えるべきでしょう

母父サクラバクシンオーの収得賞金ベスト10は、ハクサンムーン、キタサンブラック、フミノファルコン、スターバリオン、サワヤカラスカル、メモリアルイヤー、シンボリディスコ、ブランボヌール、トップカミング、レンイングランドと、やはりバクシンオーの影響を受けた短距離型が多いのはたしか

でも中には明らかに中距離向きの体型体質のトップカミングやスターバリオンみたいな馬もいるわけで、3/10ぐらいの確率でバクシンオーのスプリンター資質をほとんど受け継がない馬もいるわけで、それも確率論的には当然というべきでしょう

アンバーシャダイってのはノーザンテーストには全然似てなくてBull Lea的パワーもあまり感じられず、主としてTourbillon系特有のしなやかさとHyperion的な我慢強さで走った中距離馬で、だから代表産駒はメジロライアンもカミノクレッセもレインボーアンバーもベストタイアップもTourbillonを押さえた配合をしています(Never Bendとのニックスは有名)

サクラハゴロモとアンバーシャダイに伝わったもの、サクラハゴロモとアンバーシャダイが伝えたものはやっぱり違うと言うべきだし、それはディープインパクトとブラックタイドが伝えるものが違うのと同じで、いずれにしても血統表中の先祖から受け継いだ何かを伝えているのはたしかなのです

キタサンブラックがステイヤーだとは私も思いませんが、春よりも更に体型に伸びが出てきたのは事実だし、1,2着の叩き合いにフォーカスを絞っていうならば、リアルスティールが3000mに延びたことで皐月賞やスプリングSと比較してパフォーマンスを落としたほどはキタサンブラックは落とさなかった、という勝利だったのではないかと

「Princely GiftやMr.Prospectorのような軟質なスピードは、代を経ると中長距離を走るための柔らかさしなやかさとなるというのは昔からよくあることで、2030年ぐらいにはサクラバクシンオー4×5がステイヤーズSを勝っても何ら不思議はないでしょうね~」(望田潤bot)

バクシンオーのような柔らかくしなやかなスピードは日本の高速馬場における長距離戦を燃費よく走る上で有効な武器となりうるもので、それはMr.Prospectorをクロスするゼンノロブロイ産駒がトレイルブレイザーのように長いところ向きになりやすいのと同じで(菊では3着4着でした)、Princely Gift(勝ち鞍は5~7F)のクロスといえばゴールドシップにコスモバルクにスノードラゴン、Mr.Prospector(勝ち鞍は6~7F)のクロスといえばホッコータルマエにメイショウマンボにテスタマッタにベストウォーリアにブラックエンブレム

バクシンオー的な体型や気性は受け継いでいないが、バクシンオーのクロスから長距離をしなやかに走れる体質やフォームを受け継いだ馬が、ダイヤモンドSを勝つこともあるだろう、ということですね

ちなみにアンバーシャダイ=サクラハゴロモの全兄妹クロスを持つ中央勝ち馬は、アウトクラトール、ペイシャモンシェリ、グロッキーバルボア、クレセントシチーの4頭で、スプリンターが3頭、中距離馬が1頭という内訳です


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17 コメント

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Unknown (Lion)
2015-10-27 15:09:44
>たしかにプレイアンドリアルの全きょうだいが5頭いたとすると、たぶん3頭ぐらいはうなりをあげるドタドタAlydarになるんじゃないかと思いますが(^ ^;)、こういう馬が出ても全く驚けない配合ではあるのです

という2年前のお言葉を思い出しました。これに通ずるものがありそうですね。

キタサンブラックは中長距離馬的な発現の仕方をしていると思ったので単勝を買うつもりだったのですが、
午前中の別のキタサン馬で宏司がやらかしてるのを見てリアファルに鞍替えして痛い目に遭いました…
Unknown (MJ)
2015-10-27 16:29:04
「母父バクシンオーは長距離では消し」でも「母父バクシンオーは長距離で買える」でもなく、「母父バクシンオーらしさが表現されていない中距離馬なので、長距離でも大きく減点する必要がない」というのがまず着地点やと思います
そこから◎を打って単勝を買えるかどうかは、血統に限らず別のロジックが必要やと思うけどね
Unknown (MJ)
2015-10-27 16:31:22
「バクシンオーのスプリンターらしさが表現されていない中距離馬なので、長距離でも大きく減点する必要がない」が正しいか
距離適性 (Mahmoud)
2015-10-27 18:02:45
距離適性というのは個で評価するのが本来の形とはいえ、実際の競走においては相対的な形になりますからね。例え適性外の距離だったとしても能力差のマージンで事足りるのなら、強い馬が勝つのが競馬だと思います。

女傑ノースフライトがいなければサクラバクシンオーだってマイルCSを勝っていたかもしれないわけで、また、あの毎日王冠がもう少し手薄なメンバーで定量戦だったら、1800mG2を勝つ可能性もあったわけで、ちょっとした見方の問題なんだろうなと・・・。それにしても「母父サクラバクシンオー」のネガティヴな大騒ぎにはビックリですわ。血統論の崩壊などあるはずもないです。
Unknown (Unknown)
2015-10-27 18:30:43
例年以上に長距離向きと言われていた馬達のレベルが低かったというのもありますよね
勝ったキタサンブラック以外では、最も迫ったリアルスティールはもちろん、リアファルも展開次第で頭の可能性はあって、他の馬はハナからノーチャンスだったのかも
Unknown (Unknown)
2015-10-27 19:00:48
名前や血統の前に実物をしっかり見ろ

ってことでおk?
Unknown (MJ)
2015-10-27 19:36:49
たしかにバクシンオーとカナロアの差は、「マイル路線にノースフライトがいたかいなかったか」の差にすぎないのかも
2000mベストのエアシャカールは皐月賞ではダイタクリーヴァをねじ伏せましたが、菊花賞では弱メン相手にヒーヒー言いながら勝ったわけで、菊花賞だって必ずしも距離適性やスタミナの勝利とは限らないわけです
我々血統屋は仕事柄「長距離で浮上するステイヤーはどれや?」みたいなオーダーで書かされることも多いんで、ついつい距離適性偏重な書き方になってしまうというのはあるかもですね~
Unknown (MJ)
2015-10-27 19:50:00
うちのオカンはもう主婦50年ぐらいやってますが、未だに酢ブタでも牛ゴボウでも自分がメモしたノート見ながら「しょうゆが小さじ2杯で…」ってやるんですね
「そんなもん長年の感覚で、目分量でだいたい味なんか決まるやろ」と言っても、「たぶん決まると思うけど、小さじ何杯で測ってやったほうが堅いから」と言うんですね
相馬と血統の関係、実馬と血統表のすり合わせというのはそれと近いというか、目分量でわかる人は目分量でやったらいいと思うんですが、私は目分量だけで判断する自信はないので血統という小さじを使ってるわけです
Unknown (Unknown)
2015-10-27 20:37:08
血統も相馬もファンに還元された文化であり視点だと思うんですが
「血統と相馬を結びつける」という考えって案外メジャーではないのかなとか考えてしまいました
Unknown (むらやん)
2015-10-27 20:54:40
バクシンオーのスプリンターらしさが表現されていない中距離馬がG1を勝ち、

バクシンオーのスプリンターらしさが表現されている短距離馬がG1を勝てない。

奥が深いなぁ。

ぼくは馬体を見ても「こいつカッコいい」ぐらいしかわかりませんので、MJさんの血統と実馬の擦り合わせに憧れつつ、頼るほかありません(´・_・`)

さっさん会、忙しくて参加難しそうです。残念です。

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