小指ほどの鉛筆

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・頷くことしか出来ない私に貴方を愛しているかなんて聞かないで下さい(ルベウス)

2009年05月09日 20時50分48秒 | ☆小説倉庫(↓達)
自由なんて無くて、
いつだって苦しくて、
どうして自分がこんなところにいるのかなんて、
そんなことを考えて見たりして、
答えなんて、
こんなにも明白なのに、
現実逃避なんてらしくもないことをしてみたりして、
そして僕は、
僕は、

「ルベウス、今日も読書か?」
「うん。」
いつものように自室で本を読んでいた。
そしていつものように、兄弟がやってくる。
「もぅ書庫の本、読みつくしたんじゃないのか。」
「まだ。」
まだ、ということはつまり、いずれ読み乾すつもりなのだが。
兄弟であるサファイラスは、本をあまり読まない。
それはそうだろう。
兄弟とは言えども、血の繋がっていない義兄弟なのだから。
「そっか・・・そうだ。アダマス様が、もうすぐ出かけるって。」
思い出したかのようにそう言ったサファイラスを、チラリと見やる。
どうやら本題はそちらだったようだ。
「そう。」
「ルベウスは一緒に行かない、よな。」
「うん。」
「じゃあ、僕もここに居る。」
「なんで。」
基本、自分の言葉は簡潔だ。
自覚がある分、口数くらいは多くしようと務めている。
少なくともサファイラスにだけくらいは。
「なんとなく。」
「・・・ふーん。」
曖昧な答えにコメントを返すことが出来るほど、自分は言葉を知らない。
だから大抵は、頷くか、首を横に振るかのどちらか。
肯定か否定か、そのどちらかで会話をしていた。
疑問は一言、どうして、何故、等の短い言葉。
会話を望む人間の気が知れない。
「僕も書庫に行って来る。」
「うん。」
そのうえ、表情も無い。
笑うのも泣くのも、ここでは無意味。
サファイラスが去っていった後の静かな部屋で、自分は読書に勤しんでいた。
「ルベウス。」
突然、頭上から声がした。
視線だけで応えれば、自分が座っている椅子の前にはアダマスの姿。
口を硬く閉じて、目だけで問う。
何をしに来たのかと。
「出かけるが、来るか?」
首を振る否定。
「サファイラスも来ないようなのだが。」
頷く肯定。
「兄弟仲が良いのは、喜ばしいことだな。」
どうでもいいことには、反応しない。
正直なところ、彼と共にいるのは気が気じゃない。
何をされるか分かったものではないし、何より身体の自由が利かなくなる。
まるで、重石をくくりつけられて海に沈められたかのようだ。
だんだんと意識が沈んでいく。
身動きが取れない。
鈍い抵抗も、浮力には変わらない。
「今日は別にいい。だが、明日は付いてきてもらうぞ。」
ジッと見つめる、追求。
「あいさつをしなくてはいけない相手がいる。面倒な話しだが。」
彼と共に移動するのも嫌だ。
出来ることならば、この静かな部屋でじっとしていたい。
彼と行動すると、ろくなことが無い。
人が死ぬか、争いが起きるか、罵声が飛ぶかだ。
自分の認識が追いつく前に、世界がぐるぐると回ってしまう。
気持ちが悪いのだ。
それに・・・
「そろそろ行って来る。大人しく、しているのだよ。」
鋭い眼光が近づき、口付けをされる。
彼の狂気に近いこの愛情も、気持ちが悪い。
「返事は?」
「・・・Oui.」
「良い子だ。」
背を向けて部屋から出て行ったアダマスに、憎しみと軽蔑の念を送る。
大嫌いだ。
けれども彼は愛しているという。
彼の生き方が気に食わない。
けれども自分は、彼の言葉にこう手にの返事をすることしか出来ないのだ。
だから、頷くことしかできない僕に、貴方を愛しているかなんて聞かないで下さい。
頷いてしまう。
頷いてしまったら・・・
僕はそれこそ、彼の一生の奴隷になってしまう。

自由なんてなくて、
いつだって苦しくて、
どうして自分がこんなところにいるのかなんて、
そんなことを考えて見たりして、
答えなんて、
こんなにも明白なのに、
現実逃避なんてらしくもないことをしてみたりして、
そして僕は、
僕は・・・

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