小指ほどの鉛筆

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47 それでも行きたいって言うのなら……勝手にしろ。(ガルゾル)

2008年03月16日 20時28分25秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「ガルル・・・貴様、最初からこの任務・・・侵略、目的では・・・なかったな・・・。」
ケロン星に戻り一通りの報告を終えたガルルは、自室へ戻る途中でゾルルに呼び止められた。
何か言いたそうなゾルルを目の前にして、とりあえず部屋へと招き入れる。
扉を閉めた途端、帰りの船の中でもずっと沈黙を保っていたゾルルが口を開いた。
ガルルはその声を久しぶりに聞いたような気がして、椅子に腰掛け、そっと耳を傾けた。
「弟、と・・・その小隊を試す・・・ための、策だったんだ・・・ろう?」
元々ゾルルは言葉の歯切れとテンポが悪い。しかしそれを除いても十分過ぎるほど、今の彼は冷静に見えた。
「そう、と、言ってくれれば・・・それなり、に行動を・・・した。」
「怒ってはいないのか?」
「任務・・・だろう?」
フッと溜息をつくゾルルに、ガルルが驚かされてしまう。
ガルルはてっきり、ゾルルが納得のいかない任務を自分に秘密にして行ったことに不満を持っていると思っていたのだ。
驚いているガルルを横目で見てから、ゾルルはガルルの隣にあった椅子を引き出して座った。
乱れた髪を耳にかけ、もう一つ溜息をつく。
「誤解・・・するな。納得、したわけでは・・・ない。」
その言葉に、ガルルも開いた口を閉じた。
「トロロ・・・は?」
「ショックとイライラで自室にこもっているよ。タルルの姿も見ていないな。恐らく二人とも、自分を鍛え直しているんだろう。心配することは無い。」
「それも、計算の・・・内、か?」
ゾルルの質問に、ガルルは答えなかった。
変わりに屈託の無い笑顔を向ける。
「なんだ、それは。」
表情を歪ませたゾルルが、少しだけ身を引く。
ガルルは気にしないというようにグラスをはずし、上着を脱いだ。
装備も何もない無防備な姿は、信頼できる相手の前だからこそ、できる。
「お前は悔しくないのか?」
一番触れて欲しくない話題を振ってきたガルルを、ゾルルは睨みつけた。
「・・・悔しくは、ない。」
「悲しいか?」
「・・・」
違うと言ったらウソになるのかもしれない。
だからゾルルは答えなかった。
肯定でもあり、否定でもある。
「ゼロロ兵長にはまだ秘密がありそうだ。まさかお前のことを本気で忘れたわけではないだろう。」
「だと・・・いいがな。」
ゾルルに完璧な保障は出来なかった。
アサシンには何があったっておかしくは無い。
特にゼロロは。
「何か飲むか?」
首を振ったゾルルに「そうか」とだけ言い、ガルルは自分の分のコーヒーを淹れるために立ち上がった。
「クルル曹長・・・中々、手強い。」
「分かるのか?」
「あぁ。」
ゼロロと一緒に居るという理由だけで、重要人物として見ていた。
クルル曹長、元少佐。
強いわけではないのだが、あの赤い瞳が異様な不気味さをかもし出していた。
自分も人のことは言えないのだが、あの目は危険だ。
本能が、そう言っていた。
「トロロがショックを受けるのも無理はないな。だがまだ若い。いくらでも成長はできる。」
コーヒーの香りが近づき、台所から戻ってきたガルルが再びゾルルの隣に座った。
「タママ二等兵・・・あれは、なんなん、だ?」
「何か別の力が働いたようだな。トロロでも解明できなかったようだ・・・解明する気があったのかどうかも怪しいが・・・」
こんな話を自分から持ち出しておきながら、他の人の話など、ゾルルにとっては本当はどうでもいいことだった。
気になっているのはただ一人の存在だけ。
「ゼロロは・・・ドロロ、と名乗って・・・いたな。」
「あぁ。聞いたところによると、地球の少女に助けられてから心を入れ替えたらしい。」
「馬鹿な。」
「彼は元々心優しい人物だ。アサシンで活躍していると聞いたときは本当に驚いたものだったしな。だがお前が知っているゼロロ兵長ではない・・・そうだろう?」
ゾルルが深く頷く。
ガルルはコーヒーを一口飲むと、少しだけ難しそうな顔をした。
「実際彼はアサシンを捨て、忍になった。母星を捨て、地球に寝返った。」
「まだ・・・確定はして、いない。」
「ほとんど確信してもいい。」
ゾルルが黙ってしまった。
ゾルル自身、予想はしていたのだろう。
「お前を忘れたといったのは、けじめだったんだろうな。」
「どういう・・・こと、だ?」
身を乗り出すようにガルルに迫るゾルル。
相変わらずの余裕でコーヒーを飲みながら、ガルルは呟いた。
「ドロロなんだ。」
「は?」
「彼はドロロと改名することによって、過去の自分とは違う人間となった。地球での心優しい彼をドロロとするならば、以前の彼はゼロロという別の人格。もちろん人物自体は変わっていないのだが、目的や考えることは大きく違っている二つの顔を持つんだろう。」
分かりそうで分からない。
「もっと、分かりやすく・・・言え。」
「困ったな。とても難しい注文だ。」
やはり悪気の無い笑顔を浮かべながら、ガルルは考えた。
彼を言い表す、簡単な言葉を。
「・・・軽い、二重人格だな。」
「認め、ない。」
「ドロロの彼は地球での思い出や自然を一番に大切にする。そのときの彼に、お前の記憶はほとんど無いだろう。逆にゼロロの彼は任務という名の命令を一番の最重要事項として認識している。だから仕事仲間や侵略という目的を忘れることは無い。ただ・・・少し容赦がないがな。」
「・・・それ、が・・・けじめか?」
ガルルは答えに少し戸惑った。
こんなことを言ってしまっていいのだろうか。
あくまで自分の推測だというのに。
「俺の考えで良いか?」
「・・・」
小さく頷く。
そのジェスチャーに安心したガルルは、腕を組んで言葉を組み立てる。
「あのときの彼は仲間のいる地球を守ろうとしていた。ということは、どっちだ?」
「ドロロ・・か?」
「その通りだ。だから彼はお前のことを、俺を見て反応することすらなかった。」
「そんな、馬鹿な話・・・」
「今の自分はドロロだ。そう思っていたからこそ、お前のことを思い出すことを脳が拒絶したんだ。今の自分はドロロであって、ゼロロではない。だから、アサシンなんて関係ない。それがドロロとゼロロのけじめ。彼なりのマインドコントロールだ。」
ゾルルは急に立ち上がった。
そしてそのまま扉へと向かって歩いて行く。
「地球へ行く気か?」
「・・・」
「今は夜だぞ。」
「関係・・ない。」
「ちょっと待て。」
それでも出て行こうとするゾルルをとめるためには、最終手段を使うしかなかった。
ガルルも立ち上がり、背筋をぴんと伸ばす。
大きく息を吸うと、言った。
「止まれっ!命令だ!!」
張りのあるその声に、ビクッとしたゾルルが止まる。
扉にかけた手を、ガルルが握った。
「なん、だ。」
「任務外で他の星に行くには許可が必要だ。今のお前が、全うな理由で地球に行くとは思えない。」
「それ、は・・・お前の判断、だろう。」
「そうだ。臨時隊長命令だが・・・聞けないか?」
「・・・」
「隊長命令に逆らうのは重大な罪でもある。軍事裁判にかけられたら、それこそ地球どころではないだろう。」
「・・・」
「それでも行きたいって言うのなら・・・勝手にしろ。」
悔しそうな顔をしたゾルルは、渋々と口を結んだ。
「それでいい。」
ガルルは内心ヒヤヒヤしていた。
ここまで言ってもゾルルが話を聞かないときがある。
だからこそ、ゾルルが扉から手を放したときには心底ホッとした。
ゾルルのほうも、ガルルを困らせる気は無いのだ。
「そこまで執拗に彼を追う理由は、何所にあるんだ?」
椅子に座りなおして問いかける。
「お前に、関係・・・ない。」
「そうか。」
少しの寂しさを覚えた。
けれども深追いも出来ない。
「ゼロロを、殺す・・・」
「そのために追っているのか?」
頷いたゾルルは、椅子の上で体育座りをした。
それはゾルルが寂しいときやいじけたときなどにとるポーズだった。
今の場合、寂しいのと自信が無いのとでいわゆる鬱に入ってしまっているのだろう。
「何故?」
つい、聞いてしまった。
さっき否定されたばかりなのに自分は何を言っているのだろうと、ガルルは軽い自己嫌悪に陥った。
しかしゾルルは俯いたまま、何かを呟いた。
「?すまん、なんて言った?」
「・・・ちょっと、した・・・約束、だ。」
「約束?」
「ゼロロ、と・・・約束・・・した。」
寂しそうな表情を見せるゾルルを、ガルルはとても愛おしく思った。
ガルルから見るとゾルルの機械化された半身しか見えないのだが、それでもゾルルの表情はしっかりと分かる。
それがガルルとゾルルの強い絆と深い繋がりの表れだった。
「そうか。約束なら・・・仕方ないな。」
ゾルルが驚いたようにガルルを見る。
ガルルは小さく微笑むと、ゾルルを真正面から捉えた。
「だが、お前に傷ついて欲しくはない。もちろんゼロロ兵長にも心配をかけたくは無いのだよ。分かってはくれないか?」
「・・・分かる、が・・・」
ゾルルが腕を組む。
考える仕草はゾルルにしては珍しく、ガルルもしばらくその様子を観察していた。
それからどれくらいが経っただろう。ついにゾルルは立ち上がると、ガルルの部屋の奥へと歩いていった。
当のガルルはその行動を目で追い、しばらくすると溜息混じりに自分も立ち上がった。
あくまでもここはガルルの個人部屋なのだ。
あまり好き勝手されたのでは、いくら相手がゾルルでもたまったものではない。
「ゾルル、何をしているんだ。」
「・・・」
「一応ここは俺の部屋なんだが・・・」
「・・・あった。」
「?何がだ?」
大量の書庫を隅々まで調べ上げ、ゾルルは一つのアルバムを手に取った。
「ちょ、それは・・・!!」
上手くガルルの手を逃れながら、器用にページを開いていく。
ガルルが諦めて椅子に座りなおしたとき、ゾルルが一枚の写真を手にして戻ってきた。
「・・・なにがしたいんだお前は・・・。」
そのアルバムのタイトルは『幼年期』。自分のではない。弟の、である。
「この写真は・・・どう、なんだ。」
ゾルルが指差したところには幼年期の弟を含め3人の幼馴染の姿。
「あぁ、懐かしいな。この写真は確かギロロが遠足という名の訓練に初めて行った時の写真だ・・・この頃はまだギロロも素直で可愛い子だったのになぁ・・・どこから教育を間違えたんだろうか・・・くそ、親父め・・・」
完全にブラコンと化しているガルルに、軽く溜息。
間違った教育をしたのはお前だというべきか、それともある意味とてもいい教育になったというべきか・・・それが問題だ。
どちらにせよ自分を棚に上げていることをまずは非難するべきだろう。
「・・・そうじゃ、ない。」
「親父は昔からギロロに銃ばかり握らせて・・・え?あぁ、この写真について聞いたんじゃないのか?」
ある意味そうなのだが、違う。
というより、もはや写真の話からもずれてしまっているという事に気づいていないガルルを、ゾルルは本気で心配になった。
「この、ゼロロは・・・どうなんだ?」
「どう、というと?」
「どっち・・・なんだ。」
ゾルルはさっきのマインドコントロールの件について話しているらしい。
それが分かったガルルは、ようやく頭から弟との楽しかった(一方的だが)日々を追い出した。
「そうだな・・・そのころの彼は・・・どちらかといえばドロロに近いんだろうな。だが・・・うん、その辺はとても難しいと思うぞ?俺だって自分の意見を述べただけであって、それを完璧に証明することまではできない。」
納得のいかないような表情のゾルルに、ガルルも困ってしまう。
そもそもゾルルにとっての深刻な問題にガルルの個人的憶測を述べること自体、野暮なことだと言える。
「役に立てなくてすまないね。さ、もう寝た方がいいだろう。明日もお互い任務だろうしな。」
時計の針は午前1時を指している。
明日は木曜日、基本的に仕事が無かった例が無い。
頷いたゾルルに安心してシャワーに向かう。
ゾルルの話に付き合っていて、すっかり遅くなってしまった。
熱いお湯を浴びると、夜中でも自然と目が覚める。
徹夜続きのガルルとしてはありがたくもあるのだが、朝もシャワーを浴びる癖があるため、水道代は馬鹿にならないのではないかと思う。
もちろん個人訓練の後も愛用している。
「ふー・・・明日に影響が出なければいいがな。」
ゾルルのことを考えると、どうしても深刻な空気になってしまう自分がいた。
「他人のことは言えないがな・・・」
そんな独り言を言いながら部屋に戻ると、まだゾルルがいた。
「・・・ゾルル~」
呼びかけてみると、視線が動いた。
明かりがついていない部屋の場合、この目は本気で怖い。うっかり灯りを消さないでよかったと思う。
「どうした?戻らないのか?」
ガルルにはたまにこんなことがある。自分の考えに没頭してしまうと、周りや時間を気にすることが出来ないのだ。
今のゾルルが、そんな感じなのだろうか。
「・・・なん、だ。」
自分を観察することが出来る機会など無い。
その機械を逃すまいと、ガルルは真剣にゾルルを見つめていた。
「あぁ、その・・・すまない。で、お前は何でまだここにいるんだ?」
寝たほうが良いと言った時、ゾルルは確かに頷いた。
「・・・忘れて、いた。」
「そんなことだろうと思ったよ・・・。」
濡れた髪をある程度乾かしながら、ガルルは苦笑する。
けれどもゾルルが部屋から出て行く気配は一向に無い。
「で、だからなんでまだここにいるんだ。」
「めんどう、だ・・・」
「めんどう?」
空間移転を使えば、自分の部屋へ帰るのなど簡単だろう。
それをあえて使わないのはゾルルらしくも無かった。
「一晩、泊まる・・・ぞ。」
当たり前のようにベッドに座り込むゾルルに、ガルルは言葉まで失ってしまった。
「・・・悪い・・・のか?」
「いや、別に悪くは無いが・・・お互い明日は任務だしな?その・・・お前からそんなことを言ってくるなんて珍しいと言うか、大胆と言うか、怖いもの知らずというか・・・いやいや、俺は嬉しいんだぞ?だが、お前は良いのか?本当に良いんだな?任務に支障がでても知ら・・・」
乱心しているガルルの横を、枕がありえない勢いで飛んできた。
「何・・・を誤解、している・・・というか、何を考え・・ている・・・」
「え?いや・・・あたりまえのことを・・・っと!あぶな!!ちょ、ゾルル、壁に穴が・・・!止め、ごめん!!本当にゴメン!!ごめんなさいぃぃ!!!!」
一通りゾルルの攻撃をかわしたガルルは、最初に投げられた枕を抱えてベッドへと身を投げた。
「全く・・・ちょっと酷いんじゃないか?」
「・・・」
ゾルルはここに来る前にすでにシャワーを浴びていたらしい。ほのかに石鹸の香りがした。
「枕はいいとして、あんな鋭いものを投げなくても良いだろう・・・」
「フン・・・」
「まぁ、おかげでいい運動になったよ・・・よく眠れそうだ。」
減らず口を、と言いかけた口をかろうじて閉じる。
一応は自分が借りを負っている身なのだ。
それにしても、と思う。きっとゼロロのことは考えても無駄なのだ。
自分が思うよりもっと、彼は多くの秘密を抱えている。
けれどもそれを自分の脳は納得してくれない。だからゾルルは今、ガルルの隣にいるのだ。
誤解されるというのは少々、腹が立つ。
「俺も・・・だな。」
「お前はそんなに大した運動じゃなかっただろう?」
違う。
ガルルがいてくれるから、よく眠れるのだ。
無駄なことを考えずに済む。
「貴様、こそ。」
吐き捨てるようにいった言葉にでも、ガルルは優しい微笑を返した。
本当はもう、ゼロロとの約束はどうでもよかった。
ただ自分よりも強い相手だという事だけが、重要なことになった。
ガルルが居るから。
そのことが、今まで自分を苦しめてきたことを全て忘れさせてくれた。
必要ないものとしてくれた。
本当はその恩返しもしなくてはいけない身なのだ。
「借りは・・・いず、れ・・・返す。」
「ゆっくりで良いぞ。また・・・来ると良い。」
ガルルはどうやら今の状況のことを言っているらしい。
ゾルルは誰にも見せることが無いだろう薄い笑みを、ガルルの寝顔にだけ、そっと向けた。


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あらら、いつの間にやら状況がおかしくなって・・・;
こういうシュチエーション大好きです!!
ツンデレとか天然とか策士とか弱みとか過去の因縁とか頼れる存在とか朝帰りとか(ぁ)

24時の後の話。
なんて・・・すごくいまさらなんですけどね・・・書きたくなって・・・;
書きたいことは沢山あっても、上手く言葉に出来ない!!もどかしいです!!
まだまだ修行するぞぉ・・・(炎

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