小指ほどの鉛筆

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362.繋いだ手から広がる幸せ(ガル大)

2009年11月22日 14時59分44秒 | ☆小説倉庫(↓達)
吐き出された白い息が、綺麗だと思った。
冷たい外気と生暖かいこの吐息が交じりあった、目に見える副産物。
羨ましい。
儚い。
何か思うところがあったからだろう。大佐は、暫く己の吐く息を見つめて、佇んでいた。
見えないものを見ようとする哀れな人間心。
掴めないものを掴もうとする悲しい使命感。
自分達は、宇宙とこの星が交じりあった副産物なのだ。
すぐに消えてしまう、淡く儚い存在。
そんなことを思って、それでどうするわけでも無いのに、
なんだかノスタルジックな気分になるのは、忘れてしまった母なる星と、父なる神を思い出すからかもしれない。
「…大佐?」
声に振り向けば、見慣れた几帳面な友人が立っていた。
「ガルル君。お疲れ様。」
にっこり笑っても、寒さで声が震える。
それでも強がって凍てついた手を振れば、ガルルは慌てて駆け寄ってきた。
「何をしているんです!?冷たくなっているじゃないですか!!」
振られた右手を両手で包み込み、ガルルは怒る。
もっとも、当の本人は寒さなど気にしてもいないのだが。
「ガルル君、手、あったかいね。」
大佐の言葉に、ガルルは悲しそうに首を振った。
「貴方の手が冷た過ぎるんです。こんなに…」
ぎゅっと握られた手に、微かに伝わってきた温もり。
冷たくとも、伝わる温もりがある。
確かめられる温もりがある。
この白い息とも、自分達とも違う、対象的な二つのものから成る副産物。
君と僕とが合わさって出来る温もり。
なんだか嬉しくなって、大佐は笑う。
けれどもそれは、ガルルにとっては不愉快でしかない微笑で。
自虐的にも見えるその笑みに、大佐は嬉しさと気恥ずかしさとを込めたのだが。
「全く、貴方の考えていることはよく分かりませんよ。」
「僕にも分からない。でも、冷たい空気ってなんだかいいよね。」
サッパリするというか、程よい緊張をもたらしてくれるというか。
そのまま凍てついて、綺麗なままで、粉々になってくれるのではないかと。
そんな期待と希望を抱いてしまう。
「それにしても寒いでしょう。風邪をひいてしまいます。」
「じゃあ、ガルル君が暖めてくれればいいよ。」
「はぁ!?」
心にも無いことを言う大佐に、ガルルは盛大に赤面する。
握られた手も、更に温かくなったような気がした。
もっともそれは、大佐自身が恥ずかしいと思ったからなのかもしれないが。
「駄目?」
「駄目も何も!!冗談が過ぎます!!」
こんなやりとりをしていれば、ノスタルジックな感情も忘れていられるのに。
凍って死んでしまいたいだなんて、思いもしないのに。
目の前で視線を彷徨わせるガルルを見て、大佐は笑った。
握られた手をそっと解き、熱くなっているだろうガルルの頬を挟む。
まだ冷たい手に、その体温は心地よかった。
「顔、真っ赤だ。」
「!!」
頭から煙が出てくる程に爆発したガルルは、慌てて大佐の手から抜け出す。
なんだ、結構自分は好かれているのだな、なんて思っても、今頃になって告白も出来るわけもなく。
そういえば、かつて彼に執着していた頃の自分は、今よりも大分馬鹿なことをしていた。
その方が、楽だった。
「可愛いなー、ガルル君。」
口元に手を当てて笑う。
白い息も、温かい。
「大佐・・・笑っていたって、寒いものは寒いんですよ?」
唐突に言われた言葉は、予想していた文句とも、いつもの小言とも違うものだった。
「何言ってるの?」
「いえ、ただ、気を紛らわせているように見えて・・・寒いでしょう?」
確かに寒い。
笑っていたって、誰かと向き合っていたって、寒いのだ。
自分は彼を前にして赤面することも無い。温かくもならない。
でも・・・
「確かに寒いよ。寒い・・・でも、君と笑っているのは、心が温かくなるような気がするな。」
気の所為かもしれないが。
「そうですか。」
そっぽを向いたガルルは、顔を赤くしていて。
温かそうだなー、なんて思ったものだから、大佐はガルルの腕をとった。
ギュッと腕を組んで、身体を寄せて、頬を寄せて・・・
「な、何してるんですか!!」
「ガルル君、暖かいんだもん。」
「だから!貴方が冷たいんです!!」
違うよ。それだけじゃないんだよ。
体温も、言葉も、心も、暖かいんだよ。
そう言ったら、まためんどくさい論議が始まってしまいそうだから、口を閉ざしているけれど。
「ちょっと、離れてください。」
「ヤダ。」
強く腕を組んだ大佐に溜息をついて、ガルルは諭すようにもう一度口を開く。
「そうじゃないです。また組んでもいいですから、一瞬だけ、離れてください。」
「?」
言われた通りに腕を放せば、ガルルは素早く自分の首に巻いていたマフラーを解いて、大佐の首にかけた。
くるくると巻いて、満足そうに微笑む。
「これでいいです。大分温かいですよ。」
「え・・・君が寒くなるんじゃ・・・」
「貴方が余計なことをしてくれたおかげで、大分熱いですよ。」
その言葉には面食らった。
ガルルらしからぬ素直な言葉。
思わず、顔が熱くなる。
「貴方も顔が赤いです。人のこと言えないじゃないですか。」
「君が珍しいこと言うから・・・」
「そうですね。らしくもないので、忘れてください。」
「嫌だ。忘れない。」
「・・・そうですよね。」
気まずそうにポケットに手を入れて、ガルルは歩き出す。
その方向に彼が目指すような場所はないはずだから、恐らく大佐を送ろうとしてくれているのだろう。
超自然的な紳士行為に、溜息さえでてくる。
かっこいいじゃないか。
日が落ちて暗くなってきたことをいいことに、大佐はガルルの腕をとる。
約束だ。一瞬しか、放してあげない。
「どうしても腕を組みたいんですか?
「うん。」
「腕じゃないとだめですか?」
何を言っているのか、暫く分からなかった。
「手じゃ、駄目ですかね?」
「なんで?」
「・・・その方が目立たないので。」
それが口実なのか、それとも事実なのかは分からない。
けれどもその方がなんだか嬉しいような気がして、大佐は頷いた。
「いいよ。それでも。」
自然と恋人繋ぎになった手に、ぞくぞくとするような温もりを感じる。
繋いだ両手の副産物。
目に見えないものもあるのだな。
心と感情に宿った何かに、気づくまでとはいかないものの、
何か悟ったような気がして、大佐は目を閉じた。

冬+僕=君

僕+君=春


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