イスラエル・ハイテクベンチャーCEO兼CSの脱&非日本仲間日記

イスラエルの情報科学ハイテクベンチャー会社のCEO兼CSの脱日本&非日本仲間8名が発信する日本への警鐘!

「中国の『天河1A』が世界NO.1の意味:スーパーコンピュータのランキングは無意味」

2010年11月23日 | 「新」サイエンス&テクノロジー

「中国の『天河1A』が世界NO.1の意味:スーパーコンピュータのランキングは無意味」

騒がしい中国の仰々しい自慢話の発表、「中国のスーパーコンピュータ『天河1A』が世界一になった(2.507 peta FLOPS)」という件。( http://server.it168.com/a2010/1027/1118/000001118952.shtml

ここから、教訓を学ぶ必要がある。既に、日本の次世代スパーコンピュータ・プロジェクトを巡る本ブログ掲載の大崎勝彦博士の批判で強調されていた事柄だ。「スーパーコンピューターの基幹技術と将来:日本の科学技術研究予算を斬る!」(2010年1月20日,1月21日,1月22日,1月25日,1月28日)


何のシミュレーションに使うのか、それによってアーキテクチャが千差万別なスーパーコンピュータの世界にあって、ランキングの為の、TOP500で使用されているベンチマーク基準のLINPACK(1970年代前半に制定)で、目的も形態も異にする現在のスーパーコンピュータの性能を比較することなど、おおよそナンセンスである。

LINPACK ベンチマークは、理学・工学で一般的な線型方程式系(大きさは自由)をガウスの消去法で解く速度を測定し、システムの浮動小数点演算性能を評価するものである。これは、当初のシミュレーションで解くべき偏微分方程式が単純で、有限差分法,有限体積法,有限要素法などで離散化して、スパース行列要素を係数とする一群の連立一次方程式を解くに過ぎないレベルであったことによる。即ち、微細メッシュ内の単純積和演算を行いその結果を次回計算の為に自身のメッシュと近傍メッシュに供給する繰り返しによる収束の速さを競うだけのものであって、メッシュ総数の増大により、MPUの演算速度ではなく、インターコネクションの性能及びその形態(3Dトーラス、クロスバー・クラスタリング)に大きく依存するようになった現実からは、時代の流れに対応していないベンチマーキングであり、それによるランキングの意味は完全に喪失して久しい。

故に、NO.1とかNO.2とかは全くのナンセンスごとであってどうでもいいことだ。

最近のスーパーコンピュータは、高位のジョブアロケーション&演算処理を行なうMPU(汎用MPU:IBMのPowerPC、IntelのZeon等X86MPU、AMDのX86MPU Opteron)の使用及び低位の積和演算を大量にこなすGPU(nVidiaのTesla等)の流用といった、市販品のプロセッサーをベースにしている。因みに、中国の「天河1A」では、14,336個のXeon X5670 MPUと7,168個のNvidia Tesla M2050 GPUが使われている。(The Tianhe-1A system is composed of 112 compute cabinets, 12 storage cabinets, 6 communications cabinets, and 8 I/O cabinets. Each compute cabinet is composed of four frames, with each frame containing eight blades, plus a 16-port switching board. Each blade is composed of two compute nodes, with each compute node containing two Xeon X5670 6-core processors and one Nvidia M2050 GPU processor.[15] The system has 3584 total blades containing 7168 GPUs, and 14,336 CPUs. The total disk storage of the systems is 2 Petabytes implemented as a Lustre clustered file system, and the total memory size of the system is 262 Terabytes.)

「天河1A」のコストは80億円。安くて済むのは当然だ。PCやサーバーで大量に使用されているOff-The-Shelf品、即ち、出来合い品の組み合わせであるから、インターコネクトを決めれば出来上がりだ。非常に簡単化されたという訳である。2002年に世界一となっていた日本の「地球シミュレーター」は600億円、次世代のスーパーコンピュータ「京」は1100億円。全くの無駄金であり、金をドブに捨てるようなものだ。あんなものは、即刻、中止すべきだ。昨年11月13日の行政刷新会議の「事業仕分け」では、そのプロジェクトは「予算計上見送りに近い縮減」(事実上の凍結)と判定されたにも拘らず、政府は判定を見直し、12月16日には本年度予算に227億円の計上を決定した。合計1230億円だ。

愚劣な事だ。中国から「天河1A」を買えばよい。

肥大化する一方の重いOSとそれに輪をかけたアプリを動かすPCやサーバー用のMPU,そんな中でキビキビとゲームを楽しませる為のGPU、それらの方が遥か先を行っているのである。旧態依然たるスーパーコンピュータの演算装置など、とっくに置いてきぼりとなっていたに過ぎない。

だから原点に立ち返り、「何をするのか?」という観点からスーパーコンピュータを認識し直すのは当然だ。そして、特殊な事はせずに、インターコネクトだけはよく考えて、市販品のMPUとGPUを使うことである。

要は「何をするのか?」ということと、コンンパイラーやソフトウエアこそが重要だという事だ。


中国の「天河1A」を写真で見ておこう。

<全体的外観>

演算用ラック:112台、ストレージ・ラック:12台、コミュニケーション・ラック:6台、I/Oラック:8台からなる。演算用ラックには、Zeon2X2ボードとTesla1X2ボード積層組み合わせによる2ノード分、32枚が格納されている。

 

<プロセッサー・ボード1:インテルZEON、X5670>

Zeon2個を実装するサブ基板が二枚。夫々の右脇にPCIストットコネクタがある。nVidiaのGPUとの連結用である。

 

<ZeonX5670チップ>

 

<Zeonモジュール>

<プロセッサー・ボード2 nVidia,Tesla2050>

 

<Tesla2050チップ>

 

<Teslaモジュール>

 

 

ジャンル:
科学
キーワード
インターコネクト 地球シミュレーター 行政刷新会議 事業仕分け ベンチマーキング 連立一次方程式 浮動小数点演算 偏微分方程式 有限体積法 有限要素法
トラックバック (0) |  この記事についてブログを書く
Messenger この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック シェア
« 「何十年も前の実... | トップ | 「中東ではなく、... »

コメント

コメントはありません。

コメントを投稿

現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。

あわせて読む