電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ハイドンのオラトリオ「四季」から、「夏」を聴く

2015年07月13日 06時00分46秒 | -オペラ・声楽
先日から、通勤の音楽にハイドンのオラトリオ「四季」を聴いております。以前は、私が関東某県に就職する際に、大学時代の恩師から贈られたハイライト版のLPをもっぱら聴いておりました。ベーム指揮のウィーン交響楽団の演奏で、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、ペーター・シュライヤー(T)、タルヴェラ(Bs)にウィーン合唱団という顔ぶれです。CD時代になって、カラヤン指揮ベルリンフィルの二枚組CDを入手し、これを愛聴しております。

カラヤン/BPOの2枚組CDをパソコンに取り込み、USBメモリにコピーして使うとき、マツダ・デミオの音楽プレーヤでは、標準では二つのフォルダのうち最初の(一枚目の)フォルダを再生し、次に二枚目のフォルダに移る、という動作をしますが、反復再生を指示していると、最初のフォルダ内だけを連続して再生するようです。今回は季節に合わせて、「夏」のほうを取り上げることにいたします。

ハイドンがオラトリオ「四季」全曲を完成したのは、1801年のはじめ頃だそうです。初演は、同年の春に、ウィーンの某侯爵邸の大広間にて、ハイドン指揮のオーケストラと合唱と、計180人以上が出演したのだそうな。そして、およそ1ヶ月後にはウィーンで公開初演されます。作曲の際には、英語の詩をドイツ語の台本に訳したスヴィーテン男爵とのいざこざもあったそうですが、すでに堂々たる作曲家として知られ、ロンドンで大成功を収めて収入も大きかったために、当時流行していたオペラの旋律を取り入れるというような不本意な提案は、きっぱりと退けることができたとのこと。かわりに、自作の交響曲の旋律が取り入れられています。

登場人物は、農夫シモン(Bs)、その娘ハンネ(Sop)、娘の恋人ルーカス(Ten)で、これに合唱が加わります。楽器編成は、Fl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2),ContraFg,Hrn(3),Tp(3),Tb(3),Timp,弦五部。
Wikipediaの解説では、カラヤン盤とはトラック分けが少々異なるようですので、以下、カラヤン盤に基づき、メモします。

第1曲:静かな弦楽の序奏の後に、恋人ルーカスがテノールで「灰色のヴェールに包まれて」を歌います。彼は、どうも夜を徹して起きていたらしい(^o^)/
オーボエの後に、父親シモンがバスで「夜明けの先触れが告げられる」と歌います。ニワトリの鳴き声だったのかな?
第2曲:ホルンの音で「目覚めた羊飼いは喜ぶ羊たちを呼び集め」ると、父親シモンの歌に続き、娘ハンネが「朝焼けに空が赤く染まっていく」と歌います。美しい風景描写です。
第3曲:ハンネに続き、ルーカスとシモン、そして合唱が加わり、太陽が昇ってくる様子を歌います。「万物の魂、この世の瞳、神の力の至高の姿、我らは心から感謝を捧げます」とは、まるで異教徒の太陽信仰のようですが、日の出を見る人の共通の感動なのかも(^o^)/
第4曲:シモンのレチタティーヴォ「あたり一面がざわめいている」。畑に麦が実り、日に焼けた農夫が収穫に励む様を歌います。堂々たる歌唱です。
第5曲:ルーカスのレチタティーヴォ「真夏の太陽は」。雲一つない空から照りつける光は、エアコンなどない当時は、さぞや大変だったでしょう。
第6曲:ルーカスが「暑さに自然は苦しみ喘いでいる」と歌います。真夏の太陽の厳しさは、週末農家でも先刻承知です。何を今さら、と思いますが、聴衆はウィーンの貴族や市民なのでした(^o^)/
第7曲:暑さを避けてやってきた薄暗いオーク(樫)の森。ハンネが「さあ、暗い森にきました」と歌います。近くの茂みから聞こえてくるのは、若い羊飼いの草笛の音、という想定で、オーボエが奏される仕掛けです。



第8曲:ハンネのアリア「なんて良い気分なのでしょう」。そりゃあ、恋人と一緒で涼しい森の中であれば、「胸は高鳴る」のもよーく理解できます。父親はお邪魔虫かもしれません(^o^)/
第9曲:シモンのレチタティーヴォ「おお、見よ、蒸し暑い空気のなか」に続いて、ルーカスも嵐の訪れを継げると、ハンネが「恐ろしい気配に自然は息をひそめています」と歌います。弦のピツィカートで、緊張感を高めています。
第10曲:合唱「嵐」です。アタッカでフルートが飛び立つ鳥を描くと、すぐに激しい嵐の場面が合唱で劇的にダイナミックに表されます。なかなかの迫力です!
第11曲:恋人ルーカスが「暗い雲が切れていき」を歌い、恐ろしい嵐が静まったことを告げます。娘ハンネも夕日の風景を歌い、父親シモンは牛舎に帰る牛の群れを歌います。うずらの鳴き交わす声、こおろぎの声、沼のカエルの鳴き声に夕べの鐘の音。全員が「夕べの鐘も鳴り終えた。空には星がきらめいて、安らぎへと誘っている」と歌い、曲が終わります。



ベームのハイライト版LP(グラモフォン:SMG-2046)では、ルーカスのレチタティーヴォ「真昼の太陽は」、ルーカスのカヴァティーナ「万物は力を失い」、ハンネのレシタティーヴォ「さあ、暗い森に来ました」、ハンネのアリア「何という爽やかさ」の四曲だけでしたので、「嵐」の劇的な合唱を聴くことができるのは嬉しい。

CDのほうは、この時期のEMI録音の特徴なのか、ダイナミックレンジを大きく取るためか、録音レベルが低めなのは気になりますが、少し音量を大きめにしてやると、カラヤンとベルリンフィルをバックにした歌と合唱の素晴らしさを堪能できます。



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