電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

デュマ『モンテ・クリスト伯』を読む(12)~エデのモルセール伯弾劾と決闘の結末

2007年01月06日 05時09分22秒 | -外国文学
デュマの『モンテ・クリスト伯』、集英社世界文学全集版・第三巻が大詰めに来ています。もうすぐ読み終えるのが惜しいくらいです。

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ギリシャのアリ・テブランの死はフェルナンとよばれるフランス人の裏切りによるものだったとする新聞記事をめぐって、ボーシャンは自らジャニナで現地調査を行い、まっすぐにアルベールのもとへ来ました。そこでもたらされた知らせは、父モルセールの裏切りは明白であり、その証拠となる書類もあったのです。しかし、ボーシャンはアルベールへの友情から、秘密の秘匿を約束します。
アルベールはモンテ・クリスト伯とともにノルマンディ地方を旅します。しかし、召使いによりもたらされた急報により、父モルセール伯爵のジャニナでの裏切り行為を暴く記事が新聞に掲載されたことを知ります。至急パリに戻ったアルベールは、ボーシャンから父モルセール将軍に対する貴族院での審議の顛末を聞きます。議会の査問委員会において、モルセール伯が弁明を行い、ほとんど成功しかけていました。このとき、ヴェールをしたギリシャ風の若い女性がやってきて、自分がアリ・テブランと愛妾ヴァジリキとの娘であることを告げ、モルセール伯に対する血を吐くような弾劾を行ったのでした。
すでにエデから裏切り者の名前以外の概要を聞いて知っていたアルベールは、秘匿されたはずの情報の出所を探します。ダングラールの家で、ジャニナに情報を問い合わせるように示唆したのがモンテ・クリスト伯であることを知り、すべての動きの背後に伯爵の存在があることに気づきます。

怒ったアルベールはオペラ座に出向き、モンテ・クリスト伯を侮辱し、決闘を申し込みます。伯爵は冷静にそれを受け、父モルセールこと漁師フェルナンへの復讐のために、その息子アルベールを殺す準備をします。そこにアルベールの母であり、かつての恋人メルセデスが訪ねてきます。母親の涙の訴えに、14年間の土牢生活の中で誓った復讐の心もくじけ、自分が死ぬ決意をします。ですが、娘のように愛してきた女奴隷エデが、父親のようにではなく自分を愛していることを知り、生への悔恨にひたります。

しかし、決闘は行われませんでした。母親からすべての真相を知らされたアルベールは、モンテ・クリスト伯が父への復讐の権利を持っていることを認め、公式に謝罪します。アルベールと母メルセデスが荷物をまとめて屋敷を出る頃、モルセール伯爵はモンテ・クリスト伯に決闘を申込みに行きますが、そこで出会ったのは、なんとエドモン・ダンテスでした。孤独な屋敷に戻ったモルセール伯は絶望し、ピストルで自殺します。「これで二人。」



なんといっても、血をはくようなエデの弾劾の場面がすごいです。言葉の短刀がモルセール伯にぐさぐさと突き刺さる様子は、思わず息をのむすごさです。そして、必死に息子の助命を願うメルセデスとのやりとりと、じっとその様子をうかがうエデの可憐さにうたれます。確かに、復讐するのなら責任のある本人(父)にしろ、息子は関係ないじゃないか!というのは正論ですね。これは、復讐のために手段を選ばなかったモンテ・クリスト伯の負け。


【追記】
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2 コメント

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この場面は (のぞみ)
2007-01-06 21:28:50
何度も読み返してしまう好きな場面です。いいですよね~。悲しく凛々しく美しいエデ、エドモンとメルセデスとの邂逅、アホベールだったアルベールの成長の始まり…ドラマチックな展開が怒涛のように押し寄せてきて一気に読んでしまうし、なおかつnarkejpさんがおっしゃるようにもったいないんですよね。終えてしまうのが。
かなり佳境になってきましたね。残りのレビューも楽しみにしています♪
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のぞみさん、 (narkejp)
2007-01-06 22:33:38
そうなんですよ。牢獄でのファリャ神父との出会い、ファラオン号の沈没に遭遇した際のモレル氏の立派さ、幸福なマクシミリヤンの一家で明かされるモレル氏の臨終前の言葉、などとともに、エデの弾劾の場面やメルセデスの哀願もたいそう印象に残る場面です。
「アホベールだったアルベールの成長」はいいですねぇ!言い得て妙です(^o^)/
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