電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」を聞く

2006年10月12日 19時49分40秒 | -室内楽
東京に唯一持参したCDです。大雨のため待たされた電車の中で「雨の歌のソナタ」のCDを聞いていました、というのは実にシャレにならない状況です(^_^;)>poripori

さて、1878年から79年にかけて、スイスのペルチャッハで作曲されたというこの曲は、ヴァイオリン協奏曲で採用しなかった素材を生かして書かれたのだとか。廃物利用というにはあまりにも素敵な音楽です。そういえばブラームスは、ドヴォルザークが捨てた屑かごから素材を拾って交響曲が何曲も書けるくらいだ、と彼の旋律の才能をうらやましがっていたといいますから、案外屑かごあさりは得意だったのかもしれません(^_^;)>poripori

それは冗談として、新潮文庫の三宅幸夫『ブラームス』(カラー版大作曲家の生涯)によれば、ブラームスの友人ビルロートが「あまりにも繊細で、あまりにも真実で、あまりにも暖かく、一般の聴衆にとってはあまりにも心がこもり過ぎている」と評したというこの曲。東洋の島国の、一般の聴衆に過ぎない私には実際「ネコに小判、豚に真珠」なのかもしれませんが、そんな了見のせまいことを言わないで「この曲、いいなぁ~!」と言わせてほしいものです。それにしても、内省的なブラームスの室内楽の特徴をよく表している曲だと思います。

第1楽章、ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ。ヴァイオリンが優しく繊細な旋律を奏で、ピアノがおおらかにこたえるうちに、しだいに活気を増してきます。
第2楽章、アダージョ。ピアノが深々とした旋律を奏でた後、静かにヴァイオリンが入り、ときおり重音を響かせながら哀感に満ちた音楽を聞かせます。
第3楽章、アレグロ・モルト・モデラート。歌曲「雨の歌」Op.59の旋律を主要主題として、ヴァイオリンがこれを歌うのだそうです。残念ながら一度も聞いたことがありませんが、きっと味わい深い歌曲なのでしょう。この楽章も、「晦渋な髭のブラームス」という印象を裏切る、ほんとに素敵な音楽です。

演奏は、イツァーク・パールマン(Vn)とアシュケナージ(Pf)によるEMIのレギュラープライス盤(CC33-3517)。1983年にロンドンのアビーロード・スタジオでデジタル録音されたものです。

ちなみに、演奏データは次のとおりです。
■パールマン(Vn)、アシュケナージ(Pf)盤
I=10'42" II=8'03" III=8'16" total=27'11"

この11月には、安部敦子(Vn)+ヤン・ホラーク(Pf)のコンビでこの曲の演奏が聴ける予定。11月18日(土)19時、文翔館ゲミュートリッヒにトーク&クラシック Vol.4。楽しみです。
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4 コメント

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ヤン・ホラーク (望 岳人)
2006-10-13 11:02:27
以前、ヤン・ホラーク氏のピアノで、シューマンの「クライスレリアーナ」を生演奏で聞いたことがありました。浦野りせ子さんという武蔵野音大の声楽科の教授を務めた方が以前に住んでいた市の出身ということで、ホラークさんと一緒にジョイントリサイタルを開かれ、そのときに聞きました。武蔵野音大の教授だそうです。
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望 岳人 さん、 (narkejp)
2006-10-13 19:17:02
コメントありがとうございます。「クライスレリアーナ」を聞くことができて、よかったですね!ヤン・ホラークさん、文翔館のリサイタルのちらしによれば、1943年チェコ生まれ、20代で各種コンクールに入賞、1971年に武蔵野音大の客員教授として来日、とありますね。バロックから室内楽まで幅広いレパートリーを持ち、チェコ音楽の紹介も熱心とか。ルージイッチコヴァにバロック音楽を師事しているそうです。楽しみです。

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素敵な音楽ですね (stonez)
2006-10-13 22:07:11
こんばんは、上京は雨で大変だったのですね。エントリーされているブラームスの「雨の歌」は私も大好きです。ほっとする、心がなんとなくあったかくなる、といったあたりが私にはとても魅力です。拝見していて、ブラームスは元々の素材を使って別の魅力的な音楽に仕上げることが結構多いようですね。当初の目的を考えながら聴きなおすと、新たな発見があるかなと思いました。
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stonezさん、 (narkejp)
2006-10-14 09:15:28
コメントありがとうございます。「雨の歌」のソナタ、ほんとにいい曲ですね。私は作曲上の専門的なことはわかりませんけれど、ブラームス、凝り性なんだな、という印象は受けますね(^_^)/

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